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激鐡!! ~ヒノモト妖撃譚~  作者: 甲賀野カッパ丸
章之弐 紅生姜たっぷりのたこ焼きっておいしいよね【姫組、西へ…編】
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弐之九 適材適所 個性を活かせば

 明けて翌日、仰山箔が店を開くのは頂前の11時。それまでの間はみんな開店の準備で大忙しだ…と言ってもあたしは朝起きてすぐ勉強を始めたし、真琴さんは夜通し発火弾の製作にのめりこんでいたみたい。


 そして開店時間…とはいえ、今まで仰山箔のたこ焼きはひどいものだったからお客さんはほとんど来ない…当然っちゃあ当然かな。よほど腹が減って口に入るものを欲しがる人か、浪花ノ町は初めてという観光客しか来ないだろう…まあ、昨日の夕方みんなでチラシを配ったけど、今までのことがあったせいか、受け取る人はほとんどいなかったみたいだしね。おかげでこっちは静かだから勉強に専念できるんだけどね。


 ところが変化が出始めたのは越頂の2時。そろそろ勉強が退屈に思えて眠気を感じ始めた頃、


 ドンドンドンドン!

「五月、五月ぃ!!」


 けたたましく扉を叩いてあたしを呼ぶ声で我に返り、扉を開けるとそこに十乃蜜さんがいた。


「勉強してるとこ悪いんだけど…お願い、お店を手伝って!人手が足りないの」


 え?どゆこと?昼ごろチラッとお店のほうを見たけど、人ほとんどいなかったよね…


 お店の制服に着替えて店の中を見てみると、なんとお店のテーブルが全て埋まってる!?店の外にも行列ができてるし!新体制の効果出すぎ!!

 お店を見に来た天玄さんも驚いた。店が超満員になったのは店をオープンした初日以来だって。


 うっひゃあ…そういえばあたし、お店で働くのも初めて。うまくできるかな…


「でも、どうして急にお客さんが増え始めたの?」

 あたしは十乃蜜さんに聞いてみた。


「お店を開けてもなかなかお客さんが来ないから、退屈になった摩央虎ちゃんが練習を兼ねてたこ焼きを作り置きしてたみたいだけど…どうやらそのニオイにひかれてお客さんが集まってきちゃったみたいなの…」


 で、そのうち摩央虎ちゃんひとりでは追いつかなくなったからひよりさんも調理場に向かったために、客間担当が減ってしまって臨時動員としてあたしも借り出す運びになったってわけ…


 御幸さんと圭さんに加え、あたしと十乃蜜さんもお客さんからオーダーを聞いて料理を運んでいく。あたしが走りながら料理を運ぶと料理が飛んでしまいそうなのでオーダーを聞いて回る。そのうち…


「あ、あの…お客様?たこ焼きは一皿3分なんですけど…」


 十乃蜜さんがらしくない素っ頓狂な声を出してるのが聞こえた。見ると先日圭さんたちと言い争っていたあのお客さんがテーブルに5分置いているのが見えた。

「いいってことよ。今日のたこ焼きはそれくらい値打ちのあるうめえたこ焼きだったってコトさ。そんじゃ、また来るぜ」

 お客さんは笑顔で帰っていった。


 でも、十乃蜜さんはまんざらでもない様子だった。


「笑顔で帰っていくお客さんを見送るのって気分がいいね」

「そうね」


 あたしと十乃蜜さんでそんな会話をしていると、


『ぴーんぽーんぱーんぽーん♪業務連絡です~、駿河十乃蜜さ~ん、羽柴ひよりさ~ん、石川五月さ~ん、お言付けがありますのでぇ、一旦事務室にお越しくださ~い』


 店の中で放送が流れた。真琴さんがあたしたちを呼んでいる。あたしたちは店の奥に向かった。


 事務室といっても、実際には店の奥のことを言っている。店の奥では真琴さんが目の下にクマができた顔で待っていた。徹夜で発火弾を作っていたみたいだ。


「ほいほぉ~い、お待たせしましたぁ。発火弾完成ですぅ。火力を最大限に引き出すために薄い鉄の外皮に火薬をぎっしり詰め込んで、さらに火が拡がりやすくするために固形油でコーティングしましたぁ。試作品なので各々3発ずつ作ったのですが、少ないのでよぉ~っく狙って撃ってくださいね~」

