第七十話
ヴェーザー演習作戦がほぼ終了した1940年5月10日、ドイツ軍はフランスへと侵攻を開始した。展開はほぼ史実通りだったが5月21日に発生したアラスの戦いは英軍がSS自動車化連隊を攻撃するまでは同じだったが連隊が逃げ出した後、英軍を襲ったのはドイツに売却したチハで編成された第334戦車連隊であった。
「弾種、徹甲!!」
「装填良し!!」
「撃ェ!!」
臨時で連隊を指揮していたのは先のフィンランドで日本義勇軍の一個戦車大隊を率いていた玉田大佐だった。他にも同連隊には多くの日本人がいた。というのも彼等はチハを売却した際にチハの操縦等をドイツ軍に教授するために残っていた者達であった。玉田大佐の他にも西住大尉等が残って日独の技術交流をしていた矢先のフランス侵攻である。
そのため、日本軍も再び義勇軍として参加するのである。なお、これは本来なら先に上層部へ参加の報告をすべき事なのであるが大島駐ドイツ大使が上層部への報告を握り潰しそのまま参加させたのである。大島曰く「ドイツ軍に日本軍の強さを報せるためでもある」との事だがその独断専行に陸軍上層部(東條や杉山ら)がキレて大島を更迭するのであるがそれは後程であった。
それはさておき、ドイツに売却されたチハ32両は突撃してきた英軍兵士達を榴弾で凪ぎ払うとその後に突出してきたマチルダ2歩兵戦車と対戦車戦闘を上記の如く展開したのである。
最初に狙われたマチルダ2歩兵戦車は75ミリの装甲が阻んだが第二射目で装甲を貫通し撃破された。
「よし、当たれば撃破出来るぞ!!」
更に戦車連隊は20両以上のマチルダ2歩兵戦車を撃破に成功し遅れて態勢を整えたロンメル少将の第七装甲師団はアハト・アハトを主力に水平射撃で他のマチルダ2歩兵戦車を撃破、英軍を敗走させるのであった。なお、この戦果により人柄が装甲師団に停止命令を下す必要は無くなったのである。
5月28日、ベルギーが史実通りに降伏した。更にドイツ軍のA軍集団も史実と同じくイギリス海峡のブーローニュ・カレー等の港湾都市を制圧した。これにより連合軍は西からはA軍集団が、南からはB軍集団が港湾都市のダンケルク周辺で完全に包囲されたのである。
ドイツ軍が連合軍を逃がす理由は無かった。直ぐに総攻撃が行われダンケルクの海岸にはドイツ軍が殺到したのである。
海岸に殺到された連合軍は対処出来る態勢ではなく次々と降伏する羽目になり結果として救出部隊が到着する前の5月28日に連合軍は全面的に降伏するのであった。これにより連合軍は重装備は元より33万近くの兵力を一気に喪失するのである。
6月9日、ドイツ軍がダンケルク包囲を解く前日にフランス政府はパリを無防備都市宣言をしてパリを放棄し政府機能をボルドーに移転した。なお、イタリアは翌10日にちゃっかりと英仏に宣戦を布告する。そして14日にはドイツ軍がパリに無血入城するのであった。
16日にはポール・レノーが辞職、フィリップ・ペタンが首相になりフランス政府はドイツに休戦を申し込み22日にww1でドイツの休戦協定が締結されたコンピエーニュの森で調印作業に使用された食堂車の中で休戦協定が調印されたのである。これによりドイツとフランスの戦いは一応の幕は降りたのであった。
「ヘルマンもどうやら頑張ったようです」
「うむ、それにどうやら陸海にも我々と同じ同志がいるらしい」
「……大丈夫とは思いたいですね」
暴走が起きなければいいが……と願う将和である。
「それとそろそろ岡田さんも総理を降りたいと言っている」
「もう御年ですからね……そうなると次の総理は……」
「近衛は無理だな。あやつは恐らくはいらん事しかしない。それに奴の周辺のアカらしき人物が出入りしているとの事だ」
「なら……廣田さんになりますね……」
「ハッハッハ。任せてくれ三好君」
将和の言葉に会合に参加していた廣田は笑いながら頷いた。
「とすると当面の対処は米国だが……北部仏印だよなぁ……」
「だが中華民国とは戦争をしていないし進駐する理由も意味も無い。まぁゴムは欲しいがな」
「それですね。それとドイツ海軍が駆逐艦の図面が欲しいと……」
「……向こうは甲型を量産出来る能力は無いだろう?」
「まぁそうなんですよね。それで堀さんから『松』型の図面を渡してみては? と言っています」
「『松』型をか?」
『松』型とは史実の『松』型ではなく、海軍が海上護衛用兼艦隊型駆逐艦として運用しようとしていた戦時量産型駆逐艦であった。
以下が『松』型の性能である。
『松』型駆逐艦
満載排水量 1700トン
全長 110m
機関 九五式艦本式重油専焼水管缶×2
艦本式タービン×2(25,000馬力)
速度 30.6ノット
航続距離 4200海里
兵装 97式45口径12.7サンチ単装砲×3
92式四連装酸素魚雷発射管×1
1式40ミリ連装機関砲1基
25ミリ単装機銃16基
97式爆雷(史実三式爆雷)×80
97式爆雷投射機×4(史実三式爆雷投射機)
99式6連装対潜噴進砲×3
爆雷投下軌条一式
電探 13号対空電探改1組
22号対水上電探改四1組
ソナー 1式水中聴音機2組(史実四式ソナー)
97式水中探信儀2組(史実三式ソナー)
【概要】(ネタバレともいう)
