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第六十九話










「やれやれ、日本は凄い贈り物をしてくれたものだな」


 1940年1月、ドイツの首都ベルリンでは日本義勇軍から売却された九七式中戦車を見ながらドイツ国防陸軍の第19装甲軍団長のハインツ・グデーリアン中将はそう呟いた。

 彼の前にある九七式中戦車は全部で11両もあった。これはフィンランドへ向かう日本義勇軍の輸送船団の一隻が機関故障という形でキール軍港に入港し荷揚げされた物であった。

 日本はドイツに九七式中戦車を先に売却したのも合わせて現時点では12両も売却していた。


「これがフランス戦に間に合えば『今回』は行けるな」


 意味深に呟くグデーリアンにその背後から一人の男がやってきた。


「韋駄天は今日もヤーパンの戦車を調査かい?」

「エーリッヒか」


 やってきたのはエーリッヒ・フォン・マンシュタイン中将だった。


「こいつを量産かそれに変わる戦車を量産配備しておかないとフランス戦も局地戦では負けるぞ」

「だろうな。それを我々は『前回』経験した……」


 この二人、ヘルマンやレーダーと同じく前回の記憶持ちであった。フランス戦は確かにドイツ軍は勝利していたが局地戦とも言える戦いでは思わぬ反撃を食らったりしていた。なので用心して掛からねばという事である。


「陸軍の同志は我等二人だけか……」

「気落ちするな、海軍と空軍はレーダーとゲーリングの一人ずつだけなんだぞ」

「まぁそれはな……それでやはり左遷されそうか?」

「……総司令部の親しい者からの情報ではドイツ東部にだとの事だ」

「余程総司令部とちょび髭はお前の事が嫌いと見えるな」


 溜め息を吐くマンシュタインにグデーリアンは笑うのであった。そしてフィンランドでは2月1日にソ連軍は反撃に出た。スターリンはヴォロシーロフから北西方面軍司令官にセミョーン・ティモシェンコになり増援の重火器やKV-1戦車等が送られていた。

 ティモシェンコは早速カレリア地峡に空爆と砲撃を10日まで繰り返した。しかし空爆は日本義勇軍航空隊の戦闘機隊に阻まれ砲撃も同じく航空隊の攻撃にあい思った程の成果を挙げる事は出来なかった。だがそれでも2月11日より軍の前進が開始されたのである。


『ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』


 ソ連軍は雄叫びを挙げて突撃を開始する。それをフィンランド軍が迎撃をする。しかし12日、ラハデ地区の防衛線に一つの小さな穴が開いていた。この穴目掛けてソ連軍が突撃したがそれを迎撃したのは配備に間に合った日本義勇軍だった。


「ようこそソ連軍、殺し間へ」


 旅団長の宮崎繁三郎少将は防衛線に飛び込んできたソ連軍を見てニヤリと笑う。その瞬間、日本義勇軍の一斉攻撃が始まったのだ。


「やられた、罠だ!?」

「逃げろ!?」

「駄目だ、後ろには督戦隊が……」


 兵士達は逃げ出そうとするが瞬く間に撃ちやられていく。だがソ連軍は戦車を全面に押し出してきた。


「敵新型戦車!!」

「弾種、徹甲!!」

「準備良し!!」

「撃ェ!!」


 戦車壕で待機していたチハが射撃をする。だが角度が浅く跳ね返された。射撃に気付いたKV-1が砲塔を旋回する。


「クソ、角度が浅い!! 装填急げ!!」

「砲塔旋回!! 砲身此方に向いた」

「伏せろ!!」


 今度はKV-1が射撃をする。砲弾は前面に命中したが此方も弾かれて貫通しなかった。


「嫌な音だぜ全く……」

「砲弾装填完了!!」

「照準良し!!」

「撃ェ!!」


 再度チハが射撃をし今度はKV-1の前面装甲を貫通させKV-1を撃破したのであった。


「ざまぁみろ!!」


 戦車隊を指揮する西住少佐は撃破されるKV-1を見て歓声を挙げる。だが直ぐに別のKV-1を攻撃するのであった。更に上空では日本義勇軍航空隊がソ連軍を空爆していた。


「これで4機目っと……」

『全くソ連軍は後から後から湧いて来ますなぁ』

『勘弁してほしいぜ』


 将弘の小隊はカレリア地峡に飛来する敵戦闘機を撃墜していた。今日はこれで三度目の出撃であった。


『基地が近いから良いけどパイロットの疲労度も酷そうですな』

「あぁ、なるべく深追いはしないようにしておかないとな」


 将弘達はそう言いながらもまた獲物の戦闘機を見つけて襲いに懸かるのである。この穴は防ぐ事に成功したがマンネルハイム線のあちこちにも同様の穴が開いておりマンネルハイムは無傷の兵力である第五歩兵師団を送ったがそれも焼け石に水であった。

