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第七十六話







「ほ~ら咲耶、高い高い~」

「キャッキャッ♪」


 8月中旬、将和は自宅にて4月に美鈴との間で産まれたばかりの娘咲耶の子守りをしていた。その咲耶の隣ではシャーリーの子である文がハイハイしながらペチペチと咲耶の額を叩いていた。


「将和さん、明日には帰るんですね」

「あぁ、済まないな」

「いえ、国を守るためですから」


 美鈴は残念な表情をするが納得する。


「ウム。余との子も順調だからシッカリと守るのだぞ」

「分かってるよディア」


 腹が大きくなってきたクラウディアがムフーと笑う。それを見ていた夕夏が口を開く。


「あら、貴方がいなくても艦隊は動くんじゃないかしら?」

「それはそれで傷つくぞ夕夏」


 夕夏の言葉に苦笑する将和である。将和が司令長官とする第一航空艦隊は多くの人材が揃っていた。まず、長官は勿論将和である。



『第一航空艦隊

 司令長官 三好将和大将

 参謀長 草鹿龍之介少将

 航空参謀 内藤中佐

 他参謀多数

 第二航空戦隊司令官 山口多聞少将

 第三航空戦隊司令官 角田覚治少将

 第四航空戦隊司令官 桑原虎雄少将

 第五航空戦隊司令官 吉良俊一少将

 第六航空戦隊司令官 寺岡謹平少将

 第七航空戦隊司令官 城島高次少将

 第三戦隊司令官 三川軍一中将

 第八戦隊司令官 原忠一少将

 第一水雷戦隊司令官 大森仙太郎少将』


 以上が主だった面子だった。ちなみに母艦飛行隊は鹿児島県の錦江湾にて訓練中である。


「ま、今は休暇を楽しむだけさ」

「うー?」


 将和が苦笑する表情に咲耶はキョトンとするのであった。そして母艦飛行隊はというと……。


『現在高度5メートル!!』

「よし、維持しろよ!!」


 出水基地から離陸した『蒼龍』艦攻隊18機は錦江湾にて高度5メートルの超低空飛行をしていた。


「栗野ォ!! もう少し下げろ!!」

『り、了解!!』


 将弘の列機である栗野少尉機が慌てて高度を下げる。


「全機、気を抜くなよ!!」

『了解!!』


 将弘は激を飛ばす。他の母艦飛行隊も厳しい訓練をしている。それは一航艦に所属する艦艇もである。


「敵雷撃機接近!!」

「クソ、前のに比べて改良型は速いぞ!!」

「文句を言わずに砲弾を運べ!!」

「西ィ!! 早くしろォ!!」


 艦艇乗員は接近してくる九七式艦攻23型に悪態をつきつつ機銃の操作をする。


「畜生、命中だな」


 古参の水兵は艦底を通過する模擬魚雷を見つつそう呟いたのであった。


「やぁ三好大尉、調子はどうかね」

「自分はまだ中尉です山口司令」


 出水基地に戻ると将弘は山口多聞に出迎えられた。


「三日後の辞令ではそうなる」

「はぁ、それで如何なさいましたか?」

「うむ。改良型の艦攻の調子はどうかね?」

「は、前型より速度は上がっていますし安定性も抜群です」

「それは何よりだな」


 九七式艦攻23型、それは前回と同じ機体である。二三型は全体としては三号をほぼ踏襲している。しかし、発動機は零戦22型と同じ水メタノール噴射装置付の栄発動機で速度は423キロ、機体は前型より生ゴム等の防弾性を高めており航続距離は約2000キロである。

 更に機銃は新たに旋回機銃として採用された99式13.2ミリ機銃が搭載されている。


「それに護衛の零戦、艦爆の九九式も改良型が出ていますし攻撃力は大きく向上しています」




『零戦22型』


 全幅 11.0m

 全長 9.121m

 全高 3.57m

 翼面積 21.30m2

 自重 2700kg

 正規全備重量 3400kg

 発動機 栄32型(離昇 1380hp)水メタノール噴射装置付

 最高速度 586km/h

 航続距離 1220km(正規)2350km(400L増槽付)

 武装

 主翼 99式20ミリ機銃2挺(各200発)

    99式13.2ミリ機銃2挺(各350発)

