表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/54

春風 上

 真夜中に、コソコソと話し合う影が3つ。控えめな明かりのランプがちらちらと揺れて雰囲気はさながら寄り集まって秘密ごとを話すかのようだ。


「ちょっと厄介な軍隊が俺たちを追ってる。保護って言ってたけど。俺はすぐにでもこの村を出るべきと思うよ」


「ちょっと厄介な軍隊って?国軍?」


 シノンがアスターに質問する。それをアスターは首を振って、小馬鹿にするように笑った。


「国軍なんて束になっても俺に敵わないよ。アルシネゴ第二軍はそんなのよりもっと強い。人数は少ないけどね。さすがに兄弟なら知ってるだろ?」


 暗に人工生物なら知っているだろう、というニュアンスを含んだ問いに、リベスはきょとんとした顔を向けた。


「アルシネゴ第二軍?なんだそれは」


「会ったことなかったのかい?あんなに派手に路上生活していたのに」


「なかったはずだ。それにあんたが強いというくらいだ、見つかっていたならここに生きてはいないだろう」


「それもそうだねー。俺が戦った3人はあっさり捕まってれたけど」


「あっさり?」


 シノンが追及の目をアスターに向ける。


「あっ……」


「やっぱり激戦なんて言うのは嘘だったのね?」


 アスターは数瞬、目を泳がせると諦めがついたのか、


「嘘でした。すみませんでした」


 そうシノンに謝罪した。


「呆れた。追手に会敵したというのは?」


「本当です」


「少人数といえど、全員で当たられたら厳しい。だから俺は一刻も早くここから移動した方が良いと思うよ」


 アスターはそう言って先ほどの主張を繰り返した。


「だが保護と言っていたんだろう?だったら戦う必要はないんじゃないか?」


「良いかい、アルシネゴ第二軍は、指名手配犯を保護なんてするところじゃない。百歩譲って国と協力して指名手配犯逮捕、とかならまだありそうだけどね。本業は人工生物の捕獲。あと人工生物を使って実験とかもやってる」


 だからシノンも捕まったら実験されちゃうかもねぇ?、と冗談めかした。


「それはさすがに冗談よね?国の組織が人体実験なんてしてない……と、思いたいわ」


「アルシネゴ第二軍は国の組織じゃないよ?」


「アルシネゴ、第二軍、なのに?」


「うん。確かマートラだとか、ミートラだとかの貴族の私設兵だよ」


「貴族は私設兵というものを持っているのか。シノンの家にもあるのか?」


 興味本位でリベスが聞いてくる。


「普通はないわよ。傭兵を雇ったりしているところはあるかもしれないけど、個人で軍を作るなんて時代錯誤もいいところね」


「まあとにかく、そんな公式的な集団じゃないんだよ。だから捕まったら最後、何をされるか分からない。それに人口生物の俺たちは最初から保護に含まれていないだろうしね」


 アスターは脱線しかけていた話を軌道修正する。


「分かったわ。夫妻には申し訳ないけれど、夜が明ける前に出立しましょう」


 シノンがそう言った直後、ガタッと扉が軋む物音がした。


「誰っ!?」


 シノンの背から冷汗が垂れる。

 ただの家鳴りか、と思えるお気楽さはシノンは持ち合わせていなかった。話を聞かれていた、どのように口を塞ぐか、それがシノンの頭の大部分を占めていた。


 アスターが勢いよく扉を開く。そこに立っていたのはアウラだった。


「アウラ……いつからそこにいたの?」


「始めから。全部聞いてた、シノンが指名手配犯だってこと、リベスとアスターが人工生物だってことも」


 アウラは緊張で握りしめた指先が真っ白になっていた。


「そう、バレてしまったのなら仕方ないわね。私はあのシエスタ家の娘、シノン・シエスタ。王都から逃れてここに来たのよ。それで貴方はどうするつもりかしら」


 シノンは口角を上げて、アウラに笑って見せる。

 やはり通報するのだろうか、それともいつものように蔑んだ目線を送られるのかもしれない。いや、そのどちらでもいい。もう会うことなんてないのだから。

 笑顔とは裏腹に痛みをこらえるように身を固くしてアウラの答えを待った。


「私は……私はシノンの逃亡を手伝いたい」


そのアウラのはっきりと言い切った言葉に、糾弾を待っていたシノンは目を見開いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