 結果、多くのトーチカが占領されソ連軍の通過を阻止出来なくなってしまうのである。それでも日本義勇軍は戦車大隊を押し出してラハデ道の交差点を占領していた敵戦車大隊を壊滅させ叩き返す事には成功している。

 しかしフィンランド軍は14日から15日にかけてスンマ地域からの撤退を始めた。15日の朝にソ連軍は100両の戦車と二個師団でスンマ地域を占領した……がその夜半、日本義勇軍が最後の反撃として二個戦車大隊を先頭に夜襲を敢行したのである。


「突撃ィィィィィィィィ!!」

『ウワアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』


 完全に油断していたソ連軍は慌てて迎撃をするもチハを先頭にしての突撃であるため二個師団は敗走し戦車も60両近くが鹵獲されてしまうのである。なお、日本義勇軍はソ連軍が敗走後にスンマ地域から撤退を開始し夜明け後に再度侵攻してきたソ連軍はもぬけの殻のスンマ地域を日本義勇軍に怯えながらも再度占領するのであった。

 戦車の鹵獲にフィンランド軍は喜びを得たがマンネルハイム線から撤退、縮小した事でカレリア地峡の戦線の維持は難しくなったのである。

 これによりフィンランド政府は1月12日にソ連が提案した和平交渉のテーブルに座る事になったのである。

 2月21日、史実より早くに和平交渉が再開された。その間にもヘルシンキ最後の防衛拠点であるヴィープリに対してソ連軍が攻撃を開始していた。なお、カレリア地峡から撤退した日本義勇軍はヴィープリ防衛の任に着き火消し部隊担当をしていたのでソ連軍は攻撃しても追い返されるのが何度もあった。

 3月3日に停戦協定が結ばれ両軍は戦闘を停止したのである。


「此度は真にありがとうございました」


 マンネルハイムは遣芬軍司令官の畑大将と握手をする。


「いえ、我々の力がもう少し大きければ……」

「いやいや、諸外国は何処も我が国に手を貸そうとはしませんでした……ですが遥か極東という貴方方が来て下さった……これは日芬の友好の証です」


 マンネルハイムは涙を浮かべながら畑に告げる。だが日本義勇軍も冬季戦に関しては大きな戦訓があったのは言うまでもない。


「内地からの命令で我が義勇軍の武器は殆ど破棄する事になっています……が何処に破棄するかは記載されていませんので破棄に関してはフィンランド軍にお任せします」

「分かりました」

「ただ戦車……チハに関してはドイツに売却する車両もあるのでそれ程は破棄出来ませんので御了承ください」

「無論です。此処からは我々フィンランドの仕事です。短い間でしたが大変感謝しています。ありがとうございました」


 マンネルハイムはそう言って畑に深く頭を下げ畑はマンネルハイムに敬礼で返したのである。

 1940年3月6日、日本は停戦した事で義勇軍の帰還を発表した。8日にはヘルシンキ市民達から盛大に見送られ惜しまれつつも帰国の途に着いたのであった。なお、ドイツに売却する兵器を搭載した輸送船は密かにキール軍港に入港しドイツに兵器を売却し代わりに購入したドイツ製武器を満載して出港するのであった。

 そして1940年4月9日、ノルウェーとデンマークに侵攻するヴェーザー演習作戦が開始された。

 作戦は概ね史実と同じ通りであった。一部が違うとすればナルヴィクであった。当初はナルヴィクも攻略予定だったが「ナルヴィクに駆逐艦だけを派遣するのは愚の骨頂である」とレーダーが主張したので先にオスロ等を攻略してからナルヴィクに向かう事になった。

 そのためオスロを史実のグループ+駆逐艦10隻が同行したのである。しかし9日0500頃、先に突入した駆逐艦隊はオスカシボルグ要塞の砲台から砲撃を受けた。

 この砲撃で駆逐艦『ヴィルヘルム・ハイドカンプ』『アントン・シュミット』が撃沈されるも旗艦『ブリュッヒャー』が反撃して砲台を沈黙させるも『リュッツォウ』も損傷したので引き返す事になった。これによりノルウェー政府や王族が脱出する時間を史実通りに作ってしまうのである。


「二隻の喪失は残念だが八隻は残れたから良しとしよう」


 報告を聞いたレーダーはそう頷くのであった。







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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