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第五十話

本年二話目投下






 1930年4月22日、ロンドンで開かれていたロンドン海軍軍縮会議は閉会した。日本の補助艦艇保有量は史実と異なり事実上の対英米七割であった。

 原内閣は勿論海軍省内部でも賛成の動きだった。しかし軍令部の一部は(末次)潜水艦保有量が希望量に達しなかった事の一点を理由に条約拒否の方針を唱えたのである。しかも3月17日には「海軍は軍縮条約に不満がある」と海軍当局の声明が夕刊に掲載されたのだ。

 声明を漏らしたのは軍令部次長の末次信正だった。末次はあれこれと条約批准を回避するために工作をした。時には陛下にまで軍縮条約に反対する旨を述べてしまうがこれを陛下は元より宮様や東郷達の逆鱗に触れてしまうがまだ表面化はしなかった。

 更に末次を更迭する前に当時野党だった立憲民政党へ内密に接触して統帥権を帝国議会衆議院本会議で取り上げたのである。

 当初、立憲民政党総裁の濱口雄幸は統帥権の取り上げに反対だった。濱口や若槻禮次郎らは条約批准に賛成の立場であり党内でも本会議に取り上げはしないと決定していたが末次の工作を受けた党員が彼等に反して取り上げたのである。

 まさかの出来事に濱口は直ぐ様取り上げた党員を除名させたが時既に遅しの状態である。しかも5月20日には条約に反対する草刈少佐の自決もあり青年将校や国家主義者の勢いは増していき鉾先は会議に参加していた将和に向けられた。


「三好少将は条約に参加しておきながら条約の締結をむざむざと見ていたのか!!」

「何が撃墜王だ!!」

「三好は売国奴だ!!」


 青年将校や国家主義者達は連日に渡り将和を非難する。更には新聞社までもが面白おかしく記事を書いて将和を付きまとうようになる。


「流石にこの事態はいかん」


 焦った東郷は直ぐ様軍縮条約に賛成を表明、宮様も賛成の表明をすると共に統帥権を持ち出した立憲民政党を非難した。海軍部内で神聖視されていた東郷と皇族出身の宮様の賛成に海軍部内は大きく揺れた。だが二人の条約賛成により10月2日、ロンドン海軍軍縮条約は批准されたのである。そして末次は同日付で予備役に編入され海軍を追われたのである。ちなみに財部も海軍大臣を辞職したが予備役になる事はなかった。

 しかし青年将校や国家主義者達には二人の賛成が将和を守ろうとしたように見えたのである。


「三好少将は東郷元帥と伏見宮殿下に命乞いをしたに違いない」

「そうだ!! あんな撃墜王は我々には不要である」

「末次閣下は正しい事をしてきたのだ」

「末次閣下を追いやったのは三好に違いない」

「ならばいっその事……」


 そしてそれは後の事件に繋がるのである。


「三好君、君の身辺に護衛をつけよう」


 いつもの会合で宮様はそう告げた。東郷は元より陸軍の東條は畑らも頷いていた。


「ですが……」

「今、君が暗殺でもされたら日本は終わりだ。史実と同じ道を歩む事になる」

「左様」

「実は華族の反三好派も事に加担しているとの噂もあるのだ」

「反三好派?」


 なお、華族の反三好派とは以前、将和の祖父である和盛が亡くなる前に教えてもらった岩倉や三条らの華族であった。


「奴等、落ちぶれているから何を仕出かすかは判らん。だから此処は護衛を付ける事に納得してくれ」

「……分かりました」


 東郷らの説得で将和も護衛の件は了承した。数日後、陸海軍は「世界的有名である三好少将に暗殺予告の紙が寄せられた」として警備隊を自宅とその近辺に配備させた。しかしこれを不満を抱く青年将校達を刺激させたのである。


「やはり三好少将はやらねばならん!!」

「しかし、武装した一個小隊が護衛についているのだぞ」

「うむ……数を増やさねばならぬ。今はまだ動かぬ時だ」


 彼等は時を待ったのである。そして翌年の1931年5月14日、横浜港に二人の外国人が日本の地を踏んだ。


「フッフッフ。来たわよ日本!!」

「はいはい、はしゃがないの」


 客船『浅間丸』から降り立ったのはシャーリー、セシルの二人だった。


「今回もインタビュー?」

「勿論。それとそのまま居座るから」


 将和と分かれた後、シャーリー達はアメリカに一時的に帰国していた。居座るための荷物の準備等もあったからだ。


「よーし、住所は前回と同じ所だからさっさと行こうか」

「はいはい」


 二人はそう言いながら紙に書かれた将和の住所へ向かうのであるが……。


「三好少将にインタビュー?」

「は、はいそうです……」


 住所に到着した途端、武装した一個小隊の陸戦隊員から質問をされていた。なお、シェリルは他の隊員と遊んでいた。


「三好少将と知り合いで?」

「は、はい。去年のロンドン軍縮会議でインタビューをさせてもらいまして、三好少将からまた良ければインタビューを受けると……」

「ふむ、確認しますのでお待ちください」

(ちょっと警戒度が高過ぎないか……?)


