27.戦場での再会
戦況は圧倒的にレーヴェン側が優勢だった。すでに、レート基地の戦闘爆撃機隊が爆弾の投下を始めている。
ガポス平原上空1000m。私、エール・シンファクシは、眼下で瓦礫の山になっている集積所を見ながら、生き残った対空砲や航空機がいないかをしらみつぶしに探している。
夜明け前の奇襲は見事に成功し、敵軍は対応する暇もなく、ほぼ壊滅状態になった。物資もこの爆撃で燃えれば、敵軍の侵攻速度はさらに遅くなるだろう。
惜しむらくは、先程から大雨が振り始めており、引火による火災があまり期待できない所か。
「そろそろ、引き際でしょうか」
「ああ。そろそろ、周辺の敵基地から迎撃が来るころだ。それに、そろそろ雷も鳴り響いてきた。とんずらする準備をしておくか」
私は残った爆弾を全て投下した。これで大幅に機体が軽くなる。残ったのは自衛用の空対空ミサイルが2発。
「『ホワイトアウト』より各機へ、火に誘われて虫が飛んできた様だ。敵の迎撃機が接近中。爆撃隊は順次、撤退せよ」
「さあ、お出ましだ。戦闘機隊はしんがりをやるぞ。恐れをなして逃げるなよ」
隊長の声が無線越しに聞こえた。レーダーで捉えた敵機は5。数ではこちらが有利。
敵の数に少し気を抜いていると、『ホワイトアウト』から新たな報告が入る。
「待て、1機足の速い奴がいる……なんだ、こいつは」
困惑している『ホワイトアウト』。レーダーを見ると、確かに、異常な速度で接近してくる機体がいる。
「エイボン2、『ボルケイノ』! 狙いは貴官の様だ。警戒せよ」
その『ボルケイノ』はというと、地上に対して機銃掃射を行っており、1機で少し離れた位置にいた。
「はっ! 上等だ、やってやる!」
『ボルケイノ』は迎え撃つつもりなのか、正面から相対する形で敵機に肉薄する。いわゆる、ヘッドオンの形だ。
「『ボルケイノ』、奴は危険だ!」
「うるせぇ! てめぇの指示なんて聞くか!」
アナベルは彼の方に援護に向かいつつ警告する。が『ボルケイノ』は、彼の言葉を無視して敵に機銃を撃ちながら吶喊した。だが、敵機はその掃射をあっさりとかわし、逆に単調な機動で突っ込んでくる彼の機体に的確に機関砲を叩き込んだ。
「ボルケイノ!!」
機関砲の直撃受けた『ボルケイノ』の機体のコックピットキャノピーが、彼の血で真っ赤に染まってるのが見えた。彼のスカイシャドウは、そのまま錐もみ状態に陥って地面に叩きつけられた。脱出は無し。
「ボルケイノがやられた!」
「こいつ、何者だ?!」
驚愕する僚機の通信が聞こえる。彼は嫌な奴ではあったが、技量自体は悪くなかった。それをあっさり仕留めるとは……。
改めて、アフターバーナーを吹かしながら高度を回復する敵機を見る。ダークグレーの機体の翼端は、まるで、今まで倒して来た相手の血で染めたかの様に、赤色であった。背中には巨大な砲塔。そして国章はヴェル属州軍のもの。私達はかの機体に心当たりがあった。
「翼端が赤い砲塔付きのヴェル軍機……あの九尾の狐か!」
まさに、以前遭遇し、雑誌の1ぺージに載っていたもの、そのままの機体が空を飛んでいる。
「赤い翼端……! ヴェルの血まみれ狐?! なんでこんな所に……!?」
驚愕する僚機達。『ヴェルの血まみれ狐』。そんな恐ろしい二つ名を持つ九尾の狐……ハンナ・ヴァルカン大佐が駆るスティングレーは、再度反転してこちらに向かってきた。後方からは、敵の4機の僚機が一定の距離からミサイルを放って牽制してくる。
「ミサイルアラート!」
「回避する」
こちらに向かってくるミサイルを急旋回でやり過ごすと、今度は九尾の狐を狙いにくくなる。敵ながら息の合った良い連携だ。
「こちら、フェイスレス3、先に後方の奴らをやる」
「待て、フェイスレス3、背中がガラ空きだ!」
ハンナ大佐を無視して、先に後方の敵機を始末しようとした味方機だったが、彼は今度は逆にハンナ大佐に背後を取られてあっさり撃墜された。レールキャノンで撃たれた事もあり、回避する暇も無く木っ端微塵だった。
「フェイスレス3、ロスト! 各個撃破されるぞ、単独行動は禁止! 敵機を撃墜する必要は無い。爆撃隊が退却するまでの時間を稼げ」
「打合せ通り、後衛には俺がつくぞ『シルバー』」
「助かる、『バグパイプ』」
『ホワイトアウト』からの指示を受けて、後衛には『バグパイプ』がついてくれた。
雨はますます強くなり、とうとう、落雷まで落ち始めた。目の前は黒い雲が一面を覆っている。




