37.強行偵察
私達が来た時には、作戦会議室に他のメンバーは集合していた。
「すみません、遅れました」
「いや、俺達も今来た所だ」
私は、空いている椅子に座る。隊長と、その相棒の姿はない。今更ながら、少し寂しさを感じていると、司令が部屋に入って来た。
「諸君、集まっているな。早速だが、新たな任務を申し渡す。隊長機喪失につき、新たな部隊長は、当面の間、リムファクシ中尉、貴官が務めろ。コールサインも番号を繰り上げとする。リムファクシ中尉がネクロノミコン1、オスカー・ヴァーン中尉がネクロノミコン2、アリス・アリコーン中尉がネクロノミコン3だ」
「ははっ」
暫定ながら、アナベルと私が隊長機を務める事になった。責任重大だ。
「頼むぜ? 隊長さん」
「背中は任せておいて。隊長機を守れなかったのは一度きりにしたいから」
「ああ、『バグパイプ』、『クロスボー』。こちらこそ。改めてよろしく頼む」
『パファー』も『マンティス』も異論はない様で、静かにうなずいている。
「さて、任務についてだが、強行偵察任務だ。6時間前、友軍の偵察機がドラコニアとレーヴェンにまたがるケルベロスの森を偵察中に消息を絶った。ここには、以前からドラコニア軍が詳細不明の施設を建造しており、周辺地域を奪還後に航空偵察が行われていた。そのうちの1機が撃墜された」
偵察機が落された……つまりそこには、『何か』がいるという事である。強力な防空部隊か、『ヴェルの血まみれ狐』の様なエースを有する精鋭戦闘機部隊か、はたまた、別の何かか。
「諸君らには、この地域の偵察飛行を行い、施設の周囲の様子を探ってきて欲しい。偵察中に敵と遭遇した場合、一戦して、その戦力を確かめてくれ。準備が出来次第、出撃せよ。危険な任務であるが、貴公らの幸運を祈る」
私はアナベルと顔を見合わせた。中々大変な任務になりそうだ。
「ケルベロスの森……姉さんが言っていた謎の施設でしょうか?」
「多分、な。ウィングの読み通り、軍事施設だった様だ。しかし、何に使う施設だろう? あんな石造りの塔なんて……」
「ともかく、お気をつけて。何となく嫌な予感がします」
「同感だ」
私達は言い知れぬ不安を抱えつつも、出撃準備にかかった。
***
「聖女伝説の地で、連中、何を企んどるでごわすか……」
かなり訛りの強い声がする。『マンティス』だ。彼の訛りは特徴的だからすぐに分かる。
基地を発ってしばらくして、我々はケルベロスの森上空までやってきた。眼下には深緑の海が広がっている。
「そろそろ、偵察機が消息を絶ったポイントだ。警戒せよ」
『ホワイトアウト』からの通信が入ってくる。レーダーに反応は今のところ無いが。
「……ありゃ、噂の塔か」
アナベルの視線の先には、まさに渦中の塔が建っていた。ピラミッドの様な三角形の石造りの建造物で、中々の大きさである。頂点には、意味深に黒い箱が置いてある。
「敵機接近。数は4。各機、警戒せよ。」
『ホワイトアウト』が敵機の接近に気づいた。早速おいでなすった。
迎撃機が上がってくるという事は、あの謎の施設が、それなりに重要だと言っている様なものだ。
「高度はこちらが高い。命令通り、このまま交戦しよう。先手を取るぞ。セミ・アクティブホーミングミサイルのロック解除」
「了解、ロック解除」
私は、長射程の空対空ミサイルを選択すると、編隊飛行中の敵機のうちの1機に狙いを定めた。
このタイプのミサイルは、ものすごくざっくり言うと、発射後、母機からの電波を用いた誘導に従って動くミサイルである。手動で誘導を行う分、敵機に当てやすい反面、狙っている間は敵機の方を向いていないといけない為、回避が制限されて少し怖い。
「長射程ミサイルで敵の陣形を崩し、そのままドッグファイトに入る。俺が先陣をきって囮になる。ネクロノミコン2と3は釣られた奴を後ろから始末してくれ」
「「了解!」」
「長射程ミサイル発射!」
「FOX1! レーダー誘導開始」
セミ・アクティブホーミングミサイルの発射コールをして、引き金を引いた。3本のミサイルが、敵の編隊に向けて飛翔していく。
数秒後、レーダーから機影が1機消える。私が放ったミサイルが命中した様だ。
「ターゲットダウン!」
「良いぞ、このままドッグファイトだ」
私達は、上昇して位置エネルギーを溜めると、急降下して敵機に突進した。




