第四話
喧騒。
地面に、金属の暗い色が反射する。
茶色も、緑も、見当たらない。
空気が酸化しているような。
「ここがリンシャン、世界の中心よ」
起きてすぐ、4時間歩いた。
そして、分厚くて白っぽい壁をくぐって、臭い霧を吹きかけられたあと、デカい不思議なはこに入った。
はこの扉が消えていくのと同時に、着いた。
「パイフ、ゼイ、まず向かうのはAI。観光はその後にしてね」
「わかってる」
パイフは女をどけ、箱から出た。
ゼイも、あとに続く。
女が出てくると同時に、パイフは感嘆の声をあげた。
「おめぇ、ここ、、」
「そうよ、ここは、AI本部。パイフ、あなたのお陰で便利になったのよ。」
パイフは3歩前に進んで、振り返った。
「俺の知ってる形じゃねえ、、道案内してくれ」
「しょうがないわね、ゼイもついてきて。」
「うん」
「ところでゼイ、あなた、心臓を撃ち抜かれても生きてるのね、なんな治ってるし。」
「そうみたいだね」
歪まない地面も。
吹いてこない風も。
違和感を作り出す。
ゼイは一歩踏み出して、右の照明を、左の扉を順に見ている。
「ピア、そのみすぼらしいのは何?」
その声は耳を割るように高く、ゼイは顔をしかめる。
重く片目を開けて視認された声の主は、黒いドレスを身に纏った子どもだった。
「嬢ちゃん、おめぇ、年長者には口の聞き方っつーモンがあるんじゃねぇのか?」
パイフは片足を一歩前に出して大人気なく反撃する。
「ふざけてないで、私が誰か分からないの?」
「分かるか!オメー見てーな常識のねぇんじゃ下民だろぅよ!」
「どの口が言ってんのよこの無礼者!私はドライトの令嬢よ!こんなの死刑よ死刑!」
彼女が暴れていると、後ろから黒いスーツに身を包んだ男が出てきた。
男は彼女を嗜めるように彼女の肩に手をおいた。
「チェロ、やめなさい、彼らのどちらかの苗字はモルガンだよ。」
「え?そうなの?ベルお父様、こんなのが?」
「あぁ」
チェロと呼ばれた子どもは、腕を組み、パイフとゼイをしばらく睨んだ。
そして、
「チッ、そんな奇跡もあるのね」
とだけ言い残して、脇を通っていった。
男は会釈をして、一言自己紹介した。
「私はベル。ベル・ドライト。以後お見知りおきを」
「知ってるよ、偉くなったじゃねぇか、クソ坊主」
「もう坊主と呼ばれるような年齢ではありませんよ、」
男のパイプに向ける視線は、優しくもあり、獲物を狩る狼のようでもあった。
男は「私はこれで」とだけ残して、チェロを追いかけていった。
女は眉間を押さえた。
そして振り返って口を開く。
「パイフ、、調子に乗ってないで、」
「あぁ、すまんかったな」
「それはそうと、名前バレちゃったわね、ピアっていうの、ピア・ノートル。ゼイ君、覚えておいて」
「うん」
ピアについていくと、人用のものとは言えないほどの大きさの大扉についた。
「かぁーいちょーーー!」
ピアは叫ぶが、何も返ってこない。
「はぁ、絶対うるさいんだから、、」
ピアが腰のポケットからカードを取り出し、扉の横にある、折れた柱のような出っ張りにかざすと、扉が音を立てて開いた。
同時に轟音が鳴り響く。
ゼイの視界には、髪がなく、身長の低い中年が、棒切れを振り回してその十倍ほどの大きさをした猛禽の怪獣と戦っているように写った。
「これは何?」
ピアは、ゼイの質問に答えた。
「『フクロウ』と会長よ」
『フクロウ』の爪が会長に向かって降りる。
会長はその棒切れで爪を受け止める。
『フクロウ』が羽を羽ばたかせ、中に舞う。
会長は棍棒を『フクロウ』の歯に引っ掛けて体を持ち上げる。
『フクロウ』は大きく一回転するが、会長はフクロウの足に掴まっている。
『フクロウ』は二度羽を動かしたあと、急降下し、会長ごと地面にぶつけた。
地面にぶつかる刹那、何かが『フクロウ』の頭を動かし、フクロウは羽をおろした。
そして、しばらくすると。会長が瓦礫の山から手を伸ばした。
会長はゆっくりと立ち上がり、ゼイのいる場所まで歩いてきた。
会長はゼイの様子をまじまじとみつめ、優しく微笑んだあと、口を開いた。
「君が例のかい?」
「例?」
「いいや、なんでもいい」
会長はゼイの肩を掴む。
「私の名はシャンセン、君は?」
「ゼイ」
シャンセンがゼイの方を掴む力が弱くなる。
「ゼイか、素晴らし名前だ。パイフがつけたんだろうね。」
「あぁ、悪いか。」
「悪いなんて言わないさ」
シャンセンは、体についたホコリを払いながら、パイプの方を向いた。
「それでパイフ、AIに戻るのかい?」
パイフの目は、シャンセンに固定されていた。
「、、、、いいのか?」
「いいさ、2度目はないけど」
パイフは、少し口を開いたが、やめた。
シャンセンはゼイの方を向いて、少し近づいた。
「ゼイは、どうするのさ。」
「あいつ、動いてる」
ゼイは、『フクロウ』に向けて走り出していた。
パイフとシャンセンは、すぐにゼイを追いかけた。
「ゼイ!そいつはいい!」
パイフが叫ぶが、ゼイは止まらない。
「クソッたれが、、!」
パイフはポケットから拳銃を取り出し、すぐさま発泡した。
銃弾は真っすぐゼイに飛んでいったが、当たる直前。
ゼイが跳び上がった。
ゼイが『フクロウ』に飛び蹴りを浴びせるかと思われた。
しかし、ゼイと『フクロウ』の間に、突如として、ベルが現れた。
「大丈夫だ、この『フクロウ』は君を傷つけはしないよ」




