fever!!!
辛うじて天井がある図書館に戻ったシノンたちは、さっそく竜から青い怪物の情報を聞き取り始める。
シノン、リベス、アスターは室内に、部屋に入れない竜は壁に空いた穴から顔を突っ込んでいた。
「それじゃあ早速、作戦会議をしましょうか。分かっていることを教えて頂戴」
シノンはノートとペンを作り出した。
しばらくして、シノンのメモには文字がびっしりと埋められていた。
シノンは顎に手を当てて考え込む。
「竜の情報から、明日その怪物が来ることは間違いなさそうね。問題は、どうやって倒すか……」
メモ中の『傷がついてもすぐに回復する』という一文を睨んだ。それが事実なら物理攻撃では勝ち目がないということは明らかだ。
「別に倒さなくていいんじゃない?そもそも頼まれてるのは追い返せなんだし」
「でもそれだと何の解決にもならないわ」
追い返すことは恐らく簡単。でもそれだと私たちが去った後もリスラは狙われ続けることになる。あの竜だけでは次の襲撃には耐えられないのだから、私たちがその怪物を倒せなければリスラは殺されてしまうだろう。
「どうしようもできないのなら仕方ないけれど、どうにかできるのなら助けてあげたいわ」
アスターはため息をついた。
「分かった、俺もイズール村でやらかしてしまった覚えがあるから今回は大人しくシノンに協力するよ。その怪物の殺し方については俺に任せて」
「何か方法があるの!?」
2人と1体の視線を浴びてアスターは悠然と微笑んだ。
「あるよ。俺の魔法が向いている。そういえば説明がまだだったね」
「俺の能力は粉塵化。つまり触れればどんなものでも粉々の灰になるってことさ。そこに物か人かは関係ない」
そこのリベスで実演してみせようか、と左手をリベスに向ける。
「貴重な戦力を減らさないで」
シノンの注意にアスターは残念そうに手を下ろした。
「いくら相手が不死身のような能力を持ってたとしても、灰になればもう元には戻れないだろうね」
確かに…これならいけるかもしれない。
「でも万が一効かなかったときの作戦も考えましょう」
「倒すことができなくても、その怪物が動けない状況になればいいんじゃないかしら」
「動けない状況……身体を拘束するとかか?」
「丈夫な紐で縛れば動けなくなるんじゃない?」
丈夫な紐、ねぇ……そんなものがここにあればいいのだけれど。私ならいくらでも丈夫な紐を作れるけど、数時間で消えてしまうなら意味がない。
「いいや、動きを封じるだけならば紐で縛る必要はない」
竜が首を伸ばして答えた。
「ここから東に少し進むと湖がある。だがその実は巨大で底なしの泥沼だ。先ほど言った通り、あの怪物は脳がない。泳ぐこともできないだろう。湖に突き落とすことができれば2度と這い上がっては来るまいよ」
「分かったわ。アスターの魔法が効かなかったときはしょれでいきまそう……クシュン」
シノンの呂律の回らない言葉の後で、くしゃみが1つ響いた。
あれ、身体がすごく熱い。これは、もしかして……
「ねぇ、私っていつもと違って見える?…クシュッ」
「いつもより顔が赤い気がするが」
と、リベスが答えた。
あぁやっぱり、こんな時に風邪をひくなんて…!!
少し遅れてアスターも反応する。
「あれ、確かに変だね。いつからシノンは2人になったの?」
「変なのはあんただ」
「一体どうしたんだ…………まさか敵の魔法か!」
急に体調を崩したシノンとアスターと、見当外れに周囲を警戒するリベス。
「違うわ、ただの風邪よ」
「カゼ…」
風邪を知らないのか、リベスは不思議そうな顔をする。
「俺は風邪じゃないよ!むしろ調子がいいくらい!」
アスターはいつもよりテンションがやや高い。
「……そこの穴から顔を出しているの、さっき竜が言ってた青い怪物じゃないかい?」
アスターはそう言って竜を指さす。リベスが2度見して確認したが、そこにいるのは確かに竜なのだ。
「ちょうど良かった、今すぐ俺が灰にしてあげるよ!」
「ちょっと待て!それは竜だ!敵じゃない。シノンも何か言ってくれ!」
顔を赤くしながらも不敵に笑んで竜に近寄るアスターを、リベスは何とか止めようとする。
「そうよアスター、そこにいる竜が見えないの?……でも言われてみれば青い怪物のようにも見える…」
「どう見ても見えない、しっかりしてくれ!それから竜よ逃げてくれ!僕1人ではどうにもならない!」
しかしリベスの必死の訴えに竜は身体を全く動かそうとしない。ただただ申し訳なさそうにするだけだった。
「そうできるならそうしたいんだがなぁ」
それから竜はお茶目に片目を瞑った。
「首が抜けなくなってしまった」
「は?」




