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61.首都上空

 すでに夜は明けていた。再び空に上がった私達は、一路、編隊を組んで首都マーリアスを目指している。夜は既に明けて、朝日が機体を照らしている。


「本来、想定した形とは違う形になったな」


「ああ『バグパイプ』。むしろ、市民への無差別攻撃が行われている事を考えると、状況は更に悪いと言える」


「ひどい事になっていないと良いでごわすが……」


 『マンティス』の心配とは裏腹に、マーリアスの方ではいくつも黒煙が上がっているのが見える。無人機め、無差別爆撃をしている様だ。


「こちら空中管制機『ホワイトアウト』。敵機をレーダーに捉えた。数は50以上!」


「っ!! とんでもないな……」


 50機以上の敵に対し、こちらは、精々20機程だ。


「さすがに2倍以上の相手は無理だぜ!」


「味方の防空部隊からの援護と、周辺の基地からも増援が向かっている。全部合わせれば互角にはなるはずだ」


「そうは言ってもねぇ……」


 困った様に呟く『クロスボー』。まぁ、増援到着まではこちら不利で相手をしなければいけない訳だから、文句の一つも言いたくなる。


「『シルバー』、『シルバー』」


「何か?」


 私は僚機との通信は繋げずに、私はアナベルに話しかけた。


「伝説では八つ頭の邪竜の眷属って、72体だったっていうじゃないですか。他の都市にも攻撃が行われているといいますし、更に増えているんですかね……?」


「現在の技術で、かつての邪竜を再現したのだろう。眷属を創った技術で無人機を作ったんだ。現在のドラコニアの工業力なら、72体どころか、720機はいてもおかしくない」


「はぁぁぁ……。無人機の暴走なんてSFで手垢がつくほどにネタにされてきましたが、現実になってしまうとは……。どうしましょうアナベル」


「対策がない訳では無い。……危険ではあるがな」


 そこまでアナベルが言って、私は、彼が何をしようとしているかが分かった。


「……まさか、魅了魔法を?」


「1000年前と同様なら今回も効くはずだ」


 魅了魔法を使って、自身を囮にし、味方を援護する。そう言いたいのだろう。


「危険ですよ。いくらなんでも」


「そりゃ、ね。だが、このまま2倍の相手と戦うのも同じくらいに危険だと思うぞ。それなら少しでもマシな賭けをした方が良い」


 そうあっさり言うアナベル。私はヘルメットごしに頭を掻いた。


「とんでもない事を言う人を恋人にしちゃったなぁ……」


「どうする? 今なら脱出しても咎めないけど」


「私が脱出したら誰がミサイルのトリガーを引くんです? 付き合ってみせますよ。惚れた弱みです」


 私は覚悟を決めると、酸素マスクの位置を調整した。50機の無人機相手に鬼ごっこを始めたら直している暇は多分ない。


「では、始めるか」


 アナベルは、小声で魔法の詠唱を始める。以前かけられたやつと同じ、不思議な気分になる詠唱である。後は、無人機たちがこちらに釣られてくれるか、だが……。


 都市から上がる黒煙はますます増えている。一刻も早く、状況を打開せねばならないのは間違いなかった。さて、では始めよう。


「……諸君、開戦前に、良いニュースだ。たった今、ヴェルとレーヴェンの間に講和条約が締結された」


「は? 講和? ヴェルとの間に?」


 さて、覚悟を決めた所で、寝耳に水な話をされた私は素っ頓狂な声を上げた。講和? ヴェルと単独で?


「向こうも色々と訳あり、と見える。ドラコニアにも無人機による攻撃が行われているらしいし、裏切ってこちらにつくなら、今が好機、とみたのかもな」


 そりゃ、なんというか、先ほどまでヴェルの攻撃に向かっていたと考えると、なんとも複雑な気分だ。


「今回の作戦でヴェル軍機が上がってくる可能性は少ない。そこは安心してくれ」


「気休めだが、血まみれ狐とやり合わなくて良いのはありがたいな」


 上空からは首都マーリアスの様子が見える。空襲をうけて、至る所で火の手があがり、黒煙が空に浮かんでいる。きっと下は酷いことになっているだろう。


「さて、首都の市民達を救うぞ。付き合ってくれよ、『ストライク』!」


「『シルバー』こそ、ヘマをしないでくださいね」

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