66.共闘
その頃、ケルベロスの森上空では、戦闘機の一団が飛んでいた。飛んでいるのは、ヴェル、ドラコニア、そしてレーヴェンの空軍の航空隊だった。
マーリアス解放作戦から数時間。その間にも各地に無人機は出現し、多数の被害を出した。戦争中の国々はそれどころではなくなった。ドラコニアなど、首都を猛爆撃され皇帝が城の崩壊に巻き込まれ行方不明になる始末で、とても戦争継続など出来る状況ではなくなったのである。
ひとまず、目下、最大の脅威が無差別攻撃をしてくる無人機というのは共通していたドラコニアとレーヴェンは、これを何とかしようと休戦を選び、無人機へ指示を送っている塔を破壊する為に共同作戦を発動した。この場にいるのは、3カ国の有志連合軍である。
「敵との共闘……と言えば、少年漫画みたいで聞こえは良いが」
「敵の戦力に頼らなければならない程に追い詰められてるって事だからね……それにしても、『シルバー』とアホの『ストライク』は何処に行ってしまったのやら」
「あいつらなら生きてるさ。そう簡単に死ぬ様な奴らじゃない」
その一団の中には、『バグパイプ』達、ネクロノミコン隊もいた。首都上空での戦いの後、補給を受け、この作戦に参加させられている。状況が怒涛の勢いで変わっているとはいえ、流石に連続戦闘で疲労がたまっている。
「見ろよ。血まみれ狐もいるぜ」
『バグパイプ』は、ヴェル空軍の面々の中に、翼端の赤い、レールキャノンを背負った『スティングレー』を見つける。そして、『クロスボー』は少し不満げだ。
「隊長の仇……」
「言うなよ。ひとまず、今は味方だ。後ろから撃つような真似するなよ」
「それくらいの自制心はあるわよ。仲間割れしていて、あの無人機軍団には勝てないって事も分かってる」
「……頼むぜ、『クロスボー』!」
「そちらこそ、『バグパイプ』!」
***
「大佐……そろそろ見えてきます」
「うむ」
「しかし、本当にあそこに殿下は居るんでしょうか……?」
「私の渡した発信機。あれが壊れていなければ、あそこにいるはずだ」
一方のヴェル空軍。編隊長のハンナ・ヴァルカンは、焦りを抑えつつ。視線は塔を見つめている。
拉致された最愛の人は、あそこにいる。今すぐにでも行って抱き寄せてあげたいが、その為には上空で飛んでいる無人機の群れが邪魔だ。
今回の作戦は、3カ国の空軍で上空の無人機を排除し、その後にヘリボーン部隊が塔へ降下し、制圧。無人機への指示信号をカットする事で、これによる各地への無差別攻撃をやめさせるというものだ。
あの無人機、ドラコニアが戦局打開の為に量産していたものの、突然暴走を始め現在の惨状になっているという事だ。まったく、今時、自律兵器の暴走なんて、SFもので手垢のついた展開が実際に起こるとは思わなかった。
あの塔は、全ての無人機へ指示を送る、いわば脳の役割をしている。なぜか駐屯している部隊や技術者との連絡が取れなくなり、反乱を起こしたか、それとも何かトラブルが起こったものと考えられている。それに、あの電波ジャックと行われた怪演説。それも、解析の結果、あの塔から発信されていて、ともかく、何かよからぬ事が起こっているのは確実だった。
おそらく、エルネストが攫われたのも、それに関連する。いずれにしろ、あの塔は制圧しなければならない。
ハンナは、塔から上空の無人機の群れに視線を移す。数は100以上。3カ国からかき集めた対空部隊が下から援護してくれるとはいえ、それにしてもとんだ数である。ドラコニアめ。どれだけの数を量産していたのだ。すでに向こうはこちらに気付いている様で、ミサイル攻撃が飛んできている。
あのミサイルは弾速は早いが、フレアが効くという事が分かっているので、各機はそれをばら撒いた。夕暮れの空に、花火の様に煙と炎が舞う光景は幻想的ですらあった。
ハンナは舌打ちをしたくなりつつも、レールキャノンで、無人機の1機に狙いを定めた。そのまま、躊躇なく引き金を落とす。
命中。
無人機の1機が爆散する。そんな要領で、彼女はレールキャノンで無人機を撃ち抜いていく。戦闘はすぐに乱戦になった。
「もう少し待っていてくださいね。殿下」




