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閑話 3人で1チーム

 シノンたちが地下通路を進む一方で、ニム、ニナ、ヤムナの3人は未だイズール村にいた。


「プラチナブロンドの髪に、紫の瞳の女性に心当たりはないか。やけに顔の整った黒髪赤目の男でもいい」


「ヒィッ、その3人組ならついこの間までイズールにいたよ。い、今はどうだか知らないけどね」




「全然情報集まらないじゃねぇか、俺もう人探しなんてやりたくねー」


 彼らは聞き込みの最中だった。現在は日が高く上り切った昼。早朝から聞き込みを始めてていたニナは疲れ切っていた。堪らずニナはニムに愚痴をこぼす。


「なんで話しかけるとまず悲鳴出すんだよ。後ろで見てる奴らも、「本当にこいつら人間なのか?」とか「化け物だ」とか「上には上がいるものなんだなぁ」とかマジでムカつく。化け物じゃねぇし、人間だし。上には上ってなんだよ、下がいるのかよ」


「そう言うな。俺たちはこの仕事を失敗するわけにはいかないんだ」


「いいじゃん失敗したって」


「いいわけないだろう!!」


 突然、ニムが声を荒げた。周囲の注目を集めてしまったことに気づいたニムは、


「悪い、これについては宿で話そう」


 と来た道を引き返し始めた。




「ただいま、ヤムナ」


「お早いお帰りですねぇ、居場所は掴めたんですか?」


 部屋の奥から声がした。言葉に反して声の主は一向に現れない。


「いや、どこに行ったのかは分からなかった。だが昨日までここにいたことは確かなようだ」


 ニナが部屋の奥のヤムナに向かう。そこにはベッドが置いてあり、包帯を巻かれたヤムナが横たわっていた。ヤムナは昨日の怪我で動けないようだった。

 少し遅れてニムもヤムナのベッドに集まる。


「なあ、王都に戻った方がいいんじゃねぇの?」


 ヤムナの容態を確認したニナの提案をニムは拒否した。


「だめだ。シノン嬢の連れとの接触も、ヤムナの怪我も、上へは報告しない」


「なんで」


 ニナは信じられないものを見るような目でニムを見た。それは床の上のヤムナも同じだ。


「ニムは真面目だと思ってたんですけど、そうじゃなかったみたいですね…」


「理由は幾つかある。が、その前に、一つ頼みがある」


 ニムは深く息をする。ヤムナとニナの真剣な視線をそのまま見つめ返した。


「マートラ伯爵とジェード様をあまり信用しないでくれ」


「そんなわけないです!j君はいい人です!」


 間髪入れずヤムナが反発する。


「確かに今はそう見えるかもしれない。だがきっと本当はそうではない」


「何でそんなこと分かんだよ」


「じゃあお前たちは記憶も身寄りもない俺たちを何の打算もなく助けてくれる団体がこの世界にあると思ってるのか?俺たちは2人の計画に利用できるから拾われて、生かされている。そう考えた方が自然だろ?」


「でもそれがどうしてシノン嬢と怪我を報告しないことになるんですか?」


 ヤムナは尚も不満げだ。


「結果を出し続けなければ、俺たちは何をされるか分からない。殺されることはないと思いたいが、この部隊の解散なんてことは往々にしてあるだろう」


「別に解散したって良くねー?あ、俺の成績が良くなっても嫉妬とかすんなよ!!」


「……ニナの戦死に今月のお菓子をかけます」


 ニムの表情は酷く真剣だった。


「そんな賭博をするな。軍の他の連中は、協調性など欠片もない自分本位を地で行くような奴らだ。自分のために平気で仲間を売ることだってある」


 ここでフッとニムの表情が緩んだ。


「だがニナも、ヤムナも俺はそんな奴らとは違うと思っている。だから俺たちは3人で1チームだ。人員変更はさせないし、必要によっては命令無視もする。俺たちはこの世界でとても生き辛い境遇なのかもしれない。だが、助け合って全員で生き延びることを目指そう」


 それを聞いたニナがいい笑顔でニムにサムズアップした。


「よく分からないけど分かったぜ!」


「そうか、どうせお前はほとんど理解していないんだろうが、協力してくれるのならいい」


 ニムは呆れてため息をついた。


「ヤムナはやっぱり、j君はいい人だと思います。でも、このまま本当のことを報告して、この部隊が解散になってしまうくらいなら、ヤムナはニムに協力します。ヤムナもこの部隊が大切だから」


「ああ、大切にしろよ?お前以上の馬鹿(ニナ)は珍しい」


「どういう意味ですか!?」

「どういう意味だよ!?」


 ヤムナに睨まれ、ニナには軽く首を絞められながらニムは静かに笑った。

 きっと俺がこのチームを維持したいのは、他の連中よりも協調性があるからじゃない。俺がニナとヤムナを、この部隊を誰よりも好きになってしまったからなんだろう。


 家族のことなんて覚えていないが、もし居たらこんな感じだったのだろうか。

 いや、きっと違っただろうな。こんな仕事の同僚のような関係ではないはすだ。


 …やめよう。そんなことを考えたところで家族のことを思い出せるわけでもない。


「おーい、ニム!なにボーッとしてんだよ。ったく、仕方ねーなぁ。特別に俺が昼飯を作ってやるよ」


 ニナの言葉でハッと我に返る。

 また台所を再起不能にされては困るのだ。


「早まるな!待て!!今日は俺がやる!」










 

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