【ムサラドの死(Mussarad is dead)】
その日の夜中、急に雷が鳴りだしかと思うと直に強い雨が降り始めた。
雨音に混じって誰かの足音と玄関のドアが開いた音がしたような気がしたが、時計を見ると夜中の2時を回ったところだった。
耳を澄ますと、ルーゴのギターとアンヌの歌声が聞こえていた。
誰かが外に出ていて戻って来たのかと思い、しばらく様子を窺っていたがそのあと何の気配も感じられなかったのだが気になってベッドを出て1階の玄関に向かうと、しゃがみ込んでいるケラーが居た。
……いや、ケラーの他にもう一人、彼の陰になって良く見えないが大柄な人物が座っている。
「ケラー」
声を掛けると、彼は驚いたように僕の方を振り返った。
その時ケラーの奥に、しゃがみ込んでいる人物の顔が見えた。
「ムサラド!」
ようやく戻って来たムサラドの姿を見てホッとする一方、戻って来る時間が夜中の2時過ぎと言うこともあり不安にも感じた。
「どうしたんだ、こんなに夜遅く帰って来て。メールか電話を入れてくれたら、コッチから迎えに行ったのに」
僕の話した声に、ムサラドは何も答えない。
代わりにケラーが答えた。
「ムサラドは、もう何も言えない」と。
ケラーが避けて、ムサラドの姿を見せてくれた。
どこを通って帰って来たのか、服は泥だらけ。 そしてその服の左胸には1本のナイフが刺さっていた。
「ケラー、これは一体!?」
僕がケラーに聞くと、彼は分からないと答えた。
一応脈を診るが無駄だった。
だが体温は、まだ失われていないから死んで間もない。
やはりさっきした玄関の音は、ムサラド本人が入って来た音に間違いなく、あの時直ぐに走って玄関に向かえば犯人を……いや、ムサラドを助けられたかも知れないと思うと、やりきれない思いがした。
「ケラー、みんなを集めてくれ」
「わかった」
「なんだよー、人が気持ちよく寝ているのに。なんだムサラドか、酔いつぶれているのか……おっおい胸にナイフが‼ だ、大丈夫なのか!??」
脈と瞳孔の確認をしていたシェメールが、首を横に振った。
最後にやって来たトムだけでなく、集まった皆が驚き、そしてムサラドの死を悲しんでいた。
第一発見者のケラーに状況を聞いたところ、外を歩く足音に気付いて玄関に向かうと、その時にはもうムサラドの胸にはナイフが刺さっていたと言うことだった。
「犯人は見なかったの?」と、イリアが聞くと、ケラーは外に逃げていく足音が聞こえたので慌てて外に出たが、犯人の姿も見えなくて直ぐに追うことを諦めたと話した。
「やけに諦めるのが早いな」
トムがケラーを睨みつけるような目で言うと、ケラーはムサラドの容態が気になったからだと答えた。
「心臓を一突きに刺されているのにか?」
「……」
「オマエが、ムサラドを殺したんだろう!違うのか!?」
トムがケラーの胸倉を掴んだので、慌てて2人の間に割って入ると、ケラーは「バカバカしい」と怒ってその場から立ち去った。
「逃げるのか、コノヤロー‼」
「トム止めろ!」
ケラーの後を追おうとするトムを止めた。
今はお互いを傷つけあっている場合ではない。
「しかし犯人捜しは大切だろう!? アイツ怪しいぜ」
「そうかもしれないが、捜査に感情は必要ない」
犯罪捜査で肝心な事は、初動でいかに多くの事実を集めることが出来るのかに掛かっている。
目撃者が居る可能性があるなら、それも早く得ておく必要がある。
なぜなら人間は自身に関係の無い事は直ぐに忘れてしまうし、記憶を捻じ曲げたり意図しないうちに違う記憶を勝手に作ってしまったりしてしまう。
特に報道機関が動いた後では、ニュースや世論に記憶が左右されてしまうこともあり、間違った情報が出る事で捜査は混乱してしまう。
その点、今のロボット社会は素晴らしい。
各地に備え付けられている監視カメラの映像や音声、各無人システム車に装備されているドライブレコーダーの映像や音声は勿論、感情のないロボット捜査員は聞き込み時に人間の記憶を誘導するようなこともしない。
なにより彼ら電子媒体が全ての情報を共有できることが素晴らしく、無人報道機関は決して操作の邪魔になるようなことはしない。
こんにちは、ケラーです。
……。
あしたからGWの後半戦が始まるという人も多いかと思いますが、くれぐれも事故には気をつけて下さい。
4月の全国交通安全週間の時に交通安全の先生なる人が、トラックは危険だから、と言う趣旨のお話しをされていて確かに危ないよな……て思いながら聞いていましたが、その方の最後の言葉を聞いたとき、コンナ人が居るから交通事故は無くならないんだと思いました。
で、僕にそう思わせた先生の言葉とは↓
「トラックの後ろに着くと、見通しが悪く危険なので、なるべくトラックの後ろに着くのは止めましょう」
たしかにトラックの後ろは見通しが利かなくなるから危ない……でも、じゃあトラックの前は安全なの?
僕はトラックの前に居る方が危ないと思います。
理由は、信号待ちなどで止まったとき、後ろのトラックの運転手がスマホに気を取られて赤信号に気付かなかったら……酔っ払い運転だったら……自分では防ぎようがない事故をもらってしまいますよね。
トラックの後ろなら、車間を開ければ済むことなので防御策はうてます。
あ……詰まらくてスミマセンm(_ _"m)
さて、来週の『Be careful !!』は、【不可解な死(mysterious death)】をお送りするそうです。
お楽しみに……。