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12.危険な女

「見た所、何かのプレゼンの資料の様ですが、何か新たな発明でも?」


 少し気になった私はさりげなく、聞いてみた。すると、フローラと名乗った女性は、不敵に笑って口を開く。


「はい。新しい兵器を考案しましてね」


「新兵器……」


 少し物騒な単語に、私は少し身構えてしまう。


「所謂、無人機(UAV)ってやつですよ。パイロット無しでも飛ばせる航空機。とある方式で自律飛行を可能にする方法を思いつきましてねぇ……研究の為の投資をしてもらおうとやって来たのです」


無人機(UAV)ねぇ……それに自律飛行。あれも、色々難しいって聞くけど……」


 『クロスボー(アリス)』の言葉に、フローラはニヤリと笑みを浮かべた。


「私の研究は、まったく画期的なものでしてね。革新的な方法で制御を可能にしたのです」


「革新的な方法……具体的には?」


「それは機密です」


「まぁ、そうだろうな」


 アナベルは、少しがっかりした様に言う。新兵器の詳しい話などしてくれる訳がないので仕方ないが。


「…………ただ、凄い奴ですよ。これは。まさしく、歴史を変えてしまう程に」


 少しフローラの雰囲気が不気味なものに変わった。何だろうか、この妙な殺気は。それはアナベルや『クロスボー(アリス)』も同様だったようで、少し警戒をしている。


「思うのですよ。私は。何故、人類はこんなにも愚かなのかと。今日もどこかで戦争は起こり、貧富の格差で飢える人は数知れず、環境だって滅茶苦茶になっている。……少し、人類は増えすぎて、発展し過ぎたと思いませんか? 人類は、少し傲慢になりすぎました」


 突然、話が妙な方向になってきた。どうも、思想が強い方かもしれない。


「数千万、数億の人間を間引く事で、戦争も環境汚染もしたくとも出来ない状態に人類を追い込む事で、将来生まれるそれ以上の人間を救うべき。そんな思想を私はもっていましてね。その為にも使えるUAVです。これは。……そんな事を今までこの国の軍の偉い人の前で語っていたんですが、今一つ共感を得られずに、研究の為の投資は貰えませんでした。残念です」


「は、はぁ……」


挿絵(By みてみん)


 少し困惑して彼女を見ている私達。……要は、虐殺を行い、残った人類を結束させようとでも言いたいのだろうか。色々とぶっ飛んだ思想をお持ちの様だ。


「プレゼンは失敗した? 」


「ええ。私の思想と、この兵器の有効性が疑問視されましてね。少し話したら、門前払いですよ」


 そりゃ、こんな危険人物、門前払いされるよ。と心の中で思いつつ。それとなく出入り口を教えた。何というか、あまり関わるべきではない人物に感じる。


「プレゼンお疲れ様ですよ。研究がより進む事を祈ります。出口はあちらですよ」


「ふふ……より洗練させて出直しましょう。この国で不要なら、別の国で需要がある所もありましょうか」


「……あんまり、拡散させて良い兵器とも思えないが」


「この兵器の価値が分からないとは……まぁ良いです。アデュー」


 そう言うと、黒髪のいかにも変な研究者は去っていってしまった。


「……変な人でしたね」


「……変な人だったわね」


「「珍しく意見が一致するじゃない」」


 そこまで『クロスボー(アリス)』と被ってしまう。まぁ、大体の人は彼女の話を聞いたらそう思いそうだが。


 一方で、アナベルはというと、ぼんやりとフローラの背中を眺めている。


「どうしました? 彼女に何か?」


「あ、いや、何でもない」


「……?」


「んー? 『シルバー』、あの人に恋しちゃった、とか?」


「!!!!????」


 冗談めかした言い方だが、『クロスボー』がそんな事を言った事で、私はびっくりしてしまう。そして燃え上がる嫉妬の心。みるみるうちに、瞳からハイライトが失われていくのが、自分でも分かる。


「……アナベル、そんな事はありませんよね? 嘘ですよね? 『クロスボー(アリス)』が適当こいてるだけですよね?」


「怖いよ、エール。違うよ、恋なんかしてない」


「本当に?」


「本当。ただ、何となく気になって……」


「やっぱり惚れてるじゃないですか……」


「いや、惚れた腫れた的な意味じゃなくて……」


 こんな事してはいけないとは思いつつも、私は思わず、彼の手を掴んだ。


「私は貴方の忠臣ですよ、ええ、忠臣ですとも! でもさ、やっぱり男女なんだから、当然そういう事も意識するんですよ。……普通に不愉快なんで、他の女の子の事見るの、止めてもらって良いですか? 女の子といちゃつきたいなら、私がいるじゃないですか。アナベルのしたい事なら何でもしてあげますよ。あんまり私の扱いをおざなりにすると甲羅でタックルしますよ? 痛いですよ~? 吉弔の甲羅は。質量の暴力ですからね」


挿絵(By みてみん)


「わ、分かった。分かったから、少し落ち着いてくれ。あ、痛い痛い痛い」


 私に強く手を握られ、珍しく慌てているアナベル。一方、「うおー、すごーい。マジギレしてる『ストライク』久しぶりに見たー」とのんきにこちらを眺めている『クロスボー(アリス)』。こちらはこちらで大した度胸である。本当にタックルしてやろうか。


 そんなこんなで、この日は暮れていった。

ヤンデレ覚醒回。フローラのモデルはギレン・ザビ総帥とマティアス・トーレス艦長です。両方やべー奴!


ブクマ・評価もよろしくお願いします。

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