表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪獣  作者: 吉屋 沿道
9/16

第七話

 ゼイはあたりを見渡し、数時間ぶりにみる青空と、周囲の緑を感じる。


「眩し、、」


 チェロは、目をつぶってゼイの背中にしがみついたままでいる。


「良かった。壁の中ね」


 青々とした緑の奥、巨大な壁が立ち、外を拒絶している。


「どうすれば、AIに戻れる?」


「専用のエレベーターを使うしかないわ」


「エレベーター……」


「あなたがぶっ壊してたやつよ、あと、AIに来たとき乗ってきたでしょ」


「あぁ、動く箱か」


 チェロは羽をゆっくりと動かし始める。

 しかし、ゼイの背中にはくっついたままでいる。


「チェロ、お前、羽あるのに飛ばねぇのか」


「跳ぶのって疲れるらしいわよ」


「らしいってなんだ」


「私は飛んだことないから分からないってこと」


「ないのか、飛んだこと」


「あなただって、ないでしょ」


 チェロは羽を少し速く動かす。


「飛べるなら飛んで欲しい」


「重いっていいたいわけ?」


「いや、重くはない、おんぶしてると手が使えないから」


「そう」


 チェロは、目を開けて、羽を速めに動かした。

 少し浮く。

 ゼイが、ゆっくり手を離す。

 高く一瞬の悲鳴とともにチェロが地面に近づく。

 少しずつ羽を速く動かし、体が上下しつつ、上がっていく。

 ゼイが跳び上がって、チェロに喋りかける。


「降りてこーー」


 落ちていってしまい、チェロには最後まで聞こえなかった。

 チェロは高度を落とし、降りようとしたが、一気に落下してしまった。

 ゼイはチェロの落ちる先に立って、チェロの背中と足を抱えて受け止めた。


「いったぁい、、あなたね、そうやって受け止めるなら、衝撃を吸収するようにしなさいよ、腕を動かさなかったら殆ど地面と同じよ」


「はぁ、今度から気をつける」


「今度なんて作らないから、安心して」


 チェロは背中をさすろうとしたが、ゼイのが邪魔で手が動かし辛い。

 チェロは、頭を回して自分の体制を確認した。

 そして、ゼイの肩を叩いて、コソコソと喋りかけた。


「おろしなさいよ、、」


「ん、あぁ、体が痛むのなら運んでやろうと思って」


「いいから、おろして、」


「ん、あぁ」


 ゼイが渋々チェロを下ろすと、おろした際に曲がった背中にチェロは飛びついた。


「おんぶ」


「お前は、分からんな」


「あなたこそよ」


 そんな軽口を、叩きながら。


ー♢ー♢ー♢ー


「んで?ここがベルの屋敷か」


 ビル街に突如として佇む中世貴族風の屋敷。

 空のない空気がまとわりついている。

 パイフは屋敷の玄関から遠く離れた門に入る。

 隣には、ピア、そしてシャンセン。


「ゼイがいるならここよね」


 玄関に着くなり、パイフは扉に手をかけるが、動かない。


「どうする?」


 ピアが扉を持って強く引く。

 強く金属が当たる音。


「ほんとに動かないのね」


「ちったぁ信用しやがれ」


 シャンセンは黙ったまま、庭を見ていた。

 すると、シャンセンの見ている庭に亀裂が入る。

 赤い柱。

 硬い素材のようにも、流体でできているようにも見える。

 それが地中から飛び出し、追いかけるように現れた。


「んだありゃぁ?」


 パイフの目が捉えたのは、人間と呼ぶには攻撃的すぎるその見た目をしたベルであった。


「おいベル!」


 ベルは、パイフの方を向く。


「何してんだお前!降りてこい!」


 ベルは右手で頭を抑え、軽く首を振った。

 ベルが右手を空気に差し出すと、右手から血が滲み、浮き出て右手の中で丸く固まる。

 それは一瞬米粒ほどの大きさになると、ベルの右手に隠れ、ベルが完全に手を開いた瞬間。

 四方に血の弾丸が飛び散った。


「あいつ、、!」


 パイフとピアは慌てて口の中にカプセルをほおりこんで、一気に嚥下した。

 血の弾丸が、ピアに向かう。

 ピアの手の平に血の弾丸が衝突。

 血の弾丸は一切動くことなく。

 停止。

 パイフは口から銃弾を取り出し、装填。

 前方に打ち出す。

 銃弾は膨らみ、回転し、周囲の血を巻き込みながら進む。

 ベルはそれを確認すると、右手をかざした。

 ベルの右手から細い血の柱が現れる。

 血の柱はパイフの玉に衝突する。

 貫く。

 血の柱、銃弾、双方、停止する。

 ベルはコウモリに変化し、四方に散る。

 コウモリのうち、数匹が空中で破裂。

 周囲を黒い液体で塗りつぶした。


「ベル!お前はどれだ!」


 パイフは回転し、周囲を見渡す。

 ベルがピアの後に現れる。

 パイフは銃口を向ける。

 発砲。

 しかし、銃弾よりも速い。

 ピアの後頭部に迫る。

 ベルの手。


刹那。


 地面が削られる音。

 そこにあった空気の上から『フクロウ』が現れ、ベルを足と地面で挟み、引きずり回す。

 『フクロウ』の足元からコウモリが無数に現れる。

 ベル、パイフの後ろに出現。


「チッ」


 ベルの舌打ち。

 ベルの腹に穴。

 パイフの背中から太い針が伸び、ベルを突き刺していた。

 パイフは針をしまう。

 そして、ベルを蹴り飛ばす。

 突如シャンセンが、吹き飛ばされるベルの前に現れる。

 シャンセンは、持っている笛でベルの頭を叩き潰す。


「えげつねっ」


 ベルの首から血が溢れる。

 それは、細い棘となって、糸となって。

 周囲を覆い尽くす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