 前回よりも厳重な警戒にシャーリーは内心、冷や汗をかいていた。そして連絡がいったのか隊員の表情は笑顔になった。


「連絡がつきました。確かにインタビューは受ける予定だったと言っています。ですが今日、三好少将が帰宅するのは1900時頃になりますが……」

「あら、それなら家に上がらせるわ」

「あ、宮原さん」


 そこへ玄関から現れたのはメイド服を着た夕夏である。今の夕夏は住み込みで働くメイドの身分だった。夕夏を見た瞬間、シャーリーは泣きそうになったがまだ隊員がいたので我慢した。


「宜しいので?」

「えぇ、奥方も構わないとの事です」

「分かりました」

「ありがとうございます」

「いえいえ」


 そして二人は自宅に入れたのである。入った瞬間にシャーリーは夕夏を抱き締める。


「久しぶり夕夏。元気そうで何よりだよ」

「久しぶりねシャーリー。ロンドンのホテルで夫とヤり合ったのは聞いたわ」

「誰から?」

「グレイスからよ」

「あの野郎……」


 夕夏の言葉にシャーリーは苦笑する。



「まぁ夕夏もちょっと皺があるけど間違いなく―――」


 その時、シャーリーは目の前に薙刀の刃が添えられていた。いつの間にか壁に立て掛けていた薙刀を夕夏が取ってシャーリーに刃を向けていた。


「皺が……何かしら?」

「ハハハ、ジョ、ジョークだよジョーク。ボリビアジョークだよ!!」


 夕夏の満面な微笑みにシャーリーは完全に不利を悟った。だが此処でシャーリーに運命の女神は味方した。


「そこまでにしときなさいよ夕夏」

「ターニャ」


 現れたのはターニャとナーシャだった。


「久しぶりねシャーリー。それと冗談も言っていいのと悪いのがあるからね?」

「久しぶりターニャ。いやぁ前回もこんな感じだったからつい……」

「なら私もつい首を刎ねようかしら?」

「もう言わないので許してください!!」

「分かれば宜しい」


 土下座をするシャーリーに夕夏は満足そうに頷き薙刀を収めるのである。


「そうか、シャーリーとセシルが来たか」


 将和がその報告を聞いたのは大分県に新設、建設中である大神海軍工廠の視察を終えて自宅に帰る途中だった。大神海軍工廠は史実では25ヘクタールの広大な土地を買収して建設予定だったが後に台湾の高雄に変更されたがこの世界では開戦前の1931年に工廠の建設が決定されたのだ。

 大神工廠は船台3船渠3の工廠であるが後に規模は拡大されるのである。それは兎も角、将和は帰宅をするのである。


「済まんが少し急いでくれ」

「分かりました」


 将和は車を走らせる。それを見守る集団があったがそれに気付く事はなかった。


「行ったな?」

「あぁ、首尾は?」

「三好が自宅に到着次第だ」


 自宅に到着した将和は警備隊に挨拶をしつつ応接間の扉を開けると夕夏やシャーリー達がいた。


「やぁシャーリー。久しぶりだね」

「おぅマサカズ」


 笑顔で将和はシャーリーを迎え、シャーリーも笑みを返す。


「さぁさぁ。再会のお茶でもしましょうか」


 タチアナはそう言う。なお、その夕夏は紅茶を各自に注いでいた。


「それもそう「何者だ!!」ん?」


 その時、邸の外で叫び声が聞こえた。恐らくは門にいた警備隊であろう。


「……あッ!? しまった、今日か!!」


 将和は今日、起こる事を思い出した。将和は陸軍から特別に貸与してもらった八九式鉄兜と略帽(ww1で欧州に参加して鉄兜の重要性を認識しており史実より早い制式採用された)を被り私物で購入した『コルト・ガバメント』の愛称で有名なM1911の安全装置を外した。

 それを見た夕夏はスカートを捲り右太股に装着して隠していたFNブローニングM1910を取り出した。


「隠れて――」


 その時、外からドンと音がした。


「伏せろ!!」


 将和は叫び、シャーリーとセシルを抱き締め床に押し倒したのであった。







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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