三周目の三好日本海軍が戦時中に建造した戦時急造駆逐艦である。主目的は対空対潜であったので魚雷は搭載していない。船体等の設計等は史実『松』型を取り入れている。三好日本海軍では唯一大量生産に成功した駆逐艦であり艦隊は勿論、海上護衛隊にも配属され米潜水艦との死闘を繰り広げられる。また、ドイツ海軍と後の自由イギリス海軍にも図面が提供され独英が『松』型で戦いを繰り広げるという珍事件もある。他にも戦後も多目的運用のため護衛艦に艦種を変更、近代化改装で60年代まで運用され、後に東南アジアの海軍に売却され再度の改装で2010年代まで運用される事になる。
「まぁ……甲型では無いから特に問題は無いし酸素魚雷も提供じゃないからな……」
「じゃあGOという事で。ついでに『天城』型の図面も提供します」
「……今回は作れるんだろうか……」
「まぁ向こうに期待するしかないですね」
そう話す将和達であったがまさかあんなどんでん返しが起きるとはこの時は露も知らなかったのである。そんな事はさておき、海軍はドイツ海軍に対して『天城』型空母、『松』型駆逐艦の図面を提供するのである。
同年8月8日、『大和』が進水した。なお、これには主砲46サンチ砲、排水量6万トン余りと海軍が世界に向けて公表した。
「何と!? 奴等は46サンチ砲の戦艦を進水させたと!?」
「はい、先の『イセ』型、『ナガト』型に続いてやられましたな」
ルーズベルトの驚愕に海軍作戦部長のハロルド・スターク大将は表情を歪める。
「作戦部長、それは軍縮条約に違反するのでは?」
「いえ、彼等は脱退してからの改装で主砲強化されているので違反ではありません。また、進水から推測して脱退後に建造を開始していると思われるでしょう」
「……ならば我々はまたしても敗北したと?」
「この時点では。ですが両洋艦隊法は一部修正でしょう。つまりはBプランです」
「……確かそれは……」
「そうです。少しばかりの犠牲はありますがやるしかありません」
アメリカ海軍も40.6サンチから上……つまりは46サンチ砲の開発は行っていたが世界恐慌等で予算が削られたりと運が悪かったりしていたのだ。だがスタークのBプランとは『Iowa』級の6隻を4隻に削減、その資材を『モンタナ』級に以降し『モンタナ』級も4隻に削減しつつ46サンチ砲の『オハイオ』級を建造するというモノであった。なのでスタークが言った犠牲とは削られる艦の事であった。
「無論、空母の整備も行いつつの同時並行ですが問題は無いでしょう」
「頼りにしているよ」
スタークの言葉にそう言うルーズベルトであった。そして舞台は再びヨーロッパへと戻る。
「ではゲーリング君、君は少なくともFw190A-8が全て揃いきるまではアシカ作戦はやらないべき……と?」
「その通りです総統」
ベルリンの総統官邸でゲーリングとヒトラーはアシカ作戦について話をしていた。
「確かに我が空軍が保有するBf109は英空軍を圧倒出来るでしょう。しかし、Bf109には弱点があります」
「ふむ……弱点とは?」
「航続距離の短さです。Bf109は残念ながらドーバー海峡を越えてイギリス本土空襲を護衛し尚且つ空戦をして帰還出来る脚はありません」
「しかし君は先日帰還出来ると言っていなかったかね?」
「総統、それは積極的な空戦をしない場合です。空戦をしない場合であればBf109でも帰還出来ます。総統、これを御覧下さい」
ゲーリングはヒトラーに書類を渡す。
「これは?」
「Bf109とFw190A-8の諸元を簡単に記したモノです。その下の方にある航続距離を御覧ください」
「フム……E型とな?」
「ヤー。現在、空軍が使用しているのがE型です。E型の航続距離は600キロ程度しかありません。ですがFw190A-8は……」
「フム、燃料タンクを付ければ1400キロとな?」
「その通りです。倍以上の航続距離を持つ事になります」
「……成る程。それでゲーリング君はどれくらいの猶予が欲しいと?」
「少なくとも、今年中のイギリス本土攻撃は控えるべきと思います。ただし……」
「ただし……?」
「ドーバー海峡の制空権獲得は行っても問題は無いと思います」
「成る程。それで使用する航空艦隊は?」
「三個航空艦隊。第一、第二、第三航空艦隊を投入したいと思います」
「第一? 東部のも投入するのかね?」
「はい、イギリスを屈服させるのであればそれくらいは必要です」
「フム……」
幾らか考えたがヒトラーは三個航空艦隊の投入を許可するのである。
「良かろう。だがゲーリング君、これだけは覚えておきたまえ。英国は何として屈服させねばならない」
「ヤー。勿論です」
斯くしてドイツのイギリス本土攻撃は延期されたがドーバー海峡の制空権獲得は引き続き実行されたのである。
だがヒトラーは命じた。
「レーダー、イギリスの海上封鎖を進める必要がある。この意味が分かるな?」
「……勿論です」
「通商破壊艦隊……これを早期に編成してイギリスを苦しめろ」
「直ちに取りかかります」
そしてドイツは一人の英雄を誕生させる事になるのであった。
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