7.歴史のお勉強
「ラジャー! さて、どこから話そうかしら……。元々、ドラコニアとレーヴェンは1つの国だった。それは知っているわね?」
「ええ。レーヴェンが独立して別の国になったって」
「この時の事情は少々複雑でね。90年前の戦争で当時のドラコニア王国が小国のレオイにボロ負けして、威信はボロボロになった。まあ、ありがちな話として、こんな惨めな負け方をした事で国民の不満が大爆発。暴動が起こって政権は崩壊。怒り狂った国民達によって王族達は断頭台送りにされた」
「いわゆる、1年革命だな。王族達の処刑で事態が落ち着くまで、大体1年だったからって」
「血なまぐさいわねぇ……無駄に血の気が多いのは竜人の悪癖だけど」
こんなのだから竜人は人間や獣人から、野蛮なトカゲ人間と馬鹿にされるのだ。
「と、まあ、ドラコニアの王族はほぼ全滅したんだけど、まだその血は絶えていなかった。混乱の少なかったレーヴェン州の領主、王家の血を引くジン・バイヨネット公が、中央の混乱を抑えるべく配下や周囲の貴族達をまとめて挙兵、事実上独立したわ」
「今の陛下の曾祖父さんだ。俺の爺さんも、その挙兵に参加してたんだ」
「奇遇ね、アタシの婆様もよ。この国の貴族は、大体、その時に公に従った人達ね。という訳で、公は中央で政治を牛耳っていた革命政府連中を討伐すべく進撃した」
「おお、中々燃える展開じゃない」
「……初めは順調だったんだけど、途中、エイギル・エンケラドゥスという軍人が革命政府側の指揮官に任命された。こやつが指揮官として中々有能な奴でね。烏合の衆だった革命政府軍をまとめてよく抵抗して、公もドラコニアの首都までたどり着く事が出来ず、結局停戦と相成った」
「……残念」
「ついでに、この功績で名声を得たエイギル・エンケラドゥス。彼はクーデターを起こして革命政府を倒して、皇帝を自称してドラコニアは帝政になったわ。今でもレーヴェンとドラコニアのお偉いさんが、お互いに相手の事をでっち上げの政府、と罵るのはこの辺りの事情があるの」
「ものすごい仲の悪い双子みたいな関係ね。ドラコニアとレーヴェン」
「まあ、そんなところね。分かったかしら? 歴史の授業を寝てたと思われる従者さん?」
そう煽る様な口調で言ってくる『クロスボー』。……しょうがないじゃない。近現代史って覚える事が多すぎるんですもの。昔の歴史、それこそ飛行機が生まれる前後くらいまでなら、ある程度は語れるんだが。
「ともかく、そういう歴史があるから、両者は仲が悪いの」
「なるほどねぇ」
そう考えると、あの機体があそこまで煽り運転をしてきたのも分かる気がする。
「ただでさえ、今の国際情勢は色々きな臭いし、ドラコニアの連中とまた戦争にならなきゃ良いんだけど」
「国中火の海になるのは勘弁だなぁ……」
それまで黙って話を聞いていたアナベルがそう言う。そりゃ、故郷や祖国が燃えて嬉しい人間は中々いないだろう。
「それを防ぐためにいるのが私達軍人よ。その時が来た時に備えて、常に覚悟と訓練はしておくべきね。兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり、よ」
「なによ、『クロスボー』。難しい事言うじゃない」
「昔、異世界から流れついてきた、と言われている有名な本の序文よ。戦争は国の存亡に直結する。だから、常にそのリスクについて考えて、準備をしておかなければいけない。という意味よ。こう見えて意外とインテリなのよ、アタシは」
「人は見た目に寄らないわねぇ……」
案外、このピンク髪男爵令嬢、色々な意味で侮りがたいかもしれない。そう思った私は、アナベルにより強く抱き着いた。
こういう架空の歴史考えるの面白いよね。
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