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7. 黒毛のコーサ―

第一部:主役は遅れてやってくる


たく、本当にやってられねーや。

昨日は結局ゴブリン一匹捕まえただけで、あとは聞きたくもねー親父の猛りを聞いただけだ。

こんなことを考えながら俺は酒屋からこっそりくすねたヘンドリックスを呷った。


「お頭~。昨日捕まえたゴブリンはどうしやす?」


バカのコニーだ。全くうるさい奴だ。


「イヒヒ、ヒヒ。ウヒヒ。」


スタンはいつも通り笑い声しか出さない。

全く俺の周りのやつは素晴らしすぎて反吐が出る。


「静かにしてろ!ごみ屑ども。今は遅めの晩酌中だ。」


「で、でもお頭。こいつどうするんで?昨日の夜からずっと檻に入れっぱなしですぜ。」


鎖で天井から吊り下げた檻の中では気持ち悪いゴブリンがプルプル震えていやがる。

これは見ものだ。いい酒の肴だ。


「見てておもしれーだろ。しばらくこのままにしておけ。」


「イヒ、イヒヒヒヒ。」


「全くお頭は悪趣味ですね。」


くそ、ぐちゃぐちゃ勝手を言いやがって。

まあいい。今日はうまい酒と、夜のお楽しみに免じてこいつらを許してやることにした。



ちっ、酒がなくなってきた。どうしたもんか。

そう思っていると、


「お頭。そういえば今日お祭りですぜ。行かないんですか?」


あほのコニーがいった。


「ああ?こんなクソみたいな状況なのにいったい何の祭りだ?」


「イヒ、イヒヒ、ま、まちゅり~。ヒヒヒヒ。」


「うるせースタン。てめぇは少し黙ってろ。で、何の祭りだ。」


「あのゴブリンの事件のですよ、お頭。あれを忘れないためにとかいう、毎年やってるあれ!」


「おーそうかそうか。あのバカ騒ぎ祭りか!たく、お前今日はさえてるな。じゃあそのクソ祭りで酒をいただくか。」


「まだ飲むんですかい?さすがに飲みすぎじゃ...」


「ヒヒ、イヒヒヒヒ」


「スタン、てめぇはお留守番だ。」


「ウヒヒ、イヒヒ。」


「よーし、そうと決まれば出発だ。祭りを楽しむぜ!行くぞコニー」


俺は勇んでこのクソだめの工場から外に出た。





第二部:脱兎


窓を除くと男が三人いた。シグルズもいる。

あと、天井から何かがぶら下がっていた。何か檻のような...

アティカスだ!

アティカスが捕らわれていた。

ふいにシグルズと男一人が立ち上がって工場の外に出ていった。


ヒヒーン


馬のいななきが聞こえたと思うと、2頭の馬の蹄の音が遠ざかっていった。

どうやら僕には気づかずにどこかへ出かけたようだ。

今がチャンスだ。まだ一人、男が中にいるが、シグルズがいない今が、アティカスを助けるチャンスだ。

みると、工場の二階の窓が開いていた。近くには工場の点検用の梯子もあった。

僕はその梯子を使い、二階の窓から工場の中に侵入した。


窓から中に入ると、一階から見つからないように、床に腹ばいになった。そして一階の様子を覗き込んだ。


「イヒ、イヒヒ。ウヒヒヒヒ。」


不気味な男だ。ずっと笑い続けている。気持ち悪いな。


「アヒヒ!」


急に男は工場から出ていった。


よくわからないが、誰も工場にはいなくなったので、今だと思い僕は鎖がつながっているハンドルを回してアティカスの入った檻を引き上げた。


「ジェリー?!なんでこんなところにいる。危ないぞ。早く逃げろ。」


「アティカスを助けに来たんだ。今は誰もいないし、一緒に逃げよう。」


そう言って僕は針金を取り出した。

僕はピッキングが得意なのだ。


「ジェリー、あの男はやばいんだ。早く逃げないと...」


「あの男って、シグルズは馬に乗ってどこかに行ったから大丈夫さ。」


「違う、そいつじゃない...」


カチッ


檻の扉が開いた。


よし、これで...

そう思ったとき


「ウヒヒ、イヒ、おまえ、だりぇだー。イヒヒヒヒ」


背筋が凍り付いた。

振り返ると、あの不気味な男が、僕が入ってきた2階の窓から工場に入ろうとしていた。

やばい、どうしよう。逃げ場がない。


「ジェリー、飛び降りるぞ。さあ、」


アティカスが僕の腕を引っ張った。


「行くぞ!」


僕とアティカスは飛び降りた。


ドス!


脚を痛めたような感覚がしたが、痛みを感じる暇などなかった。

僕たちは無我夢中で出口に走っていった。


「アヒヒ。まてよ~。イヒヒ。」


男も2階から飛び降りてきた。


工場の外に出るとミナがいた。


「もう、一人じゃ危ないですわ。私が付いてってあげるって言いましたのに。」


「ミナ、逃げるんだ。変な奴が追ってくる。」


「はぁ?何が追って来てますの?」


「アヒヒ。おまえ、だりぇだ~?みんなぶっこりょす!アヒヒヒヒ!」


「ひいっ!なんなんですの?」


ガタッ!

急に前の地面が盛り上がった。

工場前のマンホールからルカさんの顔がこっちを見つめていた。


「こ、ここ、ここにいたんだねジェリー。か、帰るよ。」


僕はそのマンホールにめがけて全力で飛び込んだ。


「ほら、ミナも早く。」


「そんな汚いところ...」


「いいから!」


僕はミナの腕を思いっきり引っ張り込んだ。


「ひゃっ!」


引っ張った拍子に僕とミナはマンホールの底に落ちた。

ドスン!

いてて...ああ、今日の僕は高いところからよく飛び降りるな...

ズズズ...

ルカさんはすぐにふたを閉めた。

蓋を閉めると、上からドスンドスンと音がした。


「アヒヒ。ど、どこ行ったのかにゃ~?ウヒヒヒ...」


暫くすると、不気味な笑い声は遠ざかっていった。

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