第四十四話
将和とハンナの対決が終わった日の夜、将和らはまたヘルマン達とレストランで食事をしていた。
「ハッハッハ、昼間のは面白かったな」
「………」
既にビールを大量に飲み干しているグレイスが顔を赤らめながら隣にいるハンナを弄る。弄られたハンナもアルコールが入ってないのにも関わらず顔は真っ赤であり視線を反らすがその先に将和がいたので更に真っ赤になりどうしようも出来ずに顔を下に向けながらソーセージにかぶりつくのである。
「グレイス、あまり弄るんじゃないっての」
「あたッ!?」
弄りまくるグレイスに流石の将和も拳骨を落とすのである。
「それでヘルマンはどうするんだ? やはり……」
「うーん、ちょっと考えがあるから待っててほしいかな」
将和の問いにヘルマンはニヤリとそう答えた。
「流石に青酸カリを飲むのは勘弁だからな」
『………』
ヘルマンの言葉に事情を知らない者は唖然とし事情を知る者は口をつぐんだが将和は苦笑していた。
「頼むぞ。俺はまたお前と勝負をしたいからな」
「……ダンケマサカズ、やっぱり君は最高の友だよ」
「…………………」
将和の言葉にヘルマンは微笑むのである。そして食事中、ハンナはずっと何かを考えながらビール等を飲み込むのである。
「じゃあ二日後に出発な。明日はお土産とか買っても可だからな」
「ビールの発送をしないとな」
「ソーセージもだぞ姉上」
「コーヒーも良いわね」
将和がグレイスらに指示を出して解散し将和は部屋に戻る……がグレイスらは物陰に隠れていたハンナを手招きする。
「ほら、今がチャンスだ。直ちにアタックしてこい」
「し、しかし……」
「ウジウジしないの。ウジウジしていたら後悔するわよ?」
「そうですね」
三人の言葉にハンナは無言で頷き、ワインを片手に将和の部屋に向かうのである。
「仕方ない、今日は大人しくしておくか」
「それもそうね」
「姉上は残念そうだがな」
「んなッ!? わ、私は別に……」
「……シルヴィアの回数が少なかったものね」
「~~~ッ!?」
「あ、逃げた」
レティシアに指摘をされ顔を真っ赤にして自室に逃亡するシルヴィアであった。さて、そのハンナは何とか将和の部屋に突撃して白ワインを将和と飲んでいた。
「うん、辛口だが美味いな」
「あぁ。故郷のブドウ農家が作ったワインだがこれがまた美味い物なんだ」
そういった話をしていた二人だが不意に口を開いたのはハンナだった。
「これからどうしていいのか……分からない……」
「………」
「この6年程はミヨシに勝つために努力してきた毎日だった……だけど今日、ミヨシに勝てた。嬉しかった、あぁ嬉しかった!! だけどそこで私のやる気が……」
ハンナはそこまで言って無言だった。
「……どうしていいか分からなくなったか……」
「前はドイツ空軍のためとか色々と考えていたけど……でも、ミヨシに勝ちたいという気持ちは本当なんだ!!」
(よくある完全燃焼してしまったタイプかぁ……)
ハンナの様子にそう判断をする将和である。
「次の目標は軍には無いのか?」
「お前に勝つための軍だからな。それが無くなったら在籍する意味は無い」
キッパリと断言するハンナである。
「じゃあこれからはどうしたい? 今のお前の気持ちが俺は知りたい。じゃないと相談出来ないしな」
そう言う将和だがそれがフラグだったのだろう。ワインも飲んでいた、それ以前にもビール等のアルコールを飲んでいたハンナははんば酔いながらも即答をした。
「お前といたい」
その言葉には流石の将和も一瞬は呆気に取られた。
(うーん、フラグフラグ……やっぱあの事故の時か?)
その後の勲章渡しだろうとヘルマンがいたらツッコミを入れると思うがそれはさておき、酔いもあった将和はベッドに座りハンナを手招きする。それを察したハンナはゆっくりと立ち上がり歩を進めベッドーー将和の隣ーーに座る。
「……俺の周囲……嫁さんの事は知っているだろう?」
「皇族二人と前に死別した女性一人だったか? そんなのは関係無い。私の今の気持ちはただ一つ、お前といたい。ただそれだけだ」
(死別したというのはちゃんと情報操作されているな)
場違いな事を考えている将和だがそれ尻目に将和はハンナを抱き締める。抱き締められたハンナはビクリと身体を震わせたが将和はハンナの頭を撫でる。
「まぁそこに関しては大丈夫だ。二人……いや三人は色々と認めている」
「認めている?」
「グレイスら、一応は俺の愛人になっているからな」
「……まぁ三人を見ていたらそう思っていた。けど何故だ? 何故三人は私を認めてくれるんだ?」
「さぁ……けどこれは言える」
そう言って将和はハンナの唇にソッとキスをする。
「俺がお前を幸せにする自信があるからだろ」
「……馬鹿者……」
将和の言葉にハンナは涙を流しつつ再度将和とキスをしてそのままベッドに倒れ込むのであった。
翌日、将和が目を覚ませばベッドにハンナはいなかった。ただテーブルに置き手紙があり文面は至って簡単に記載されていた。
『全部終わらせてくる』
更に翌日、将和らは客船でキールから帰国する手筈になっていた。港ではヘルマンらが見送りに来ていた。
「マサカズ、また手紙を送るよ」
「分かった。気を付けてな?」
「ハハハ、当たり前だよ。ボクはヘルマン・ゲーリングだよ?」
「それもそうか」
ヘルマンの言葉に将和は苦笑しつつヘルマンと握手を交わす。そして荷物を持ってタラップを登っていくが一両の車が到着した。
「ミヨシ!!」
降りてきたのは白のワンピースを着たハンナだった。しかも両手には荷物を抱えていた。
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもあるまい。軍を除隊したんだ」
「ウーデット!?」
ドライバー役だったのだろう、運転席から降りてきたのはエルンスト・ウーデットだった。彼はヘルマンからの紹介で将和と仲良くなっていた。他にもアルベルト・ケッセルリンクやエアハルト・ミルヒ、ブルーノ・レールツァーらともヘルマンの紹介で会っており交流を深めていた。
「昨日付で彼女、ハンナ・フォン・クラウツァル大尉はドイツ軍から除隊した、そういう事だよ」
してやったりという表情をするヘルマンに将和は大笑いをする。
「ハハハ、ハハハハハハハハハッ!? コイツは一本取られたな。だが勝手に除隊しても問題無いのか?」
「問題無くするのがボクの仕事さ」
ニヤリと笑うヘルマンである。
「準備に手間取ってな。待たして済まない」
「いや……大丈夫だよハンナ」
御返しとばかりに将和がハンナにキスをするとミルヒらが囃し立てる。
「良いぞ御両人!!」
「やっちまえクラウツァル!!」
「コラー!! お前らも味方になるなー!!」
船上から見ていたグレイスが怒るがその表情は笑っていた。
「じゃあ行こうかハンナ」
「あぁ……行こうかマサカズ」
ハンナはそう言って微笑み乗船するのである。
「『顔傷女』も撃墜王に落とされたかー」
「ヘルマンもそろそろ身を固めろよ」
「ボクはまだ良いかなー。まだ遊びたいしね」
「ケッ、これだから御坊っちゃまは……」
「まぁまぁミルヒ」
出港した客船を見送ったヘルマン達はそう言い合うのであった。
(そう……ボクはまだやる事はあるんだから……)
笑い合うウーデット達を見つつヘルマンは再度決意を固めるのである。
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