    30kg又は60kg爆弾2発

    97式ロケット爆弾(一番二八号)8発

    99式ロケット爆弾(六番二七号)4発




 【概要】

 堀越二郎が本命とも言える開発した零戦22型である。元は史実の零戦五三型がモデルであった。

 堀越は11型と同様に防弾にも力を入れており、一式戦『隼』を開発した小山技師と航空業界の重鎮になりつつあったに倉崎の翁に協力を仰ぎ、防弾装備はほぼ『隼』を真似ている。そのため史実五三型より多少の重量が増加している。(例 操縦席後部に13mm厚・合計三枚・合計48kgの防弾鋼板(12.7ミリ弾対応))

 発動機は中島が社の威信をかけて開発した栄シリーズの最新作である三二型でありしかも水メタノール噴射装置付である。発動機は開戦前から開発に成功していた事もあり稼働率は常に90%以上を確保していた。

 武装は94式艦戦から引き続きの97式13.2ミリ機銃を二丁、20ミリ機銃は更に見直しにより弾数を増やした20ミリ二号機銃四型が零戦に搭載されていた。

 航続距離については胴体下に400Lの陸海統一型一型増槽を搭載する事で2350kmの航続距離を何とか保有する事が出来てはいる。

 開戦時には一航艦の全空母全てに搭載しており発艦は小型ロケットによる発艦だった。更に基地航空隊の第十一航空艦隊にも配備されており比島を航空攻撃している。

 また通信装置は史実の三式空一号無線電話機が99式空一号無線電話機として開発・採用され搭載している。

 開戦時から戦争中期まで第一線で使用され後期からはビルマ方面や大陸方面に行動を移したがベテランパイロットが操る22型は連合軍の新型機(スピットファイア、F6F、P-38等)を寄せ付けぬ程であった。特に空戦性能については自動空戦フラップを採用した事で機体の重量増加をものともせずに軽快な空戦が可能となり連合軍パイロットからは「気付けば後ろを取られていた」と証言しているのが多々ある。

 また、新型無線機のおかげでサッチ・ウィーブへの対策も容易となり現に考案者のサッチ少佐はミッドウェー海戦でサッチ・ウィーブを試すも途中から参戦してきた1機の零戦22型に隊形を崩されそのまま撃墜している。

 なお、サッチ少佐を撃墜したのは宮部というパイロットらしいが乱戦で入り乱れているので確たる証拠は無かったがサッチ少佐が撃墜されたのはハッキリとしている。

 なお、中期には金星発動機と更に防弾装備を見直した三三型が投入されるのである。




 『九九式艦爆11型』


 全長 10.08m

 全幅 14m

 翼面積 34.970㎡

 発動機 金星1300馬力

 速力 435キロ

 航続距離 1300キロ

 武装 機首 7.7ミリ機銃二挺

    後部13.2ミリ旋回機銃一挺

    500キロ爆弾×1

    250キロ爆弾×1

    60キロ爆弾×2


【概要】

 ほぼ史実九九式艦爆22型がモチーフではあるが違うとすれば500キロ爆弾を最初から搭載可能としているところであろう。更には旋回機銃には13.2ミリ機銃にする事で敵戦闘機の妨害をしやすくする事になった。

 九九式艦爆は開戦時から参戦し改良型は無かったものの(後継の彗星が直ぐに出たため)基地航空に移ってからも終戦まで活動を続けた。なお、防弾装備を施していた事もあり敵戦闘機の銃撃からも生還するケースは幾度もあった。





「それがどうかしましたか?」

「いや……何でもない。今日は艦攻隊の皆とメシでも食べようか」

「あ、頂きます!!」

「こら栗野!!」

「ははは、元気があってよろしい」


 山口はそう言って笑う。


(長官……やはり避けられませんか?)


