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21.ファーストキル

 『ホワイトアウト』から交戦許可が降りると共に、アナベルは機体を急降下させた。狙いは足の遅い爆撃機だった。ちょうど、先行していて、護衛がついていない機体がある。


「俺は先頭のやつをやる。『クロスボー』は援護を!」


「了解」


 いよいよだ。私はミサイルの引き金に手をかけた。だが、手が震える。これを引いて、ミサイルが当たり、脱出に失敗すれば、確実に敵機のパイロットは死ぬ。軍人の道に進んだ以上、覚悟はしていたが、いざその時がきた今、躊躇が無いと言えば嘘になる。


「『ストライク』、爆撃機は俺が機銃でやろうか?」


 早くなっている呼吸から、そんな私の心中を察したのか、アナベルはそう提案してきた。ミサイルと違い、機銃は操縦席の方からでも撃てる。だが、私はそれを拒否する。


「いや、火器管制は私の仕事。私が引き金を引きます」


「……そうか」


 アナベルは、それだけ言うと、爆撃機の後方についた。大変狙いやすい位置につけてくれた。爆撃機側も慌てているのか、急旋回で逃れようとするが、大型鈍足の重爆撃機が、足の速い戦闘機から逃れられるわけがない。


「レーダー照射。ロックオン! ……FOX2!」


 私が、赤外線探知方式ミサイルの発射宣言をして引き金を引くと、翼下のパイロンに吊るされた空対空ミサイルが放たれた。それは爆撃機に向けて一直線に飛んでいき、主翼からぶら下がっているエンジンに直撃する。その衝撃で翼は折れて、爆撃機はそのまま不規則にロールしながら眼下の森に墜落していった。


「撃墜! 撃墜! よくやった、エール!」


 興奮気味に、アナベルが叫ぶ。……脱出は無し。人を殺す感覚もなく、本当に引き金を引くだけであっさりと終わってしまった。


「……はぁ、はぁ、はぁ」


 思わず呼吸が荒くなる。……私が彼らの命を奪ったのだ。


「……『ストライク』、敵に同情なんてするもんじゃないぜ。それに、その引き金はお前が引いたんじゃない。本来、軍や政治家の偉いおっさんおばさん達が引くべき引き金を、お前が代行して引いただけだ」


「うん……」


「……戦場に出てきた以上、奴らも覚悟は出来ていただろう。それに、彼らを逃していたら、もっと多くの人間が死んでいたかもしれん。彼らはお前が守ったんだ」


 アナベルのフォローで、私は少し落ち着きを取り戻した。そうだ、軍人になった以上、私も覚悟はしていたではないか。それに国を守る為だ。


 …………守るために、壊し、殺すというのも、なんとも矛盾した話だが。


「……敵機、後方より接近」


 見ると、1機の敵の『スティングレー』が機関砲を放ちながら、後ろから突っ込んでくる。その弾幕をかわしつつ、アナベルは『クロスボー(アリス)』に援護を求める。


「活きのいい奴がいる! 『クロスボー』、頼むぜ!」


「はいよ!」


 今度は私達を囮にする形で、敵機の後ろについた『クロスボー(アリス)』の機体からミサイルが放たれた。そちらも敵機に直撃し、かの機体はバラバラに吹き飛んだ。


「サンクス! 『クロスボー』、『パファー』後で1杯奢るぜ」


「どういたしまして。モヒートが良いわね。さあ、この調子で続けましょ」


 私達の増援のお陰で、形勢はこちらの有利になっていった。すでに敵機のうち作戦の要の爆撃機は何機か落ち、護衛機もレーヴェン側の邀撃をいなせていない。ついに、敵の編隊は踵を返して撤退していく。


「敵が撤退していく!」


「『ホワイトアウト』、追撃に移って良いか?」


「いや、ここは敵に合わせて引くんだ」


「何故だ。敵に大ダメージを与えるチャンスなのに」


 味方のパイロットたちも不満げだ。勝ち戦だけに、戦意も高い。


「……王都が落ちた。守備隊は奇襲で壊滅状態だそうだ。一時撤退し、大本営からの指示を待つ」


「何?!」


 部隊に動揺が走った。首都が落ちた……!? それだけ敵の攻撃は熾烈なのか。


「……撤退する。基地に帰ろう」


お約束の爆撃機迎撃ミッション

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