【第2の殺人事件②(The second murder case)】
ロボット警察官について行くと、シェアーハウスの駐車場に止められた車の中にはサンフランシスコに行っていたはずのジョウが胸にナイフを刺された状態で車のシートの上に座ったまま死んでいた。
「犯人は誰なのですか?」
トムが警官に聞くが、警官は「まだ分からない」とだけ答えた。
“おかしい”
無人カーに乗って来たのだから、犯行が車内で行われたにしろ車外で行われたにしろ、死体が車内にある以上記録は取れているはず。
なのに“分からない”とは、一体どういうことなのだろう?
答えは直ぐに出た。
車内に設置してあるはずの、記録装置が毟り取られていたから犯人が分からないのだ。
それにしても記録装置を車から毟り取るなんてことは、普通の人間では出来っこない。
出来るとしたら、それは人間ではなくゴリラかクマくらいなもの。
しかしゴリラやクマが犯人だとすれば、ジョウの死体は車内ではなく外に在るはずだし、ナイフで殺されると言うのもおかしい。
“ロボットの犯行なのか?”
しかしロボットは人間に危害は加えないはず。
なにかが、おかしい。
先に起きたムサラドの殺人に関しても、あの大男のムサラドが容易く胸を一突きに刺されて殺され、屋外にある通信端末が壊されたうえに管理室のバックアップメモリも速やかに外されてしまうなんて通常では在り得ない。
あるとすれば、顔見知りによる複数による犯行……。
今回はロボット警察官も直ぐには帰らないで、このシェアーハウスに残っていた私たちに事情聴取を行った。
つまり死亡推定時刻のアリバイの確認。
ケラーとトムは、それぞれ1人で自然エリアに出ていて今のところ犯行時のアリバイは確定していない。
僕とイリアは犯人で無い事は確かなのだが、ケラーとトム同様に自然エリアに出ていたのでアリバイを立証するのは難しい。
同じ理由で監視カメラのない部屋の中に2人で居たルーゴとアンヌも同じで、監視カメラのある食堂に居てローストビーフを作っていたシェメールにしても、オーブンで焼ける間にトイレに行っていたのでアリバイはない。
誰もがアリバイが無く、犯人である可能性があるが、問題はこのシェアーハウスに居る僕たちに記録装置が毟り取ることが出来る人間が居るのかと言うこと。
とても人力では無理だから、何かの道具を使ったことになるだろうが、それが何かかと言うのが事件のカギを握ることは間違いない。
警察が返って、僕たちはそれぞれの部屋に籠った。
別れ際にシェメールが、作ったローストビーフを切り分けて皿に盛ってくれたが、僕もイリアも万が一毒が盛られていることを考えると、それを食べる気にはなれなかった。
“人間不信”
こんな時に、皆で協力して問題を解決しなければならないと言うこの大事な時に、なんて事なんだろう。
僕たちは2人でこれからどうするべきか話し合ったが、良いアイディアは浮かばなかった。
そして話が途絶えたとき、誰かがドアをノックした。