【ジャン・カルロス③Jean Carlos)】
その日は遅いランチというべきか早いディナーと言うべきなのか分からない変な時間だけど、沢山の料理が出されて久し振りのパーティーをすることになった。
これだけの料理が直ぐに準備できるはずはない。
かと言って予め用意して暖めたものでもなく、どれも新鮮で香ばしく、僕たちがこの時刻にこの場所に着くことを前提に調理されたものであるのは明白だった。
でも何故?
ご機嫌なジャンを他所に、僕たちは緊張していた。
ジャンはレオンのブリーダー。
レオンはオオカミだけど、イヌ科の動物であることは間違いない。
飼い犬は飼い主の心を映す。
だからと言ってジャンを信用するに足りる情報を僕たちは持ってはいない。
毒が盛られている可能性だってある……。
「パーティーの前に聞きたいことがあります。アナタは何故僕たちをここへ呼んだのですか?」
僕の問いに今までご機嫌だったジャンの表情が急に真顔に変る。
その表情に僕たちは不安になる。
ジャンは言った。 それは僕たちが選ばれた人間だからだと。
「選ばれた人間?」
「そう、君たちは予言によって選ばれた人間なのだ。特にラルフ・コーエン、君を中心にしてな」
「僕を中心に?」
「預言者は誰なんだ? ひょっとしてノストラダムス?」
トムが無駄口を叩き、僕はジャンが怒るのではないかと思ったが逆に「さすがジェフの末裔だな」と、たいそう喜んだ。
「ジェフって誰?」と、シェメールが小声でトムに聞くが、トムは知らないと困惑した顔で答えた。
ジャンは自分にこの役目を与えたのはコーネリア・クラウチ博士だと言い、皆は驚いた。
コーネリア・クラウチ博士と言えば、この無人システムと無人政府を開発した天才科学者であるジョージ・クラウチ博士の妻。
だけど彼女は100年も前に既に死んでいる。
「いったいそれは、どういうことなんですか? 100年以上も前に貴方はコーネリア・クラウチ博士から、そのことを頼まれた?」
冷静なケラーが珍しく動揺して聞くと、ジャンは自分がロボットではないことは君の靴が既に証明しているだろうと返し、ケラーwカービンと、ケラーの名をフルネームで呼んだ。
ジャンは、この使命を与えられたのは5代前の先祖だと言った。
そしてその時にご先祖様が託されたのは、5代後の時代に人類全体を揺るがす大事件が起きることと、その時にラルフと言うコーエン家に生まれた人物を助けることだと教えてくれた。
「じゃあ何故、アナタは直ぐに事情を話しに僕の前に現れなかったのですか? しかも僕たちを試すように様々な罠まで仕掛けて」
「もしかしてアンヌをガラガラヘビに噛ませて殺したのも‼」
ルーゴが急に怒鳴ったが、ジャンがアレは事故だと言ったあと、説明を始めた。
100年も前にご先祖様が受けた話を聞かされて正直困惑した。
ラルフ・コーエンなる人物が、自分の前に「私が予言された本人です」と現れてくれるなら話は別だが、相手は何も知らされていないばかりか自分を頼っても来ない。
ラルフ・コーエンなんて名前は全米に何人もいるだろうし、そいつの年齢も分からない。
分かっているのは名前だけ。
この歳になるまで数々のラルフ・コーエンを探し出し、そして試してきたがどれもこれも非凡な才能は無く人類のピンチを救えるようなリーダーシップも持ち合わせていなかった。
そしてようやく僕を見つけた。
「けれども、僕は違うかも知れませんよ」
「いや君に間違いない。でなければ、あの洞窟を超えてココに来ることは出来ない」
「あの洞窟を超えて、ココに来れない……」




