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第十四話








 サラエボ事件後、オーストリア=ハンガリー帝国は史実と同じく7月23日にセルビア政府に対して十箇条のオーストリア最後通牒を送付して48時間以内の無条件受け入れを要求した。セルビア政府は条件付き承諾をしたがオーストリアは条件付き承諾に納得せず25日に国交断絶に踏み切る事になる。そして28日にセルビアに対する宣戦布告が行われた。これにより第一次大戦が勃発する。

 ドイツもロシアの総動員下令を受けて参謀総長のヘルムート・ヨハン・ルートヴィヒ・フォン・モルトケ(小モルトケ)はかねてからのシュリーフェン・プランを発動させ八8月1日に総動員を下令し同時にベルギーに対して無害通行権を要求した。そして翌二日にはロシアへ宣戦布告し更に三日にはフランスに宣戦布告したのであった。


 伊藤は密かに料亭で将和と会談をした。


「それで今回も派兵はするのかね?」

「はい、やはりした方が良いと思います」

「理由は?」

「義を通すためです。被害が多かろうとやるべきです……史実日本は利を取りすぎました」

「……分かった」

「前回と同じくイギリスから派兵要請が来るまではしないでください。それと要請が来たら御前会議と議会の承認を。史実では当時首相だった大隈重信が前例無視と軍部軽視で後に政府と軍部の関係悪化となりました」

「うむ。今回も議会には根回しをしておこう」


 前以ての根回しをした事で前回と同じく政府と軍部の関係悪化は回避されたのであった。そしてイギリスから派兵要請が来ると伊藤は御前会議にかけて議会の承認を得てから8月15日にドイツへ最後通牒を勧告した。日本は一週間の期限をしたがドイツ側は無回答をしたので日本は23日に宣戦布告をしたのであった。


「まずは青島攻略である」


 山本権兵衛は直ちに聨合艦隊を編成し青島攻略の準備に取り掛かる。青島にはマクシミリアン・フォン・シュペー中将のドイツ東洋艦隊がいたが開戦から既に青島を脱出しており青島に残っていたのは駆逐艦『太沽タークー』水雷艇『S90』砲艦『イルティス』『ヤグアール』『ティーガー』『ルクス』であった。

 しかし航空機はあった。青島にはルンプラー・タウベ16機がおり空からの妨害が懸念されていた。史実では1機しかいなかったがドイツは日本の動向を懸念しており航空機だけでもと送り込んだ結果である。

 だがタウベのパイロットは全てーー16機分のパイロットが揃えられていた。だが日本もそれに負けじと航空隊を青島攻略に投入させたのである。


「此処から海軍航空隊の歴史が始まる。総員、恥をかかない戦いをしろ!!」


 航空隊指揮官の山崎太郎中佐は並ぶ将和達にそう言う。


「搭乗、掛かれェ!!」


 将和の叫びにパイロット達は砂浜に並べられたモラーヌ・ソルニエH(十四年式戦闘機)9機に乗り込む。


「砂浜からの発進はあの時以来の久しぶりだが……やってみるか」


 将和は整備員に準備完了を告げると整備員は退避して将和がブレーキを離す。ブレーキが離れた事で十四年式戦闘機はゆっくりと砂浜から発進していく。攻撃目標は日本軍陣地を偵察するタウベである。場所が場所なので飛行するタウベを将和は直ぐに見つけた。数は五機である。


「前回と一緒かい!!」


 将和はそうツッコミを入れつつもタウベと空戦を開始する。十四年式戦闘機はエンジン上部にルイス軽機関銃(十三年式機関銃)一丁を搭載していた。直接引き金を引くのではなく、コクピットからワイヤーによる遠隔操作をしていた。

 将和は直ぐに一機のタウベの後方に回り込み、首を振り返り後方を見て敵機がいないか確認する。確認すると将和はタウベに銃撃をした。ちなみに各機のプロペラのには鋼鈑を敷いていた。

 まだ同調発射装置が無いのでプロペラを傷つけたくないので鋼鈑を敷いていたのだ。それは兎も角、タウベはその機動性を駆使して右翼に命中弾を受け破片を撒き散らしながらも将和の銃撃を回避した。


「くそ!! 流石はタウベか、それともパイロットの腕か」


 将和はそう愚痴る。過去に大量の敵航空機を落としてきた将和だが、それでも力量は相手が上である。


「それでも……叩き落とす!!」


 逃げたタウベよりも将和は別のタウベを発見する。将和の十四年式戦闘機は速度を上げてタウベの後方に回り込み銃撃する。しかし、このタウベも銃撃を避けて逃げる。


「クソッタレ!! あん時と一緒でもっと近づいてやるわ!!」


 将和は更にタウベに近づいて銃撃する。しかしタウベはこれも避ける。


(どうしたら良い? 落ちつけ、俺はこの時、どんな方法で落とした……? ……ッ!?)


 将和はそう思いながらもまた近くにいたタウベに狙いを定めようとする。周りを確認すると他の十四年式戦闘機もタウベに翻弄されており前回と同じく訓練不足なのは明らかである。


(銃撃する時は後方を確認している。後下方からの銃撃は今の乱戦では無理だ……ならこれしかねぇよな!!)


