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第六十二話








 8月30日、上海派遣軍は総崩れした中華民国軍を追撃しつつ上海に入城した。


「漸くか……」


 陸戦隊本部司令部では陸戦隊司令官の大川内少将が来てくれた援軍に溜め息を吐きつつもニヤリと笑みを浮かべるのである。そして内地でも一気に戦局打開のために増援(第10軍)が決定された。


 第八師団

 第九師団

 第十二師団

 第百一師団

 第百二師団

 戦車第一連隊

 戦車第二連隊

 二個野戦重砲兵旅団


 戦車連隊は中戦車は八六式だったが旧式化が進んでいたので実質の主力は九三式軽戦車だった。そして9月29日、上海派遣軍がゼークトラインへの攻撃を開始すると第10軍は杭州湾を目指した。史実と同じく杭州湾に上陸する腹であった。

 上陸支援に三戦隊の『金剛』が派遣され『金剛』は『龍驤』が大破(内地回航)した鬱憤を晴らすように艦砲射撃を敢行した。その中を第10軍は杭州湾の金山衛に上陸し蘇州河で上海派遣軍と交戦している中華民国軍の背後を突こうとした。それに悟られないために第一機動部隊から発艦した攻撃隊は激しく蘇州河の南岸にある中華民国軍陣地を爆撃したのである。

 そして10月6日、第10軍は中華民国軍の後方に展開が完了したのである。


「全軍攻撃開始!!」


 第10軍司令官の山田乙三中将は全面攻撃を開始させた。中華民国軍は突如後方からの攻撃に慌て出した。


「イカン!? このままでは壊滅するぞ、急いで撤退だ!!」


 右翼軍総司令兼第18集団軍総司令の張発奎は撤退を開始させるもそれは遅き事だった。上空では第一機動部隊から発艦した攻撃隊からの爆撃も開始されており各所で混乱していたのだ。

 それでも張発奎ら司令部は独自に撤退を開始したが1機の九四式艦爆が急降下爆撃を敢行、250キロ爆弾でもろとも吹き飛ばされたのである。


「フム、敵戦車がいないのは仕方ない。戻るとするか」


 爆撃をしたハンナはそう眼下を見ながら呟きつつ『加賀』に帰還するのである。また、この爆撃で左翼軍第9集団軍司令の張治中も吹き飛ばされており両司令部は壊滅し残ったのは烏合の衆に近い兵士達だけだった。

 中華民国軍への攻撃を緩める事を一切無く実に約18万の兵力がこの世から消え、残りは戦場から逃亡し残った25万の兵力が降伏したのである。

 第三戦区約80万の兵力が半壊したのである。無論蒋介石は頭を抱えた。


「これでは南京防衛も再構成をしないといかないぞ……」

「主席」

「どうした?」

「実は張治中のですが……」


 そんな蒋介石を裏腹に日本軍は速攻作戦をしようとしていた。


「つまり南京は包囲すると?」

「その通り。今、出来れば早期に包囲下に置く事が先決」


 上海で将和と清、山田中将らはそう話していた。


「まごついていては蒋介石が南京を脱出して奥地へ引っ込みます。そうなれば泥沼の事変に陥ります」

「うむぅ……しかし内地に言わないと……」

「時間はありません」


 そう山田らを急かす将和である。内地でも前回の戦訓に基づいて行動していた。


「では支那派遣軍総司令には白川大将を……」

「彼ならやってくれます」

「それで増援は?」

「第十六師団、第十八師団、第十九師団の三個師団を主力としています」

「ウム。此処で蒋介石の息の根を止めるんだ」


 斯くして南京派遣軍が編成され白川大将らは11月下旬には上海入りをしそのまま南京を目指したのである。だがそこで待ったが掛かった。

 蒋介石が動いたのである。


「何!? 蒋介石が和平工作に動いただと!?」


 内地では岡田総理からの報告に宮様らが驚愕した。


「ウム。蒋介石が米英独の三大使の仲介の元での和平なら応じると……」

「願ってもない好機だが、何故急に……?」


 宮様達がそう首を傾げたのも無理はなかった。というのも張治中が戦死後に蒋介石が張の身元や書類を捜索させたところ、中国共産党との繋がりが見つかったのである。しかも第二次上海事件の騒動も張治中が手を入れていたのが判明したのだ。


