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28.VS血まみれ狐

「こちらネクロノミコン1、しんがりは我々ネクロノミコンがやる! 残りの隊はさっさと逃げろ! 」


 隊長は『クロスボー(アリス)』と共にハンナ大佐を追いながら、空中管制機に叫ぶ。


「わかった。全機、聞いたな、ネクロノミコンが時間を稼いでいる間に撤退しろ」


 悔しいが、こちらは空襲の後で弾薬も減り、対空砲で損傷した機体もいる。残念だが、敵のエースと戦える余裕がある機は少ない。撤退もやむなしである。そもそも、本来の目的である物資集積所の空爆自体は成功しているのだ。


「『シルバー』、隊長達が九尾を抑えている間に、後ろの小うるさい連中を黙らせよう」


「そうしよう」


 ハンナ大佐の機体は現在、隊長と『クロスボー(アリス)』に追われて、回避に専念している。踏み込むなら今だ。


 アナベルはアフターバーナーをふかして、一気に敵の後衛に接近した。無論、高度を稼ぐのも忘れない。


「アナベル、雷雲が強くなっています。空間失調(バーディゴ)に注意」


 私は、そうアナベルに警告する。空間失調(バーディゴ)とは、その名の通り、飛行中に方向感覚を一時的に喪失する現象の事だ。上昇しているのか下降しているのかが分からなくなった時は悲惨で、墜落事故の3割はこれが原因で起こると言われている。


 私の方でも計器を睨み、失速や急降下に備える。幸い、彼はその状態にはならなかった様で、計器の数字は正常の範囲だった。


 そのまま降下して更に増速すると、ちょうど、こちらに背を向けた機体の背後につく。それを邪魔しようとした敵機は、後方についていたバクパイプの援護射撃で近寄らせない。


「ターゲットロック……! FOX2!」


 放たれたミサイルを、敵機はギリギリまで引きつけてから急旋回して回避した。やはり腕は良い様だ。だが、回避する先を読んで、既にアナベルは機関砲の狙いを定めていた。


 搭載された固定兵装の20mmモーターガトリングガンから、弾丸が死の暴風となって敵機に降り注ぐ。穴だらけになった敵の『スティングレー』は失速しながら落ちていく。敵のパイロットは命からがら脱出に成功したのか、落下傘が開くのが見えた。


「撃墜2機め! やったな!」


「『バグパイプ』! 敵はまだ沢山いる。油断するな」


 現に、味方をやられた事に怒ったのか、残りの3機の敵機も、こちらを狙って、集中攻撃を仕掛けてくる、飛んでくる機関砲弾とミサイルを、急旋回と加速をいかして振り切りつつ、『バグパイプ(オスカー)』が敵機の隙を狙って、反撃の機会をうかがう。


 そんな攻防がしばらく続く中、無線機から嫌な音が響く。ミサイルアラートだ。甲高い警告音は嫌が応にも身体を強張らせる。だが、こちらを狙っているものではない。


「くっ! こいつ、強い。これがスティングレーの動きなのか……?!」


 無線の音源は、隊長機からだった。見ると、隊長はハンナ大佐の駆る赤い翼端のスティングレーに追いかけられている。何発か被弾したのか、機体からは黒煙が上がっている。


「隊長!」


 エレメントを組んでいる『クロスボー(アリス)』も大佐を追いかけているのだが、彼女の機体は凄まじい速度で飛んでおり、狙いを定められていない。砲以外にも何か、特別なカスタマイズでもされているのかもしれない。


 彼の元に向かう間もなく、被弾して速度が遅くなった隊長機に、無慈悲にレールキャノンから撃ち出された弾丸が突き刺さった。


「隊長ぉぉぉ!!」


 隊長機は中のパイロットと、火器管制官が脱出する間もなく、爆発してしまった。火球となった機体が眼下に落ちていく。


「畜生! あの女狐め!」


 珍しく怒りを露わにしたアナベルは、赤い翼端の機体へと突進する。対して、ハンナ大佐のスティングレーも受けて立つとばかりに相対する。先程の『ボルケイノ』の時と同じ様に、あるいは彼女と初めて会った時の様に、ヘッドオンだ。敵機は機関砲を放ちながら突っ込んでくる。


 アナベルは、それも最低限の動きでかわしながら、負けじと機関砲を放った。


 相対速度最高のままですれ違う。お互いに相手の弾には1発も被弾していなかった。


「味方機は全て撤退した。ネクロノミコン隊も撤退せよ!」


 反転してもう一度! と思った所で『ホワイトアウト』から通信が入った。どうやら撤退命令の様だ。


「『ホワイトアウト』、まだ隊長の仇をとれてない !」


 アナベルが抗議するが、『ホワイトアウト』は、首を縦には振らなかった。


「駄目だ。もうじき、別の所から更に敵の増援もくる。すぐに退くんだ。今なら雲の中に入れば、敵をまける……ネクロノミコン2、隊長機ロストにつき、君が臨時に指揮をとれ」


「……くっ」


 ヘッドオンで落とされる事は無かったが、敵機の追跡はまだ続いている。どちらにしろ、不利には違いない。


「『バグパイプ』、『クロスボー』、撤退する。俺に続いて雲の中に逃げろ……」


 雷鳴はますます強くなってきた。もうどちらにしろ、まともに空戦が出来る空模様ではない。


 私達はアフターバーナーを全開にして、雨雲の中へと逃げ込んだ。

この辺はエースコンバット7のミハイ爺さんとの初戦闘のオマージュです。

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