【復讐心を持った誰か②(Someone with a vengeance)】
僕たちの選択肢は2つ。
このままレオンに付いて旅を続けるか、旅を止めて街に降りるか。
議論に夢中になっていて気付かなかったが、そのレオンが居ないことに気がついた。
持ってきた食料や飲料が無くなったと言うのに、議論に時間を費やすばかりで一向に食料を探しにも行かない僕たちに愛想を尽かしたのかも知れない。
僕たちは皆、無人政府反対運動にこそ参加はしなかったものの、心のどこかでロボットたちを嫌っているのは確かだと思う。
ロボットたちは僕たちの代わりに働き、そこで得られた利益を僕たちに還元してくれているからこそ僕たちは働かずにこうして自由に過ごせている。
もし彼らが贅沢を覚え、働くことに不平不満を抱けば僕たちは安穏と過ごすことはできないだろう。
そしてスミスたちのように無人政府に反対したところで、すっかり骨抜きにされてしまった我々現代の人間ではとても適うはずがない。
なにしろ相手は人間の数極倍(「極」数の単位で10の48乗)もの計算能力を持つ頭脳に操られている金属製の人形たちだ。
かつてのアメリカであれば銃を個人で所有していた人もいただろうが、度重なる銃による悲惨な犯罪が繰り返されたことによりコノ世紀になり徹底的な銃狩りが行われ、いまはほぼ100%と言えるほど銃を所有している人は居ない。
銃は決められた施設でのみ使うもの。
それがUSと名を改められたコノ世紀の常識。
人間が持てる武器になる物と言えばナイフくらいなもので、コレでは鋼鉄の体を持つ人形には到底敵わない。
いったいこの平和な世界を壊そうとしている者は、何者なのだろう?
しばらくすると足音もなく何かが近付いて来る気配を感じた。
気配を感じられたのは、微かな異臭のせい。
何者!?
それとも猛獣?
もし猛獣だとしたら、僕たちは餌にされてしまうのか?