第七十一話
歴史の頁がまた一頁……
1940年10月下旬、2隻の『アドミラル・ヒッパー』級重巡がバルト海のゴーテンハーフェンから出撃した。その任務は護送船団への通商破壊であった。なお、同じドイツ海軍のポケット戦艦『アドミラル・シェーア』もHX船団を攻撃する任務を帯びていた。
だが2隻の『アドミラル・ヒッパー』級はフェロー諸島沖でイギリス海軍のカタリナに発見されてしまうのである。
「フム……見つかってしまったのなら仕方ない。戻るとしよう」
通商破壊艦隊司令官のラインハルト・フォン・ブルンナー少将は双眼鏡でカタリナを見つつそう呟く。
「ではこのまま一直線に……」
「いや、最初はイギリスに近づいていく」
「近づくので?」
「あぁ、そうだ」
碧眼の少将はニヤリと笑う。斯くして2隻は帰還するが進路は少しイギリス寄りだった。だがそれも偵察機の接触が増えていくと直ぐにノルウェー方向に進路を変えた。
イギリス本国艦隊はこの2隻を撃沈するがためスカパフローから出撃したのである。
「2隻を逃すな!!」
本国艦隊司令長官のフォーブス大将は手持ちの空母『フューリアス』のソードフィッシュ隊を索敵に回しておりその内の1機が2隻を発見したのである。しかし、発見海域は濃霧が発生しやすい海域でありフォーブスは航空攻撃は諦め水上艦隊による砲撃戦を展開する事にしたのである。また、『ブリュッヒャー』から盛んに電波が発信されており平文によれば『ブリュッヒャー』が機関故障して速度が低下していたというものだった。
「何としても追い付くのだ!!」
フォーブスは先に巡洋戦艦『レナウン』『アドミラル』級(『フッド』級)の『アンソン』を先行させて足止めをさせようとした。2隻は現場海域に急行したが濃霧で発見出来なかった。
取り逃がした事にフォーブスは落胆し艦隊を反転しようとした。しかし1234、左舷の見張り員が叫んだ。
「左舷から艦艇!!」
「何?」
最初は先行させた2隻と思った。しかし、霧の中から現れたのは『アドミラル・ヒッパー』『ブリュッヒャー』の2隻だったのだ。
「な、何だと!?」
「戦闘配置!! 急げ!!」
2隻は電波を大量に発しながら1万3000から砲撃を開始した。砲弾は乙巡に命中し乙巡は大破した。それを見た2隻は再び濃霧へ進路を取り姿を消したのである。
「おのれ!! 追え!! 追うのだ!!」
フォーブスは直ちに追わせるも濃霧のため発見出来なかった。だが1300頃になると霧も晴れてきたのでフォーブスは発見出来ると思った。しかし1350頃になると対空レーダーが反応したのである。
「敵機接近!?」
「何!?」
現れたのは霧が晴れた事で全力出撃が可能となったドイツ空軍であった。しかもノルウェーに展開していた第五航空艦隊の他にも仏北部で展開していた第二航空艦隊、第三航空艦隊の攻撃隊も出撃していたのである。
「対空戦闘用意!!」
直ちに『フューリアス』から戦闘機が発艦するが発艦したのは旧式のフルマーであり爆撃機と同程度の速度しかないので効果は薄かった。また、真っ先に狙われたのは『フューリアス』だった。『フューリアス』はJu88隊の緩降下爆撃により500キロ爆弾6発が命中し瞬く間に大破した。更に『アドミラル』級の『アンソン』にも爆弾が命中して炎上する。
「撤退だ、急ぎ撤退するんだ!!」
フォーブスは慌てて撤退指示を出すもブルンナー少将が呼び寄せたのは空軍だけではなかった。通商破壊を保管海域で行っていたUボートを複数呼ぶ事に成功、Uボートは都合三回の襲撃を行い『フューリアス』が撃沈、『アンソン』『ハウ』『レナウン』が大破するのであるが本国艦隊は何とか逃げれる事に成功する。
だが大破した『レナウン』は後方から追い付いたブルンナーの2隻が砲雷撃を加えて撃沈するのであった。
本国艦隊は巡戦1、空母1を喪失するに留まるが格下ーーしかも重巡に巡戦が撃沈されるとは思ってもおらずこれが報道されると英国市民達は落胆したと言われている。
「司令、今回は勝てれましたね」
「ウム。だが俺は航空機によって勝てたと思う」
海戦後、帰還する『ブリュッヒャー』の艦橋でブルンナー少将は参謀長とそう話す。
「航空戦に精通しているのは日本だったな……日本の駐在武官と交流してみるか」
帰還後、ブルンナーは総統官邸に呼ばれ英雄とされるのであった。そして日本でも軍備の増強は密かに行われていた。
