第十四話
「では、次を」
シャンセンの声。
しかし、誰も喋らない。
ゼイは興味本位に彼を横目で見る。
一瞬、そこには誰もいないように見えた。
「アゼル・ドランです。まぁ、どこでも?やって行きまぁす」
前髪で両目を隠し、ありえないほどの長袖と、室内にはお世辞にもふさわしいとは言えないマフラーを首に巻いている。
隊長たちは、誰も喋りださない。
「では、第七ということで、次を」
シャンセンが喋り終わると、ほとんど同時。
「ミコ・ドランです!第六も楽しそうだけど、第三がいいなって思ってます!」
珍しい橙の髪の毛に、アゼルとは対照的な、半ズボンと立体的に飾り付けられたブラトップもどき。
顔には頬にハートマークのステッカーらしい物が一つ。
「んじゃ、俺が持ってくわな」
パイフがミコの前まで跳ぶ。
白衣の女性、、エリーゼが白衣の内ポケットから銃弾を弾き飛ばすと、それは速度を増してパイフに直進する。
パイフがハンカチで口を拭くと、ハンカチは巨大化し、飛んできた銃弾を包んだ。
ハンカチには焼け跡が残ったが、貫通する兆しもなかった。
「仕方ないから、その子は上げるよ」
「そんじゃな」
パイフはミコに目を向け、自分の席の少し後ろを指さした。
ミコは一瞬、相槌を打ちかけたが、口を手で覆い、頭を横に降った。
パイフはにやにやと笑いながら、また態度悪く席にどかっと座った。
一連の動きを見届けたアンドビカルはシャンセンに発言したかどうかすら怪しいほどの小声で尋ねる。
「これは、、?」
シャンセンは少し頬を上げてアンドビカルを見る。
「これは、というと?」
「あの、一瞬でしたが、喧嘩、、いえ、試合、、なんといいましょうか」
シャンセンは湯呑のようにした手で口を抑えて、笑いを堪えるようなポーズを取った。
「あぁ、あれはね、喧嘩だよ、最も、彼らの場合はだがね、物の取り合いさ、俺が欲しい、いや私がっ、というね」
「喧嘩、ですか、、」
アンドビカルは納得し得ないと口をとがらせ、眉間にシワが寄るようなポーズを取った。
「ハハハ、アン、君は礼儀を持っているのか失礼なのか分からないな」
「略称を使うなら、アンではなく、アルと及びください」
「あぁ、そうだな、男だもんな、ハハ」
シャンセンは、心底、愉快そうであった。
「では、次」
パイフが珍しい表情をするシャンセンに次の通り目を丸くしていた。
前の段の一番右側、目が常に回って、どこか機械のような雰囲気さえあった。
「カルメリック・エリべリオルです。第二希望です!第二です!」
喋り終わると開戦した。
カルメリックの服が空中に少し伸びる。
しかし、カルメリックの足が床を離れる直前、ペンギンのような形をした砲弾がカルメリックの頭上を掠めた。
カルメリックの服の形が戻るのと、ペンギン砲弾が後列のゼイの頭を弾くのはほぼ同時だった。
ゼイはペンギンの直撃した頭を触ったところ、凹んでいる様子はなさそうであったのか分かりやすく息を吐いていた。
「確保ね」
冷たい、透き通った声。
ヴィオラからその言葉が放たれた直後。
カルメリックの足元に薄い氷の膜が貼っているように見えた。
ガラスの砕ける音。
シャンセンが椅子から跳び出してカルメリックに突撃。
シャンセンが付く血の負け戦前に地面から現れた小型のクジラがカルメリックを飲み込み、また地面に吸い込まれていった。
他の受験生はカルメリックの消えた場所から一歩ずつ、離れた。
「うわぁっお」
間の抜けたカルメリックの声とともにカルメリックはヴィオラの後にいた。
「じゃあ、次を」
シャンセンはつぶやくように言った。
パイフはもう、シャンセンの顔をみないようにした。
後列
「レオニンガム・ノートルです。」
ノートルと呼ばれていた男が前に出た。
おそらく、一番前に行きたかったが、、押されてその一つ最初の立ち位置の一つ後になったのだろう。




