表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題噺もどき

逃避行

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんじゅうろく。

 お題:魔法少女・折り鶴・夜行列車




 この世界には、超人的な力を持つ『魔法少女』と、それ以外の『人間』が存在している。

 魔法少女は、その力を恐れられ、その存在を蔑まれ、この世界の大多数を占める、人間から、迫害を受けていた。

 それは、魔法少女と人間が歩み寄った今でも、続いている。

 いつの時代だったか、共に歩み寄ろうと、彼らは協定というものを結んだのだ。

 ―人間にとって有益で、魔法少女には不利益しかないようなものを。

 表面上では、仲の良さを強調しているが、そこかしこに、その禍根は残っている。


 ―彼女もまた、その魔法少女のひとりである。


  :


  ガタン―ガタン―


 夜行列車は、真っ暗な道を進んでいく。

 常にトンネルの中を走っているようで、今が何時なのかよくわからなくなる。

 ただ、暗い夜ということしか分からない。

 僕の隣では、安心しきった顔で、すやすやと『魔法少女』である、少々身長の低めな可愛らしい少女が眠っていた。

「…………」

 なぜ、僕と彼女が、わざわざ夜行列車で移動しているかと言うと―2人で逃避行をしているから。

 逃避行、といえば少々聞こえはいいかもしれないが、要は逃亡中ということだ。

 ある日、僕が路地裏で、殴る蹴るの暴行を受けていた時。(魔法少女よりも何よりも、人間のが怖い)

 彼女は、自分が魔法少女であることなど隠そうともせず、その力を使って、僕を助けてくれた。

(なんで、と、後日聞いてみたが、いつになっても教えてくれない。)

 しかし、魔法少女は人間に対して、その能力を行使することを禁止されている。

 人間と組んだ協定のおかげで。

 それゆえに、彼女は世界に追われ、僕は、僕のせいで追われている彼女と共にいるのだ。

 そして、僕らが夜に行動している理由は、人に見つかりにくいというものもあるのだが、一番の理由はもう一つの方だった。

 彼女は、魔法少女の中でも、少々特殊な部類らしく、昼間、日光にあたってしまうと、能力が微力ではあるが、働いてしまうらしい。

 自分の意識の範囲外で、動くのだと、彼女が教えてくれた。

 そのせいで、同類からも嫌われていたりするらしい。

 ―その彼女の能力というのが、常に持っている(らしい)折り鶴を操ることで、攻撃や防御をするらしい。

 一度、彼女に、(好奇心で)折り鶴で攻撃が出来るのかと、訪ねたことがある。

 だって、あの折り鶴である。

 折り紙に、そんなに攻撃性を見出したことがないのだから、仕方ないだろう。

 それに対し、彼女は、

「折り鶴の嘴の部分って、案外尖ってるからね〜」

 と、にこやかに言われた。(目が笑ってなかった)

 どうも、魔法少女は(それとも彼女が?)、プライドが高いらしく、自分の能力についてなんやかんやと言われるのは嫌いらしい。(チクチクと鶴で刺しながら教えてくれた。痛かった)

「―ぁ、もぅ、食べれない〜〜」

 どんな夢を見ているのかは知らないが…。

(プライドの高い魔法少女がこんなで良いのか?)

 そんなことを思っていたが、まぁ、信頼していると言うことだろう。

(出会ってスグは寝てくれなかったし…)

 警戒心の塊のような子だった、野良猫を相手してる気分だった。

 昔のこと(と言っても何年とかではないせいぜい数週間)を懐かしみながら彼女の寝顔を眺める。

「……えい。」

 むにゃむにゃと言う彼女の鼻をつまんでみる。

 出来心。

「ん、むぁー!」

 ジタバタと暴れる彼女を見てクスリと笑ってしまう。(手は離しましたよ)


  :


 まだまだ、この逃避行は続くだろうし、続けていく。

 彼女が、死ぬまで僕は一緒だし、彼女が死ぬ時が僕の死ぬ時だ。

 その日がくるまで、彼女と共に何でもない日常を過ごしていけることを僕は願っている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