第十五話
「第四、、希望です」
絞り出すような、レオニンガムの声。
「おいでよ」
ピアの声。
「俺も欲しいな」
パイフの声。
二人の視線が交差する。
円卓の下から黒い鳥が溢れる。
それはゼイの知っているものとは違い、肉体を持っていた。
羽の音が重なり合う。
「ハッ、赤ん坊も傷一つつかねぇよ」
パイフは巨大化したままのハンカチを振り回す。
鈍い音とともに黒い鳥の形が崩れて消えてゆく。
視界が見えやすくなった頃。
レオニンガムはピアの隣りにいた。
「はっ?」
「ばーか、ふふふっ」
パイフは椅子にぶつかるように腰掛けた。
「じゃあ、次かな」
シャンセンはどことなく高い声で宣言した。
「アルト・フルテイル。第六は向いてないと思いまーす」
ボブ女。
気さくだが、人懐っこいとは違う。
好き嫌い、いや、嫌いをはっきりしていそうなタイプだ。
なんとなく、ゼイはアルトが苦手だった。
「私、嫌」
発言したのはヴィオラ。
パイフが少し睨んで口を開く。
「わざわざ言うこともねぇんじゃねぇのか、でも俺はパース」
「では、私が」
第四部隊、隊長代理のカームが発言した。
「私は別にいいよ」
ピアの発言。
少し押し付けたような雰囲気の中、カームが飛び上がり、丁寧にアルトの手を取った。
「おいでくださいますか?」
「ん?じゃあ」
アルトはカームについていき、カームの後に立った。
「では、」
シャンセンが喋り終わる間もなく、チェロの声。
「チェロ・ドラクル、どこでもいいです!」
優しく包み込むように、チェロの立っていた地面が削り取られて中に浮かぶ。
パイフが巨大なペンを投げる。
ペンを氷の槍が貫き、壁に刺さる。
羽の音。
黒い鳥が溢れる。
『フクロウ』の輪郭が現れる。
『フクロウ』めがけて氷の槍。
黒い鳥を次々と撃ち落とす銃弾。
チェロを守るように地面から小型の『クジラ』。
クジラに食われる直前。
チェロが急に上空に引っ張られる。
飛び交う銃弾も、黒い鳥も、彼の存在を明らかにしない。
やがてチェロは降り立った。
第四部隊、隊長代理、カーム・ドライタルクの後ろに。
「厄介な能力だな」
パイフの悪態も気にしない様子で、カームはチェロに話しかける。
「この無礼を、お許しください」
「今は、貴方のほうが立場が上よ、かしこまらないで」
カームは数回瞬きをしたあと、席についた。
黒い鳥も、『フクロウ』も、『クジラ』も、もとからいなかったかのようだった。
「では、次」
ゼイは、たった一人取り残されたまま、一歩前にでた。
「ゼイ・モル、、」
「モルガーノな」
パイフがゼイを助ける。
「ゼイ・モルガーノ、強いて言うなら、第三かなぁ」
何かが砕かれたような、重く、激しい音。
いつの間にかゼイを覆っていた氷の表面に弾創、二箇所の蹴り跡、そして、なにか巨大なもので貫こうとしたような跡。
真上には、手を上にして疲れたように頭を振るカーム。
ゼイが動かない頭で周りを見る間にも、氷は順に厚くなっていく。
「私ので、いい?」
ヴィオラの声、少しいつもより高い。
いたずらがうまくいった子どものような。
誰も、喋りださない。
目を見開く者、呆れる者、舌打ちする者。
「お前も、動かせねぇだろ」
パイフがつつく。
「でも、あなた達じゃ取り出せない」
パイフは心底不機嫌そうに天井を見上げた。
ピアも、ハイヒールについた氷の破片を取って、地面に投げつけた。
レオニンガムは一歩後ずさった。
カームは席に戻り、エリーゼとシャンセンは目を瞑ったまま。
ゼイは氷の中から出ようと力を込めた。
ゴリッと、氷のえぐれる音がした。
「えぇ?」
ヴィオラの、とぼけた声。
ヴィオラはゼイのいる氷に近づく。
氷の塊にヴィオラが触れると、ゼイの周りに少しだけ空間ができた。
ヴィオラがゼイの眼の前で手を降る。
ゼイが一回瞬きをするとヴィオラは目を丸くして、また少し、ゼイの周りの空間を広げた。
ゼイは少し空いた空間で速度をつけて氷を叩いた。
手首が少し動かせる程度の空間で、氷にヒビが入る。
一回、二回、三回。
ゼイが氷を叩くたびにヒビが広がり、音が大きくなる。
ヴィオラは少し口角を上げていた。
氷が砕ける。
「すごいわ!」
興奮したヴィオラの声に、ゼイは思わず一歩下がるが、下がる場所はなかったので、氷に頭をぶつけた。
ヴィオラはあわてて氷に触れると、氷が一気に蒸発し、消えていった。
ゼイは、呆然と立ち尽くしていた。
笑顔で、ヴィオラが語りかける。
「第二へようこそ!ゼイ・モルガーノ!」
語尾に音符でも付きそうな声であった。
パイフも、ピアも、シャンセンまでも、目も手も動かぬようになっていた。
「ど、どうも」
気の抜けたゼイの返事だけが、空間に広がっていた。
ホント、情報量多くてすみません




