【森の中③(In the forest)】
一度安全だと思う所でソコが地上よりも周囲を見渡せる場所、しかも降りるのは簡単だけど再び上るとなると降りるよりも遥かに時間と労力がかかるとなるとナカナカ木から降りる勇気が持てない。
しかしこのまま木の上に居ると、僕がココに来た肝心の目的であるルーゴの救助が出来ないので、深呼吸をして思い切って木から降りようと決めた。
飛び降りるにしては高く登り過ぎたので、ユックリと降りる。
階段や梯子と違って足元が見えにくいので降りるのに少し苦労していたとき、何かが近寄って来る気配を感じ降りる足を止めた。
“敵か⁉ それとも捕食動物……”
今の僕の位置は、飛び降りるのは難しいし、隠れるにしては低すぎる中途半端な高さ。
急いで降りて逃げるか、それとも登って木の上に隠れるか?
ただし降りた場合は視覚的に見つかる可能性があり、木の上に隠れるためには木が揺れるため聴覚的に見つかる可能性がある。
考えている暇もなく、気配は急速に近付いて来る。
僕は慌てずに、このままの状態で居続けることにした。
人間の情報収取手段として最も使用されるのは視覚で、それは全感覚機能の90%近くに上ると言われている。
そして動くものには敏感に反応する。
逆に言えば、動かないものは見過ごし易いはず。
僕はなるべく木の一部に見えるように木にしがみついて目を瞑った。
眼を瞑った訳は、見ることによって気配を感じ取られてしまうから。
人は人の視線には敏感に反応するから。
木に掴まっていると、直ぐに足音は近付いてきた。
人数は3~4人。
どうか通り過ぎて欲しいという僕の希望は叶えられずに、足音は木の直ぐ傍で止まる。
絶体絶命!
そう思った次の瞬間、「ラルフ、そんなところで一体何したんだ!?」とトムの声。
やって来たのは仲間で、僕は緊張の糸が切れて一瞬木から落ちそうになってしまった。
下を見るとトムだけでなくケーラーにシェメールとイリアも居て、レオンが嬉しそうに舌を出して僕を見上げていた。
“なるほど、オオカミからは逃げられないわけだ……”
木を降りて、レオンを先頭にしてしばらく進むと、森の中にポッカリと落ち葉の少ない部分があった。
「何故ここだけ落ち葉が少ないんだ?」
「落とし穴を仕掛けてあるんじゃねえか?」
「近寄らない方が良さそうよ」
僕とトム、そしてシェメールが口々にソコを見て言い、ケラーは何かの探知機のようなものをカバンから取り出してスイッチを入れた。
赤外線ビームが、その部分に当たる。
「周囲の地表の温度と変わりがないから、落とし穴ではなさそうだし、金属探知機も反応しないし、薬品反応も異臭もしない」
「じゃあ、いったいなんだ??」
「さあ……」
答えが出ない中、僕はレオン見る。
レオンはさっき木の上に居る僕を見ていたように、上を見上げていた。
僕もレオンの視線の先を追う。
「ルーゴ!」
そこには網に掛かって動かないルーゴが居た。