「わかりました」


 ひよりさんが「一番星」用の発火弾を受け取ったそのとき、部屋の中で警報が鳴った。妖怪出現の合図だ。また野衾が出たのかも。


「んもぉ~、これから寝ようとしてたのにぃ~…」


 真琴さんが不機嫌になる。そこに御幸さんたちも集まってきた。


「また野衾のヤツか、今度は逃がさねえぞ!」

「リベンジですわ!」


 でも、お店のテーブルは埋まっていて、オーダー待ちの人もいる。お店の外にも行列ができたままだ。この状態で全員出たら誰がお客を捌くんだろう…


「ちょ、待って待って。お店の中はまだお客さんがいっぱいだよ?みんなが出払ったらいくら天玄さんでもお客さん捌けないよ」


 あたしはみんなを止めた。


「五月の言う通りね。何人かはお店に残らないと…」

「あー、そうか…今までめったにお客が来なかったからそこまで考えなかった」


 あたしと十乃蜜さんの言葉でみんなは冷静になった。続けて十乃蜜さんは提案する。


「まず、野衾を燃やすのにひよりと真琴は必須ね」


「わかりました」

「ほいほ~い」


「次に摩央虎ちゃん…悪いけど、あなたは調理場に残って」


「現時点でたこ焼き作れるのはウチだけやから、しゃあないか…わかった!」


「で、残るは追跡要員だけど…みんなは誰がいいと思う?」


 みんなで話し合った結果、力持ちの圭さんと、分裂した片方とはいえ、野衾を捕まえた実績のあるあたしが選ばれた。ただし、圭さんは武器を持たせるとまた地面を陥没させてしまうかもなので、武器を持たないで出撃するという条件で。残る十乃蜜さんと御幸さんは店に残って接客担当…とはいっても、機械オンチの十乃蜜さんはレジを壊してしまうかもなのでレジ打ちは御幸さんが担当することになった。ひよりさんが抜けた穴は店長の天玄さんが入ってくれるので摩央虎ちゃんは安心した。


 とにかく、あたしとひよりさん、圭さんと真琴さんは戦闘服に着替えて現場へと向かった。


*


 出現した妖怪はやはり野衾だった。現場は前回の飲食店街より西に3里ほど離れた場所にある商店街だ。あの時の爆発で飲食店街が危なくて近づけないと思った野衾が、別の場所に狙いを定めたのだ。


 現場に到着したけど、白銀さんも紅玉さんもいないので指揮は金剛さんが執る。ちょっと不安だ…でも、金剛さんは言った。


「よし、二手に分かれるぞ!オレと鐡でヤツを追跡する。赤銅は鐡についてやれ、翡翠はオレと一緒に来い!くれぐれもはぐれたりすんな、とにかく鐡は野衾を捕まえたら空高くぶん投げろ!オレもそうする。そして翡翠、もしくは赤銅が野衾を仕留める、それでいいな?」


「わかった!」

「了解しました」

「ほいほ~い」


 そして、行動開始。あたしと赤銅さん、金剛さんと翡翠さんの二手に分かれて野衾を追う。


 しかし、今度の現場は前回のと比べて道が狭く、所々に露天商が屋台を出していてさらに道幅を狭くしている。おまけに町並みが迷路のように入り組んでいて、それが余計に野衾の追跡を困難にしている。飲食店が少なくて、前回みたいにガスボンベの出ている建物がないのがせめてもの救いだ。


