6.桃色の竜
疑似的な空戦後だったが、アナベルは綺麗に機体を基地の滑走路に着陸させた。
私達が所属するレッドリー空軍基地は、このレーヴェン王国の北の辺境にある空軍基地である。主な仕事は、北方方面から侵入するドラコニア機の対処。所属するのは私達『ネクロノミコン隊』の他に4部隊。レーヴェン空軍の航空隊は4機で1部隊というのが基本編成なので、この基地には20機+予備の機体のうち何機かが稼働状態にあるとも言える。
格納庫の整備兵に機体を引き渡し、私達主従は滑走路の脇を歩いている。司令官に対し、今回の空戦もどきについて報告しなければならない。
「ドラコニアも私達と同様に、竜人族の国だっていうのに、何で仲良く出来ないんですかね」
私は、脇を歩くアナベルにそう言った。
アナベルは子供の頃から変わらずの美しさ、いや、その頃よりいっそう磨きがかかった美丈夫で、銀色の髪は鋭く磨かれた刃物の様。頭の竜の角はより凛々しく、金色の瞳は黄金の様で、こんな人の相棒になれている私がどれだけ恵まれた存在なのか、というのを実感できる。なお、身長はあれからあまり育たなかったので、引き続き、外見だけなら一見少女にも見える。というか、ほぼ美少女だ。
ちなみに頭の角は可動式であり、帽子やヘルメットをする時は、飛行機のフラップの様に良い感じにたためる優れモノである。
性格的には、陽気に分類される素直な気質に育ってくれたお陰で、基地の戦友達との関係もおおむね……一部のつっかかってくる様な奴を除き、良好だ。
「なまじ似ていると、かえって相手との違いが気になるものさ。ま、隣国同士で仲良い方が珍しいしな」
彼は軽く笑みを浮かべると、そう返した。何か納得出来る様な出来ない様な……。
「軍人のくせに、その辺りの歴史も知らないのね」
釈然としないでいると、私達の後ろから、そんな声がした。私はその声に聞き覚えがある。私達は振り返る。
「『クロスボー』……」
そこにいたのは、ピンク色の髪をツインテールにした、私と同年代くらいの女性で、その青色の瞳には、私では無くアナベルが写っていた。
「ねぇ『シルバー』。こんな阿呆の子放っておいて、アタシと付き合わない?」
「いきなり何言ってるのよ。このピンクギャル。私の乳きょうだいに不純異性交遊をさせるわけにはいかないわ」
「別にアナベルは『ストライク』のものでもあるまいに。別に付き合ってはいないんでしょ?」
そう言われつつも、私は警戒する様に、アナベルの腕に抱きついた。確かに、私とこの人は付き合ってはいない。いないが、乳きょうだいとして、従者として、こんなぽっと出のピンク髪に、長い付き合いの相棒とも言える存在を盗られてたまるものか。……彼の側に居て良いのは私だけだ。
今抱いている嫉妬。これが恋愛感情由来と言えるかは、私にも分からない。が、不愉快な気持ちになったのは確かである。
ピンク髪の彼女の名前はアリス・アリコーン。我が『ネクロノミコン隊』の戦友の1人であり、私のライバル。ピンク髪のチャラそうな男爵令嬢である。アナベルに惚れており、しょっちゅう粉をかけにくる。男爵令嬢のくせに軍人の道に進んで、戦闘機乗りになっている辺り、変人寄りの人物ではあるが。なお、彼女もレーヴェン人なので竜人である。
「こう見えて、アタシはその辺の恋愛小説に出てくるピンク髪ヒドインとかとは一味違うわよ。我が国とドラコニアの関係について、5分もあれば説明出来るくらいにはインテリなのよ?」
髪と同様、ピンク色の尻尾を興奮気味に動かしつつ、アリスは言う。ちなみに、竜人族には私の様な吉弔を含め、鱗の生えた尻尾が尻の少し上辺りから生えていて、ズボンやスカートにもそれを通す為の穴が開いている。今私達の着ているパイロットスーツも例外ではない。
「ほう。自信たっぷりじゃないか。話してみな」
アリスはピンク髪男爵令嬢だけど割とまともな子です。
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