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氷は、沈んではならない。【超短編_約2000字→4分】

作者:

 もし、あなたが超常現象や幽霊、宇宙人などの話を少しでも信じているなら、この先は読まないでください。


 この先に書かれているものは、私の書いたものではありません。

 なにが書かれているのかも、正確にはわかりません。

 これは、私の叔父が死ぬ前にメールで寄越したもので、内容をなるべく見ないようにしてコピペしたものです。


 叔父は死の直前、というか、死の瞬間も私と電話をしていました。

 その時、彼は「メールに添付した文章を読むな」、「気づかれる」というような内容のことを言っていました。

 心臓発作でした。

 医者の話では、酸素不足による脳の錯乱が起こることもあるそうなので、幻覚をみていただけなのかも知れません。


 私がこの文章をここに投稿するのは、叔父の書き残したものが何だったのか、どうしても知りたいからです。

 私も、本当に何かあると思っているわけではありません。おそらく、叔父の言葉は死に際の妄言で、この先の文章も何でもないものだと思います。

 ただ、死の間際の叔父の言葉が耳にこびりついているようで、どうしても自分で読む気にはなりませんでした。

 そこで、この小説投稿サイトに文章を投稿することを思いつきました。ここで誰かに読んでもらって、感想をもらえれば、なにも起きない、何でもない文章だったと確認出来るのではないかと思ったのです。


 この先は、そんないわくのついた文章になります。くどいようですが、もしあなたが超常現象を信じる方なら、読まないでください。

 そういうものを気にしない方だけ、私の代わりに、この先を読んでもらいたいのです。


 そして出来ることなら、感想に「なにも起きなかった」、「何でもない文章だった」と、書いてもらえると助かります。

 そういう感想をもらえたら、わたし自身も読めると思います。

 お願いします。

 


*******この下は叔父の文章です*******




「水に関する考察」


 水には他の物質には見られない特徴が見られる。


①固体より液体の密度が高い

 一般的に、分子が自由に動く状態の液体に比べ、分子がギュッと詰まって並ぶ固体の方が体積が小さくなり、密度が高くなる。

 しかし、水は凍ったときに、分子が6角形の結晶構造をとって隙間が出来る。そのため、体積が増えて密度が下がり、固体の氷が液体の水に浮くことになる。

 このような物質は非常にまれである。ビリマス(Bi)やシリコン(Si)も固体の方が密度が低いが、その差はごくわずかで、氷が水に浮くような目に見える浮力差は発生しない。

 

②比熱が高い

 水の比熱容量(1gを1℃温めるのに必要なエネルギー)は4.18J/g・Kで、多くの物質の中で異常に高い。

 つまり非常に熱しにくく、冷めにくい。

 これは水素結合による分子同士の引力が強く、温度を変化させようとしたときに、この結合に向けてエネルギーが使われてしまうからである。


③沸点と融点が異常に高い

 水は分子量18という軽い物質にも関わらず、0℃で凍り、100℃まで液体でいられる。

 これは異常に高いと言え、同族の硫化水素(H2S)は-60℃で液体が気体になる。

 

 そして、それらは全てこの地球で生物が発展するために不可欠な性質だ。


①’ 氷が水に浮くことで、低温で氷が張っても、底に水が残る。

 そのため、氷河期や冬など低温状態になっても、水中生物が生き延びることが可能。


②’ 比熱が高いことで、海や湖が熱をため込み、ゆっくりと放出することとなる。

 その結果、気温の急変を防ぎ、地球の気候を安定させている。


③’ 沸点と融点が高いため、地球上の常温で液体として存在できている。

 他の分子量18の物質と同じなら、-60℃で沸騰するため気体となる。海という液体状態の水がなければ、生命が生まれる余地などなかっただろう。


 ここまで水の性質を見て、どうしても私は疑念を拭いきれない。

 あまりに、生物の繁栄に都合が良すぎるのではないか、と。

 たまたまそういう物質だと考えるより、作為的に用意された物質と考える方が自然とまで思える。『なにか』が、地球で生物を発展させるために。


 さらに、この不可解で不自然、かつ、不気味にお膳立てされた物質を懐疑的に見る者が少ないのだ。少なすぎる。

 いかにも都市伝説や陰謀論的な話が作れそうであるにも関わらず、その手の話は聞かない。


 『なにか』によって水は不可侵と定められている、というのは突飛な想像だろうか。

 生物を繁栄させたい『なにか』が、生命の基盤である水に、疑念を持ってしまった人間を抹殺しているのだ。

 シミュレーションの結果を正しく保つため、異常な個体を排除するように。


 もし、この文章を読んでわずかでも水に疑念を感じてしまったならーー








 背後の『なにか』から、すぐに逃げろ。

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