【謎の人物④(Mysterious Person)】
トムは洞窟の中まで入って、中に居る人物が何物なのか確かめようと言ったが、これほど外部の人間との接触を阻む人とは関わらない方が安全だし、僕たちの目的はあくまでもジャン・カルロスと言う人物に合う事だから興味本位の道草によって危険をおかすわけにはいかないのでココで引き返すことにした。
僕たちの目的は、あくまでも斥候。
戦いになるような危険はもちろん、自分たちがココまで来ているという情報を不用意に見ず知らずの人間に悟られるべきではない。
危険とは全て確率。
予め危ないと分かっていることは自身の身に起こる危険も当然高くなる。
だから常にルールを守り、安全な方法を取るべきだと思う。
丘の上に戻ると、皆無事だった。
僕が安堵したように、待ってくれていた皆も僕たちが無事何事もなく戻って来たことに安堵してくれた。
トムと僕は斥候に出ていて見つけた情報を皆に伝え、どうするのか意見を聞くと、真っ先にトムは僕が伝えなかった憶測の情報を言った。
「ラルフの見立てではヤツはおそらく一人で、それを隠すために足跡を沢山つけて大勢いるように見せかけたり所々に罠を仕掛けたりしていたんだ。まあ言ってみれば臆病者だ。俺たち全員で行けば必ずヤツを捕らえることも出来るし、食料や他に必要な物だって何だって奪うことが出来る。つまり旅がもっと快適になるってわけだ」
「僕に罠を仕掛けたのも、そいつって事?」
「そうだルーゴ!仕返しをするチャンスだ!」
トムはルーゴを焚きつけようとするが、ルーゴは少し考えてから仕返しをするつもりはないと答えた。
トムが何故だと聞くとルーゴは、やられたらやり返すと言うのは昔の争いごとが好きな人間の考え方で今はそのような時代ではないと答えた。
「倍返しをすれば、相手はぐうの音も出ないぜ! それでも、仕返ししないのか?」
ルーゴの言葉に納得のいかないトムにシェメールが言った。
「倍返しだなんて、相手に恨みを買うだけよ」
「そう恨みは暴力よりも恐ろしいし、もし何かあったとしてもココには警察も病院もない。だから暴力や恨みを伴う行動は控えた方がいい」とケラーが付け加え、トムは釈然としない表情を浮かべたまま口をつぐんだ。
「イリアは、どう思う?」
相変わらず体調がすぐれないらしくグッタリしているイリアに敢えて意見を聞いた。
イリアは自分たちの目的が何かを考えれば、自ずとするべき行動がないかと言う事が見えてくるはずだと答えた。
そして僕はトムに僕たちが今何をすべきなのかを聞く。
トムは自分の考えが間違っていたことを認め、あんな臆病者など放っておいて旅を続けようと言ってくれた。
最後に旅を続けることの可否を採決すると、全委員一致で旅を続ける事になり、僕たちは少し遅い出発の準備を始めた。
「あのやろう、まだ居やがる」
出発目にトムが上空を見上げて鷲が居ることを伝えた。
「まだ居る。とは?」
「ああ、俺たちが斥候からもどって来て、会議をしているときから空にグルグルと円を書きながら飛んでいたぜ」
僕は話に夢中で気がつかなかったが、トムはああ見えても意外に視野が広い事に驚いた。
旅支度が住んでレオンを先頭に出発する時にもう一度空を見上げたが、もうさっきの鷲は何処にも居なくて上空をパイロットの居ない旅客機が静かに抜けるように青い空を滑るように飛んでいた。




