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38.Sideヴェル 塔の中にて

 「友軍機ロスト!」


「構わん。C.H.A.O.S.の発進準備を続けろ」


「はっ」


『塔』の地下。ここには地下司令部が存在しており、指令室の巨大なモニターには、様々な情報が表示されている。モニタリングされた空戦の様子も。


「ドラコニアの正規軍の様ですが、あまり腕はよろしくない様で……」


「ドラコニアの連中がどうというより、ハンナがおかしいんだよ……」


 僕、エルネスト・フェルトワンとハンナ・ヴァルカン、更にはヴェル王国の幹部達は、今日、この『塔』の地下に招待され、新兵器『C.H.A.O.S.』のお披露目をされるはずだった。僕の提供した血によって、開発が大変捗ったお礼、というが、実際は、新兵器を僕達に見せて、反抗する気を起こさせない為だろうと思う。僕はもう厭戦気分に染まっているので、それを向こうも察したのかもしれない。ハンナは新兵器に興味を持っていた様だったが。


 格納庫で、いざ新型機をお披露目しようという流れになった時、タイミング悪く、敵の航空部隊が接近してきた。先日も、ここに接近してきた偵察機を撃墜したらしいので、様子を見に来たという所か。


 近くの基地から、迎撃機が飛んできたが、あまり戦況はよろしくない。すぐに1機が落とされ、モニター上で更に1機が爆散する。


 パイロットはヴェル人ではなく、ドラコニアの竜人だそうだが、腕が悪いのか、それとも敵の質が良いのか。


 ハンナは僕の脇で、今すぐにでも自分が飛び立ちたいとウズウズしているが、この地下指令室にいてはどうする事も出来ない。


「ハンナ嬢には、我が国の情けない所をお見せして申し訳ない。現在、C.H.A.O.S.の発進準備を行っています。もうしばらくお待ちを。敵編隊など簡単に蹴散らしてご覧にいれましょう」  


 この新兵器の考案者、フローラ・ネックが、そう言って傅いた。相変わらず、口調は丁寧だが、一癖ありそうな女だ。


「期待していますよ? 貴重な殿下の血を使ったのです。無人戦闘機の亜種という事ですが、わざわざ呼びつけて、私の腕以下なら……」


「ふふ……。それは蓋を開けてのお楽しみです」


 不敵に笑うフローラ。それから、彼女はぽつりぽつりと話を始める。


「殿下には本当に感謝しているのですよ。これでも。私はこれをずっと完成させたくてですねぇ。貴方のお力のおかげで、ようやく形になりそうです。私の目的にもより近づける」


「目的?」


「はい。私の目的はズバリ世界平和です」


 そうあっさり言うフローラ。ハンナがそれを一笑した。


「まさか、恥ずかしげもなく、本気でそんな事を言う人がいるとは思いませんでした。人類の歴史を見て、本気でそれを実現できると思っているのならば、大したロマンティストですね」


「本気ですよ。私は。この新兵器には、それを可能にする力がある」


「まあ、目標は立派ですがね……。大体そういう世界平和なんて真剣に訴える人は胡散臭いって相場が決まっているんですよ」


「ふふ……簡単ですよ。例えば、全ての人々がもう戦いたくないって程に疲弊したら? 例えば世界人口の半分が死滅する様な大戦争が起きたら?」


 意味深に笑うフローラ。ハンナも、明らかに警戒を強めている。


「このC.H.A.O.S.のインスピレーション元の、聖女伝説に登場する8つ頭の竜の様に、愚かな人類に裁きを下す者が本当に現れたら? なんなら、伝説では討たれた竜が蘇生したら?……人類は自らの犠牲によってのみ救済される。そうあるべきです」


「……どうも、貴女は少し癖のある方の様だ」


「よく言われます」


 あくまで慇懃無礼に言うフローラ。……どうも、面倒くさい人種だと見た。


「C.H.A.O.S.発進準備、整いました。カタパルト接続OK、エンジン始動。システムオールグリーン! 進路クリア! ドクター・ネック、いかがいたしましょうか?」


 そんな中、オペレーターが新兵器の準備が整った事を告げる。既に、ドラコニアの竜人達の駆る航空隊は最後の1機のみになっていた。やはり、敵軍は相応に腕の良いパイロットをけしかけてきたと見える。


「ふふ、よろしい。C.H.A.O.S.発進! さぁ、我が子よ、初陣の時間です」

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