「ドイツから購入したジェットエンジンは何とかモノになりそうだな」
「陸海共同での開発を急がせていますが43年まで掛かりそうです」
「急がせ過ぎて粗造品にならないよう気を付けて行いたまえ」
「無論です」
「それと海軍さんも何やら大型艦艇の増強をしているとか?」
「あぁ……『八雲』型超巡ですね」
『八雲』型超甲巡
基準排水量 32,000トン
公試排水量 35,000トン
全長 240m
全幅 28m
主機 艦本式タービン×4
主缶 九五式艦本式重油専焼水管缶×10
16万馬力
速力 32.8ノット
航続距離 18ノットで8000海里
兵装 55口径31サンチ連装砲×4
97式45口径12.7サンチ連装両用砲×6
97式40ミリ連装機関砲×6
25ミリ三連装機銃×6
同単装機銃×60
カタパルト×1
水上機×3
同型艦
『八雲』『和泉』『伊吹』『六甲』
【概要】(ネタバレとも言う)
日本海軍がロンドン軍縮を1931年に脱退後、建造就役させた超甲巡。
船体に関しては『金剛』型をモチーフとされており後に4隻が勢揃いした時は米英等から「『金剛』型を再建造した」と一時期認識されていた。
主砲は新型の55口径31サンチを連装砲として搭載している。当初は三連装の予定だったが故障が相次いだので連装砲になった経緯がある。
また、旗艦機能を求められ、艦橋は大型化されている。
また『八雲』から電気溶接を大々的に取り入れているからであり他の兵装等に変わりはない。
開戦時には『八雲』から『六甲』は第九戦隊を編成し第二艦隊に所属。1942年7月には『八雲』が外南洋部隊ーー第八艦隊旗艦を務めて『八雲』型4隻はソロモン・キャンペーンに投入される事になる。
「前回の『八雲』型を超巡にしたモノですね。まぁ今回は『畝傍』とかいますけど……」
「ですなぁ」
「まぁ生産に関しては工員等の技術者の徴用は避けているので安心ではありますけどね」
「徴用して生産力落ちるとか目も当てれませんからな」
そう話す将和であった。なお、史実だと1940年9月下旬に日独伊三国軍事同盟が締結されるが今回はまだ防共協定から変化する事なくそのままであった。
「同盟してもメリットは無いしそれならまだ防共協定している方がいい」
「んだんだ」
「技術力貰うのが良い」
「地球の反対側に支援すんのもな……」
「おいフィンランド……」
「フィンランドは別ですから」
「対アカ対策は必要だかんな」
そんな事を話す将和らである。また11月は10日から紀元二千六百年記念行事が行われ将和も参加していた。(『加賀』から発艦して御召艦『金剛』の上空を飛行したりした)
その最中の11日、イギリス軍がイタリア海軍の根拠地であるタラントを空襲した。
「航空攻撃は日に日にその存在意義を増している……我が国も航空戦力を増やすべきである」
タラント空襲を聞いた海軍左派トリオ(米内・山本・井上)はそう主張するのであるが将和は冷笑で返した。
「その前は戦闘機無用論で今度は戦力増強か……」
航本部長の立場である将和にとってコロコロと主張を変える左派トリオはどーでもいい存在だった。
(あいつらがミッドウェー攻略を抜かさんよう左遷とかしておかないとな……)
前回、まだ将和は山本らを心の何処かで信じてはいた。だが、彼等はミッドウェー攻略を主張しその結果として日本海軍は空母『赤城』『蒼龍』が撃沈されている。
(宮様にも相談しとかないとなぁ……)
そう思う将和だった。そして同年12月24日、横浜港に1隻の客船が入港した。まだ日本は戦争はしていないので外国船の入港も許可されていた。その客船から乗客らが降りてくるが白と赤の色が主となる服を着た女性が両手に旅行鞄を携えタラップを降りていき日本の地を踏んだ。
「フッフーン……漸く来たな日本に!!」
ムフーと鼻息を荒くするが女性はガソゴソと地図を取り出し場所を確認する。
「フムフム……うん、分からん!!」
アッハッハッハと笑う女性だったが取り敢えずは地図を仕舞い入国の手続きをしに行くのであった。
「待ってろマサカズ!! 今此処に余が来たからな!!」
そう言ってあの時から多少は成長したと思うクラウディア・アルベーニはそう言うのであった。
「ところでタクシーとかは無いのか?」
果たして将和の家に到着するのであろうか……。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m