 将和は何かを思い付いてニヤリと笑いながらタウベの後方に回り込む。


「見越し射撃だ!!」


 将和はタウベの未来位置を考えて射撃をした。そして弾丸はタウベに当たる。


「やったか!?」


 ある意味、前回と同じくフラグを建てる将和だが肝心のタウベは部品を撒き散らすだけでまだ飛行していた。


「後少しだ……」


 将和はもう一度タウベの未来位置を考えて射撃する。弾丸はタウベのエンジンに命中して火を噴いて小規模の爆発をする。タウベはそのまま落ちていき地面に衝突して爆発するのであった。


「………(やっぱこの撃墜は変わらないのか……)」


 将和はそう思ったが次の瞬間、気を抜いたが直ぐに後方を確認して敵機がいない事を確認する。追撃しようかと悩んだが燃料が少なくなっていたので全機集合させて帰投した。

 損失機はいないが被弾二機で撃墜一機であった。


「はぁ〜……」


 無事に砂浜に着陸して地面に降り立つと地べたに座って将和はゆっくりと息を吐いた。


「隊長、一機おめでとうございます!!」

「お、ありがとう」


 後から着陸してきたパイロットに将和はそうかけられた。どうやらそのパイロットは将和の撃墜場面を見ていたのだ。


「今日は隊長の撃墜を肴に飲みますか」

「おいおい、御手柔らかに頼むよ」


 将和は他のパイロットと共に山崎中佐に撃墜報告をするのであった。そして翌日も将和は戦闘機隊を率いて出撃した。


「敵機視認、全機突撃!!」


 敵航空機を視認した将和は列機に合図をしてタウベ8機と空戦を開始する。


「ち、3機も増えてやがる。相変わらずだがどんだけタウベを溜め込んでいたんだ」


 機数を確認した将和は舌打ちしつつ一機のタウベに狙いを定めて射撃をする。一連射目は外れたが二連射目でタウベの発動機に火を噴かせた。


「よし!!」


 二日目、将和は勢いに乗って三機を撃墜するのであった。

 なお、日本の航空作戦は三日間行われた。将和は三日目も順調にこなして個人撃墜5機、共同撃墜1機を成し遂げていた。


「8機も個人撃墜とは凄いもんですよ!!」


 既に酒を飲んだ影響か、頬を赤らめたパイロット達は将和の腕を讃える。


「まぁまぁ、たまたまという事もある。空戦は気を抜かれたら戦死だからな」

「それでもですよ。三好隊長は海軍航空隊の誇りです」

「そうだそうだ!!」


 パイロット達はそう言い合い、将和は照れるのであった。そして10月31日、神尾中将の第十八師団と第二艦隊は攻撃を開始した。なお、防護巡洋艦『高千穂』は第二艦隊配備ではなかったが、代わりに参加していた工作艦『朝日』が雷撃を受けて大破する損害を出していた。

 それは兎も角、第十八師団は史実通りの陣容であり攻城砲の四五式二十四センチ榴弾砲、三八式十五センチ榴弾砲等の重砲が大量に投入されて史実通りの攻略であった。

 また、青島だけではなく太平洋におけるドイツ帝国の植民地だった南洋諸島――ドイツ領マリアナ諸島、カロリン諸島、マーシャル諸島を占領していた。青島攻略を終えた将和は内地に戻り伊藤達といつもの料亭で会談をしていた。


「青島攻略、御苦労だったな」

「いえいえ、自分は何もしておりませんよ」

「謙遜しなくていい。それで本題だ」


 伊藤は直ぐに真剣な表情をして切り替えた。


「やはりイギリス、フランスから前回と同じく陸軍の派遣要請が繰り返し来ているが……」

「派遣するべき……でしょうな」

「ふむ……となると人員はどれくらいになろうでごわすか?」


 元老である大山巌は将和に問う。


「……前回のと考えれば陸軍は最低二個師団、最高十二個師団でしょう」

「むぅ……」


 将和の言葉に大山は唸る。前回もヴェルダンにて神尾中将の先遣隊二個師団が玉砕しているのだ。派遣人数がそうなるのは予測されていた。


「先遣として二個師団を派遣するのも手でごわすな……一杯となると八個師団でごわす」


 現在の陸軍は二十個師団を編成している。そのうちの四分の一近くを出そうという事だ。ちなみに第十九師団は北海道、第二十師団は北樺太での編成地となっている。


「溶かされる覚悟はして下さい」

「やはりかね? どうにもならんか?」

「はい、第一次大戦は日露戦争以上になりますので」

「……そうか」


 結果として陸軍は七個師団を欧州に派遣する事になり先遣隊として二個師団を先に派遣する。

 海軍も欧州艦隊と航空隊の派遣を決定した。輸送船団と航路の護衛を含めた二個特務艦隊を編成して派遣する事になる。なお、戦艦に関しては巡戦である『金剛』型四隻、更にその『金剛』型を元に建造された超弩級戦艦である『扶桑』『山城』の『扶桑』型も揃って欧州に派遣する事をイギリスには伝えたのであった。無論、イギリスがこの六隻の超弩級戦艦の派遣に驚き喜んだのは言うまでもない。

 更に海軍の先遣隊は航空隊でありその中には無論将和も名を列ねていたのである。








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