22.状況確認
時間が経つにつれ、状況が分かってきた。
まず、なんでドラコニアがいきなり殴りかかって来たかと言うと、原因はよくある話だった。世界恐慌以来、レーヴェンが裏で暗躍して、ドラコニアとの貿易で搾取を行っていたという陰謀論めいた話。彼の国ではそんな出どころ不明な話が広がっていたらしい。それに対する報復という名目で彼らは戦争を始めた。
もちろん、そんな事実はない。仮に、ドラコニアが傾くほどの搾取をレーヴェンが行ってきたなら、我々の町はもう少し華やかになっているだろう。
実際の所はというと、向こうの皇帝の人気が落ちてきたから、国民の不満を逸らす為に戦争を始めた、という独裁国家で良く見る理由だった。思えば、ヴェルを始めとした周囲の国々を征服した時もそんな理由で戦争を吹っ掛けていた。
目先の利益に踊らされ、自分勝手な国のトップと、耳ざわりの良い言葉に踊らされる、すぐに頭に血が昇る国民。この2つが最悪な相乗効果を発揮したのが、この戦争の原因だった。
「国王陛下やそのご家族、そして政治家のお偉いさん達は脱出に成功して無事……。王都マーリアスは落ちたが……ま、それが不幸中の幸いだな。仮に陛下を人質にされたら、こちらは白旗を上げるしかない」
幾度となく眺めたレーヴェンの地図を眺めながら、我々ネクロノミコン隊も作戦会議室の一角で、状況を再確認している。隊長が白地図にマーカーでメモを入れている。
隊長や『バグパイプ』も基地に帰ってきている。隊長などは不在の間に敵機を落としたと報告したら、いままで教育してきた甲斐があったと随分喜んでくれた。
「レッドリーへの空襲は我々が防ぎましたが、ハータ軍港、マタナ軍港、タハマ空軍基地辺りも制圧されたと聞きます。首都のある南部はほぼ、敵の手に落ちてしまいました」
「大本営は北部に『転進』したそうよ。まだ通信は生きていて命令は下せる状況」
「まだ先制点は取られたが、十分逆転ホームランは狙える状況だな」
隊員たちは、皆真剣に今後についての予想を立てる。確かに敵は手ごわい。だが、希望が無い訳では無い。
まず、開戦から数日経った現時点の段階で、すでに敵が息切れをし始めているという事だ。当初から進撃のスピードが目に見えて落ちている。単純にこちらが奇襲の衝撃から立ち直って、戦力が適切に配置され始めているのもあるし、侵攻スピードに補給が追い付いていないというのもあるだろう。
また、敵軍の主力がドラコニアの竜人ではなく、ヴェルを始めとした属州からかっぱらった……もとい徴集した戦力がほとんどというのもあるだろう。征服した土地の人間を死地に立たせて、自分達は後方でふんぞりかえっている、というわけだ。
ひどい話ではあるが、お陰で、敵の士気は思ったよりも高くない。この前の空戦の様に、少し損害が出ただけで敗走する事も多々あるらしい。そりゃ、自分の祖国の為に死ぬのならある種の諦めもつくが、自分達を征服した連中の為に、血を流す気には、ましてや死ぬ気になど、とてもならないだろう。
……例外的に、あの翼端を赤く染めたスティングレー。ヴェル属州空軍のトップエース、ハンナ・ヴァルカン大佐とかいったか、彼女だけは例外で、すでに奴により少なくとも5機以上の味方機と10台以上の戦車・車両が破壊されている。彼女とは遭遇したくないものだが。
ともかく、まだ、希望を捨てるには早い。まだまだ、出来る事は色々ある。幸い、一方的な侵略を受けた国民達の怒りは強く、戦力や物資は彼らが提供してくれる。まだ、我々は負けてはいない。
最終目標は、勿論、最初の奇襲攻撃で奪われた王都の奪還。さらに言えば奪われた土地を全て奪い返す事だ。こちらとて誇り高き竜人族。なめた真似をされたら10倍返ししてやるのが流儀である。




