8.Sideヴェル 傀儡王子
空から、1機の戦闘機が降りてくる。
その機体は、翼端を深紅に染めたダークグレーの機体で、更に背中には巨大な砲を背負っていた。だが、その一見、バランスの悪い機体はまったく危なげなく滑走路に着地した。
それを地上から見ていた僕は、それを少し心配げに眺めた。
「僕のお嫁さんはカッコいいなぁ。凄いスピードでどこにだって飛んでいく……本当にどこかに行ってしまいそうだ」
滑走路をタキシングする戦闘機を、このシャール空軍基地の一角の部屋で眺めている僕は、このヴェル王国の王子である。
僕の名前はエルネスト・フェルトワン。齢12歳。金髪青眼の容姿はいかにも王子様という感じで、我ながら見た目は優れていると自負している。
ヴェル王国は獣人達の国だ。僕は羊系の獣人で金髪の生えた頭からは羊の巻き角が生えている。僕だけじゃなくここに住む人達は皆、動物の特徴を持っていた。と、いっても、全身に毛皮が生えている様な外見ではなく、普通の人間に動物耳や尻尾が生えている程度の違いだが。
そんなもふもふな獣人達の国であるヴェル王国だが、今は苦難の時代にある。
1年前。僕がなんとなく王子という自分の立場を理解してきた辺りで、この国は真っ二つに割れた。
表向きは王家の跡目争いが原因だが、実際はもう少し複雑で、国内で住民達の間に階層ごとに価値観、経済的な分断が起こった。彼らは相手を恨むあまり、仲が良くなかった僕の父と叔父をそれぞれが担ぎ上げて、内戦に発展した。
しかし、中々決着はつかず、どちらも疲弊と厭戦感のピークに達したところで、拡張主義に染まった竜人達の国であるドラコニア帝国に攻められ、どちらの派閥もあっさりと負けた。
老いも若きも、男も女も、金持ちも貧乏人も、右翼も左翼も、皆等しく不幸になりましたとさ。ちゃんちゃん。
結局、父も叔父も混乱の中で殺され、ドラコニアによって王族の中で若く、傀儡にしやすそうな僕が王太子として選ばれた。
ちなみに、僕以外の他の王族の男子達の中には、謎の死を遂げたり失踪して行方知れずになっている者が多数いる。すなわち、僕も、ドラコニアにとって不要になれば……。恐怖に怯えつつ、恐ろしいドラゴン達相手に、羊獣人なのに犬の様に尻尾をぶんぶんと振らねばならないのは中々のストレスだ。
そんな微妙な立場の僕が唯一心休まる時といえば、許婚に会う事の出来る交流の日だ。今日も、彼女にすぐにでも会いたくて、城ではなく、彼女の職場で待ち合わせをしていたのだ。
僕の許婚は、侯爵令嬢である。それも、ただの令嬢ではない。竜さえ撃ち落せる、巨大で高速の戦闘機を愛馬とする誇り高き、音速で空を飛ぶ騎士。戦闘機乗りだ。
いわゆる、姫騎士ってやつだろうか……? いや、ちょっと違う気もするな。姫戦闘機乗り……? なんか急に字面がごつくなった。
ライバル視点。ライバルキャラは強くてかっこよくてなんぼじゃけぇ。
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