第六話
2026/01/28 エレベーターのシーンの誤字、不明な点を改善
コウモリの鳴き声。
脳を貫かれ、引き抜かれ。
膝から崩れ落ちる。
「思考の物理的停止、とでも言うのでしょうかね」
ベルは手から血を振り払う。
音を立てて、ゼイの肉が煮える。
回復は遅い。
ベルは、その一連の様子を見届けると、明後日の方向を向いて、喋りかける。
「チェロ、でておいで」
心から信用を引きずり出すような、優しく、甘い声。
「大丈夫だよ、痛いことはしないさ」
椅子の倒れる音。
暗闇から、黒いドレスを纏った少女が出てくる。
手を心臓部に添え、右足を後に半歩分ずらしている。
「お父様、、彼を引き渡して」
「最愛の娘の頼みでも、それはできないな」
チェロは、右手で握りしめていたカプセルをベルに見せる。
「チェロ、どこからそんなもの拾ってきたんだ?危ないから捨てなさい」
「いや」
「駄目だ、チェロ。それを捨てなさい」
チェロは震える手でカプセルを飲み込む。
「チェロ!」
ベルは叫ぶが、チェロの背中からは翼が生え、周囲のそれは闇に照らされた。
「そこまでするのか、チェロ。ならば」
ベルはゼイに手を伸ばし、その首を方まで持ち上げた。
「チェロ、君は知らないかもしれないが、血によって、我らの力は大きく変化するのだよ」
チェロが、一歩下がる。
目、舌は根まで乾ききっている。
「見ていなさい、チェロ。」
ベルは、ゼイの首筋に噛みついた。
ベルの体には亀裂が入り、裂けて血が溢れた。
ベルは目を見開き、口を離した。
「不味い、何だこれは、血が、荒れ狂う、、!」
「お父様!」
ベルの体から血が溢れ、大きく吐血する。
吐き出した血の中には、毛玉が含まれていた。
チェロはベルに向かって椅子を投げ、飛び出す。
ゼイを掴み、引きずって少しずつベルから離れる。
「まてぇ、、まてぇ!チェロォ!」
チェロは壁にある、唯一光っていないボタンを押し込む。
部屋に光が付く。
一軒家4つほどの大きさを持つショウウィンドウのなかに、『ヒツジ』が眠っている。
『ヒツジ』は光の方を向いて目を開き、周囲を見渡す。
チェロはゼイをおいて、ボタン群を見渡す。
「もう!どれがなによ!」
赤く光るボタンを押し込むと、空調が動き出し、蒼く光るボタンを押し込むとヒツジの毛をバリカンで一部刈り取った。
「どけ」
「何?今忙しいんだけ、ど!?」
ゼイは脳を完全に元に戻していた。
「デカいのを出せばいいんだろ?」
「そうだけど、、」
ゼイは走り出し、『ヒツジ』のショウウィンドウのガラスを蹴破った。
ガラスが星のように舞う。
『ヒツジ』はゼイの開けた穴にツノを入れてかき回した。
『ヒツジ』のショウウィンドウの中に入っていったゼイはチェロに親指を立てた。
「なによそれ」
チェロの頬は、少し上がっていた。
『ヒツジ』はショウウィンドウを突き破り、真っ直ぐ、ベルの方向へ突き進んだ。
「まて!まてぇ!」
ベルと壁を押し潰して、『ヒツジ』は停止する。
「やった!」
チェロは跳び上がったが、ゼイに担ぎ上げられる。
「ねぇ!助けてあげたのに何これ!私スカートなのよ!?」
「うるさい、何ならいいんだ」
チェロは少し眉間をうねらせて考える。
「おんぶよ、せめておんぶして。」
ゼイはチェロの腕を持って振り、チェロの悲鳴も無視して背中まで回す。
「もう!もっと優しく!」
「何でもうるさいなお前は」
「あんたが悪いのよ!」
ゼイは走り出し、扉から出る。
扉の先はエレベーターホールになっていた。
ゼイが、動かずにいると、チェロが身を乗り出してエレベーターのボタンを押した。
ボタンの上に上向きの矢印が映し出されると、扉から『ヒツジ』の足が飛んできた。
『ヒツジ』の足は壁に突き刺さり、動かなくなった。
「まずいな」
ゼイはエレベーターのドアを蹴破り、落下した。
息を吸い込むようなチェロの悲鳴を無視して。
上を見上げると、一本の赤い柱が一直線に伸びてきていた。
エレベータの通る道の中心を通り抜け、エレベータを突き破り、弾けた。
弾けた血から太い棘が現れる。
ゼイは壁を蹴って速度を少しずつ落とし、チェロを剥がして上に投げる。
一本針を殴り折る。
下に投げる。
針の根本の大きさの穴ができた。
ゼイは壁を蹴ってチェロを捕まえ、開けたアナに落ちていった。
(1人ならなぁ、、)
と思いながら。
地面に立つと同時に走り出し、曲がり角を曲がる。
現れたのは、屋敷の広間。
一つだけ存在していたドアを蹴破り、広間に戻って煙突に入り込み、壁に指で穴を開けながら上に進んだ。
「汚いわ」
「黙れ、殺されるぞ」
煙突を抜けると、鮮やかな緑が見えた。
ー♢ー♢ー♢ー
「ベルのやつ、ゼイをどこにつれてきやがった」
パイフは白い床に寝転がりながら声を出した。
「さあね、自分の屋敷かな」
ピアも、寝転がりながら声を出した。
「あんの、変な屋敷か」
「そう、その」
パイフは、腰を曲げて頭を上げた。かなり遠くにシャンセンが座っているのをみて、また頭を下げる。
「にしても、乗り心地いいなぁ、コイツ」
「貴方はしばらく乗ってなかったから余計ね」
「そうそう、音は通り抜ける風の優しい音だけ、ゆったりとした飛行なのに速い」
「猛禽だからね、獲物を狩るためにうるさくないほうが良かったんだろう」
「なるほどな、今じゃコイツは獲物で、シャンセンの得物だ。」
「うまいこと言った気になってんじゃないよ」
「うるせっ!」
パイフは白い床を撫でる。
「そう言えば、煙草はやめたのかい?」
「止めた。つーか、やめるしかなかったんだよ。煙草なんてどこにもないからよ」
ピアは寝転んだまま、笑った。




