3話
何故こうなった…
自販機で買ったお茶と弁当を手に持ちながら、階段を登って屋上に向かっている。
いつもなら1人なのに今日は後ろに海原が付いてきている。
「一緒に食べていいかな?」ってなんだよと思いつつ、俺は断れなかった。
勇気を出して言ったのだろう。
顔を真っ赤にさせた海原が言ったのだ。
断るのが申し訳なくなり、「別にいいけど」とか言ってしまった。
その後お礼を言われて、どこで食べるという話になり、俺のいつも食べている場所と言われ屋上に向かっている途中である。
その間ずっと無言で海原は俺の後ろを付いている。
そして最上階の屋上に出る扉の前まで来た。
当然の事ながら誰もいなかった。
まぁ別棟だから結構遠くて、誰もいないんだよな。
人の寄り付かない場所でもあるけど。
とか思いつついつもの少し段になっている場所に腰掛ける。
その横に海原も腰掛ける。
以外と近いのだが…
そんなことを考えつつ弁当を開けると、冷凍のシューマイが目につき、とりあえず1口。
うん、美味しい。
顔には出さないようにしないとな。
海原はカフェオレを買っていたし、好きなのか。
ふと海原の方を見ると、サンドイッチを小さな口を開けながら食べていた。
そんなの1つで足りるの?とか思いながら俺も2口3口と食べる。
一緒に飯を食べているが未だに無言。
正直この空気どうにかしたかった。
だから俺は、前髪を目が隠れるまで伸ばしている海原に向かい声をかけた。
「「あの」」
やばい被ってしまった。
気まずい……
てか海原も何とかしたかったのか。
そりゃあそうだよな。こんな空気ずっと耐えられるなら凄いと褒めたたえたい。
とりあえず譲っとくかと考え俺は譲ることにした。
「海原からどうぞ」
「え?あ、じゃあ…」
と言ったっきり言葉を探すようにゆっくりと海原は呟くように話した。
「君ってなんでいつも1人なの?」
いや、お前が言うかよ!
いつも1人なのはお互い様じゃね?
と、変な顔をしていたのだろう。海原が慌てて言葉を足してきた。
「あ、ご、ごめん!別に変な意味とかじゃなくてね、君って別にコミュ障って感じでもないし、勉強もそこそこ出来そうに見えるし、あと、……」
最後の方は消え入るような小さな声だったのでよく聞こえなかった。
だけど色々褒めてくれたことは嬉しかった。
「いや、別に話しかけられれば受け答えくらいはできるし、人と話すこともそこまで嫌いじゃない。まぁ勉強ができそうっていうのは違うと思うぞ。1年のテストは全部2桁台だったけど、その程度だから…」
なんか言い訳じみたことを言ってしまった。
「ならなんで?」とか聞いてきたし。
仕方ない、俺がぼっちで居る理由を話すか。
「それはな、この学校がつまんねーって思ってたんだよ。だから友達作るのも面倒だったし、なら1人でいいと思ってこの状態。あと1年の初めはめちゃくちゃハマってたcover歌手さんがいて、それをずっと聞くために休み時間も放課後も、イヤホンをずっとしてたのが原因だろうな。それで2年になってからもその皺寄せがきてぼっちってわけだ」
「そうなんだ。なんかありがとう」
なんか感謝されちゃったし。
核心はついてない理由なのに。
「あ、そ、それで君も私になにか聞きたいことあったんじゃないかな?」
あー、なんか自分の話しすぎて忘れとったわ。
聞かれたからには仕方ない。聞くしかない。
「あのさ、海原、お前なんで…」
前髪長いのか聴きたかったがやめた。
言葉が詰まったから海原がこっちを見てくる。
相変わらず目は前髪で隠れている。
「いや、やっぱりいい」
急に聞くことが失礼とか思い出して結局聴けなかった。
ただ海原は察しがいいのか俺が聴きたかったことを勘づいたようだった。
そして尋ねてきた。
「この前髪のこと?」
そう透明感のある柔らかい声で言われた。
考えていることを読まれた俺は、ただただ黙ってしまった。
「また時間がある時に話す。君の話聞いただけじゃ不公平だし。今日はもう昼休み終わっちゃうから…」
「あ、あぁ。わかった」
何故か俺は嬉しくなってしまった。
また海原と話せると思って。
みんなが知らない海原の秘密を知ることができると思って。
そこで昼休みの終了を告げる予鈴がなった。
「あ、チャイムなっちゃったね。そろそろ行かなくちゃ」
海原は立ち上がり、俺に向かって
「怪しまれるとダメだから先行くね」
とだけ言い先に階段を降りていった。
声も、後ろ姿も、寂しそうに思えて仕方なかった。
てか怪しまれるとはどういう意味だろう?
ぼっち2人仲いいですねーっていじられることか。
ぼっちはいじられないと思うがな。