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3.吉弔

「それに」


「それに?」


「エールの様に、事情があって飛べない竜でも、飛行機に乗れば自由に飛ぶことが出来る! 素晴らしいじゃないか」


「…………別に私、そこまで種族コンプレックス拗らせてませんが。姉との関係も良好ですし」


 私は、背中をさすりながら言う。そこには普通の竜人に生えている翼の代わりに、亀の様な甲羅が生えていた。


 私は厳密にいうと、純粋な竜人ではない。


 『吉弔(きっちょう)』と呼ばれる竜もどきである。双子の竜人が生まれる際に、双子の片方に翼の代わりに甲羅が生えている事がある。それが吉弔(きっちょう)である。


 竜形態でも翼は生えず、空を飛ぶことも出来ず、地上を亀の様に4足で這う事しか出来ず速度も遅い。忌子として差別される事も多い竜のなりそこないである。


 私の家族は幸い、純粋な竜人の姉も含めてまともな人達で、やたら兄弟姉妹が多いのもあって豊かな暮らしではないが、特に虐待されるような事も無く、不自由なく暮らせている。


 とはいえ、コンプレックスが全く無いと言えば嘘になる。何故、私には翼の代わりにこんな不格好な甲羅が生えているのか。何故、私は空を飛べないのか。なまじ、姉は竜形態だと、大きな美しい竜となるので余計にコンプレックスが顔を出す。


「口ではそんな事言うくせに、本音では姉ちゃんや俺の事が羨ましくて仕方ないんだろう? 素直になれ」


「そんな事ありませんよ……」


 しばらく私の顔を見ていたアナベルは、何か悪戯を思いついた時の様に、少し不敵な顔になった。


「決めた! 俺は将来、戦闘機のパイロットになる!!」


「は、はぁ……」


「それで、エールを一緒に空に連れていく! 一緒にエールの髪色の様な空を自由に飛ぼう。」


 そう、私の青空の様な水色の髪をつまみながら言うアナベル。奇しくも、ポニーテールにした私の髪色は晴天の様な空色である。


 子供のなんて事ない口約束だ。私も適当に肯定しておいた。


「はは……よろしくお願いします」


挿絵(By みてみん)


「うむ! まずは空軍の士官学校に入らないとな!」


「その為には沢山勉強してくださいよ。飛行機は最新技術の塊です。勘で飛ばせるものじゃあ、ありません」


「任せてくれ! 勉強は得意だ!」


 そう自信満々に言い切るアナベル。果たして、どうなる事やら。まあ、勉強をするやる気が起きたなら良いことだ。


 ‐‐‐‐‐


 ‐‐‐‐


 ‐‐‐


 ‐‐


 ‐



 ……そんな口約束から約12年。


「空中管制機『ホワイトアウト』より、『ネクロノミコン』隊へ。国籍不明機は依然としてポイント、デルタ33を飛行中。領空侵犯の警告を行え」


「『ネクロノミコン1』了解。各機、聞こえたな? 我が国への不法侵入者に対し警告を行う。ただし、指示があるまで撃つなよ。国境も越えない事!」


 ノイズ混じりの無線が響いた。ここは高度2000mの空の上を飛ぶ戦闘機の中。その狭い狭いコックピットの中の後部座席に座る私、エール・シンファクシは回顧を終えた。


「『シルバー』了解」


 私の前の操縦席に座るのは私の主にして、相棒であるアナベル・リムファクシその人である。


 あの口約束からおよそ12年。私達は本当に空軍の戦闘機乗りになっていた。ちなみに、階級は私も彼も中尉。


 ついでに私は彼の従者兼機体の火器管制担当になっていた。一緒に空を飛ぼうという口約束に付き合ってこんな所まで付いてきてしまった、あるいは、ついてこれてしまった辺り、私も大概大馬鹿野郎だ。

亀みたいなドラゴン、いわゆるガメゴンである。


なんで吉弔なんてマイナードラゴン引っ張ってきたかって? 作者の東方での推しが吉弔だからだよ。


ブクマ・評価もよろしくお願いします。

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