「あの野郎!? やはり我が祖国を裏切っていたか!?」


 報告を受けた蒋介石は怒り狂いながらも一つの妥協点を見出だした。即ち日本との和平であり中国共産党と戦う構えである。

 それ以前は南京からの撤退を断固反対を表明していた唐生智でさえ張治中の裏切りに怒り狂い蒋介石の和平工作に賛成した程であった。

 このように中華民国側の和平工作が活発化したので日本政府も軍に戦闘を停止させ外交による解決を見出だす事にしたのである。

 この和平交渉中、南京に向かおうとしていた全軍が上海に戻った事で上海の治安も回復しつつあるのである。斯くして12月1日に南京にて日中の和平交渉が始まるのである。


「……つまりは中国共産党が仕掛けたと?」

「如何にも。更に共産党が実行したに過ぎず、命令したのは他にいます」


 廣田の言葉に蒋介石は答えた。


「ソ連。奴等が日中の友好を傷つけ戦争に走らせたのです」

「成る程(モノは言い様だな)」


 蒋介石の言葉に廣田は内心で笑うがそれを表情に出さないのが外交マンである。


「上海租界からは40年までに退去……というのは変わりありません。ですが此方も感情というモノがあります」

「……亡くなられた遺族への賠償金は必ず出す」

「もう一つ」

「……海南島か」


 蒋介石の言葉に廣田は無言で頷いた。


「貴方方は此方に遺族への賠償金、軍と政府には海南島。そして此方は武器の売却です」

「……武器の売却とな?」

「此方の軽戦車は大陸でも運用可能ですし装甲車も何処かの国よりは多少役には立つかと……?」


 なお、日本軍は第二次上海事変で中華民国軍が大量に放棄した小銃や軽機関銃等を大量に鹵獲していた。そのうちの小銃は返還するとまでしていた。(チェコ機関銃は返さない模様)

 廣田の言葉に蒋介石は思わず腰を上げそうになる。日本の戦車等は此方が保有する戦車より遥かに強いのは当たり前だった。(一号戦車等)


「和平がなりましたら軽戦車……まぁ陸軍がどれくらいによりますが……」


 廣田はチラリと隣にいた杉山に視線を向ける。視線を向けられた杉山は苦笑しながらも口を開いた。


「まぁフィンランドの支援も考えますと……今は軽戦車100両が限度ですな」

「100両!? 100両も売却して下さると!!」

「はい。他にも装甲車も100両程」


 蒋介石は日本の提案に乗る事にした。12月15日に日中和平が南京で改めて行われた『南京和平条約』が締結されたのである。


・中華民国は犠牲者遺族に遺族金を支払う

・日本は上海租界からの撤退を1940年までに完了

・中華民国は内部を抑えきれず戦争を起こした。賠償として海南島を日本に譲渡する。


 以上が盛り込まれていた。また中華民国は改めて中国共産党を撲滅する事を宣言し国共合作は崩壊した。なお、日中和平に慌てたの米独であった。


「ムムム……」

「当てが外れましたな大統領。まさか蒋介石が和平を選ぶとは……」


 ホワイトハウスではルーズベルト大統領(悪魔)が唸っていた。


「……まぁ良い。大陸からジャップが撤退するのであれば我々の資本を乗り込ませれば良い」

「分かりました。直ちに」

(……案外ジャップも利口者がいたという事……用心せねばな……)


 ルーズベルトは日本への警戒を強めるのである。そしてドイツベルリンの総統官邸では……。


「まさか日中が和平するなど……それでファルケンハウゼンらの軍事顧問団は?」

「引き続き留まってほしいと願われ中華民国軍の近代化を促進させています」

「ウム……だが時期を考えねばな」

「日本に近づく……と?」

「我が空軍大臣は日本と近づきたいようだが?」


 ヒトラーの言葉にゲーリングは畏まる。


「何れは何らかのアクションがある……と考えてくれゲーリング君」

「分かりました総統(まさか……あの同盟を……?)」


 ヒトラーの言葉にゲーリングは頭を下げるのである。そしてソ連はというと……。


「フン、毛の奴も案外使えんな……」


 クレムリンではスターリンが報告を聞きながらパイプタバコを吸う。


「ベリヤ、毛は何時でも切り捨てるようにはしておけ。ただし、周とやらは有能だそうだ。話はしておけ」

「ダー同志」

「それと……満州に祝杯を上げる準備をしろ」


 ニヤリと笑うスターリンであった。








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