 内心、山口はそう思った。そして将和は一航艦に帰還する前に宮様らと会合をした。


「やはり日米交渉は上手くいきませんか?」

「うむ、これ以上進撃はしないし海岸付近のみの占領と何度も言っているが向こうからの要求は大陸からの撤退のみだ」


 将和の言葉に廣田はそう説明をする。


「しかし、大陸からの撤退と言っても我々が獲得した大陸の領土はそもそも日清や第一次世界大戦で得た領土じゃないか」

「それがアメリカからは『どちらも不当な領土賠償であり即時に中国に返還すべし』と主張しているのだよ」

「えぇ……」

「私とルーズベルトとの直接会談を要請しても向こうは断るばかりだ」

「……歴史の歯車は変わらない……と言うわけですか」

「いや、まだギリギリまで諦めないつもりだ。今回はもしかしたらの奇跡が起きるかもしれない」


 廣田はまだ諦めたつもりではなかった。


「もし、歴史通りに動くなら私はそのまま総理として居座る。前回を変えれなかった責任は取る」

「廣田さん……」


 廣田の覚悟に将和らも決断をする。


「分かりました。交渉と準備は平行して進めましょう」

「うむ、頼むぞ」

「へ、陛下!?」


 襖が開けられて外から陛下と木戸内大臣が現れた。


「久しく三好の顔を見ておらなくてな。様子がてらというわけだ」

「わざわざこのようなところまで……」

「日本を亡国にするわけにはいかぬ。そのためなら何処にでも参ろう」

「陛下……」

「兎に角、交渉と準備は平行して行うのだ」

『ははっ』


 9月中旬、日本は日米交渉打開のため史実で提示が考えられた甲案と乙案の両方を纏めてアメリカ側に提示した。廣田らにしてみたら最後の賭けに近かった。また、両案を出した数日後には丁案として自由イギリスを援助と軍縮のため艦艇の売却を提案している。


「……ジャップも中々、手強い相手だな」


 ハル国務長官かは渡された報告書を読みながらルーズベルトはそう呟いた。


「では緩めますか……?」

「フン、緩める理由は一切ない。一旦検討すると伝えろ」

「(期待させるという意味合いか)分かりました」


 アメリカ側からの検討するという返答に廣田らは「道が繋がった」と期待は高まった。しかし11月26日、その期待は見事に裏切られる事になる。


「……今何と仰いましたか?」

「伝えた通りです。我がアメリカは先程提示したハル・ノート以外は一切受け入れません」


 ハル国務長官の言葉に野村大使と来栖特使は困惑の表情を浮かべた。


(あの期待は何だったのだろうか……)


 打開の道が開けた。二人は元より将和らもそう思ったのだ。それの返答がハル・ノートの提示だった。しかもこのハル・ノートには史実より一部異なっていた。

 即ち、アメリカはシベリア帝政国は日本の傀儡国であり独立国として認めずシベリア帝政国は直ちに解体してシベリア帝政国の領土はソ連に満州国は中国に返還する事、大陸は元より朝鮮半島からも撤退し北樺太の朝日油田(オハ油田)は日米協力しての開発等々であった。


「……そこまでしてアメリカは日本と戦争をしたいのか!!」


 ハル・ノートの全容を聞いた宮様は激怒した。


「……三好君がいたら激怒するのは三好君だろうな……」


 将和はこの時点で日本にはいなかった。将和の指揮する第一航空艦隊は11月23日に択捉島の単冠湾に集結しており26日にはハワイへ向けて航行を開始していたのである。


「……歴史は変わらぬ……か」


 12月1日、御前会議で対米宣戦布告は真珠湾攻撃の30分以上前に行うべきことが決定された。


「廣田、このような結果になったのは真に残念だ」

「ははっ」

「伏見宮、東條」

「「ははっ」」

「史実の戦争となってはならぬ。一人でも多くの我が国民の命を救ってくれ」

「「ははっ」」


 そして陛下は全員を見渡して一言だけ告げた。


「決議通りで良い」


 御前会議が終わり宮様は堀GF長官に電話を繋いで一言だけ伝えた。


「戦争だ」


 そして12月2日17時30分、大本営より第一航空艦隊に対して『ニイタカヤマノボレ一二〇八』の暗号電文が発信されたのであった。











御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] あのロクでなし大統領はグルジアの髭親父と秘密裏に結んでますからね。 将和はルーズベルトに対して絶対激怒してますね。
[一言] 将和なら「ふざけんな!あのク〇野郎!」とルーズベルトに対して激怒していそうですね。
[一言] ルーズベルト「諸君、我々が望んだ戦争が始まるぞ!」ですか? そしてその裏で、ソ連のコミンテルンが動いている、と。
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