 野衾は獲物を狙うとき、空高く飛んで獲物を吟味する。そのため、野衾を捕まえやすいようにと屋根に登って追いかける方法も考えたんだけど、金剛さんいわく…


「屋根の上を走ったら瓦を引っぺがしちまうだろ。屋根から落ちた瓦でケガ人は出したくねえ。今回の任務はけが人も、建物の被害も出さないで野衾を捕まえるんだ」


 とのこと。おそらく白銀さんがいても同じことを言うんだろうな…と思った。


 でも、野衾が獲物を吟味している間は動きが止まるので、その隙に捕まえてしまおう…という作戦だ。


 肝心の野衾は今、ふらふらと飛び回りながら獲物を探している。ゆっくりと漂うように飛び回っているから、そのスキに捕まえることができればと思うんだけど、下手に近づいて気づかれでもしたらこないだの二の舞だし…どうしたものか…


 人々が逃げ回っているから、追跡しようにもむやみに走れない。人とぶつかってはね飛ばしてケガ人なんか出したくない。

 じゃあ、野衾が獲物を見つけて急降下するのを待つ?そんな悠長なやり方なんてやってもいられない。仰山箔では十乃蜜さんたちが少ない人数で何とかお客さんを捌いているんだ。急いで戻ってお店を手伝ってあげないといけない。


 まずはパニックを起こしている人たちをなだめてやらないと。あたしはブレスレットの拡声器のスイッチを入れると大声で叫んだ。


「みんな落ち着いて!!」


 とたんに町の人たちは大声に驚いて動きを止めた。それだけじゃない、上空の野衾もひきつけを起こしたように動かなくなり、地面に落ちていった。そうか、野衾は大きな音も苦手なんだ。あたしは野衾が落下した場所に向かうと、野衾の尻尾をつかんだ。


「もう逃がさないよ!」


 そのまま自分も目を回すほどの勢いで野衾を振り回す。


「おりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 あまりの速さに自分の周りに竜巻ができる。野衾が目を回してぐったりしたのを見計らって空高く放り投げた。


「赤銅さん!」

「はいっ!!」


 あたしが赤銅さんに呼びかけ、赤銅さんが上空の野衾を狙い撃つ。弾が命中、発火弾が破裂して野衾が炎に包まれた。


「キギャーーーーーーーーーーー!!」


 野衾は金切り声を上げてチリひとつ残さず消滅した。

 そこに金剛さんが合流してきた。


「やったな、鐡。しっかし、奴が大きな音にも弱いなんて知らなかったぜ」

「でも、野衾を倒せたんだから結果オーライじゃん?」

「ああ、そうだな」


 そして、あたしと金剛さんでハイタッチした。


*


 仰山箔が閉まるのは夜の8時。天玄さんがその日の売り上げを見て驚いた。なんと1年前にオープンして初めての黒字だった。


「やはり君たち姫組の諸君に意見を聞いてよかったよ。お店のほうもこれならうまくいけそうだ」

 天玄さんの顔がほころんだ。そして、御幸さんのほうを向く。


「でも、いつまでも摩央虎くんにばかり調理を任せていられない。おまえたちも近々たこ焼きの作り方を覚えてもらうぞ!」

 天玄さんが珍しく厳しい口調で言う。


「そ…そんな、伯父上…」

「あっちゃあ…やっぱそうなっちまうか…」

「ま、しょうがないですよね~…あはは…」


 御幸さんたちはがっくりと肩を落とす。


 とにかく…コレで華組の問題が解決したなら、あたしたちも花江戸町に帰れるのかな?そう思っていたけど、天玄さんはあたしたちのほうを向くと…


「すまないが…サミットが終わるまでもう少しいてもらえるかな?華組の実績を元老院に見せてやりたいんだ。できればキミ達にも協力して欲しい」


 あー…そういえば、近く衝天閣で元老院を招いてのサミットが行われるって、ひよりさんのおじいさんの藤吉さんが言ってたっけ…あたしたちもがっくりと肩を落とした。


 ああ…願わくば今度の追試が始まる前にサミットが終わってくれることを…

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