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ころがる石、飛ばない鳥  作者: 桃桜
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1話

始業式から約1ヶ月程経った。

少し長かったゴールデンウィークが終わり、2、3週間後には中間テストが始まる。

そろそろ勉強しなくては行けないというような時期である。


この頃になると既にクラス内のグループ、カーストは決定されていると言っても過言ではない。

更にはこのクラスには異彩を放つ人物が3人程いる。

朝のホームルーム前だが教室には男女が5,6人程のグループで駄弁っている。何を隠そうこのグループが我がクラスのトップカースト。

イケてると思っている連中である。

まぁ俺からしたらどうでもいい。


その中心的な人物で異彩を放っているのが山吹渥美(やまぶきあつみ)である。

髪色は少し薄く、ショートで、目鼻立ちがハッキリしている。一言で言えば美人であるが、少しつり目できつい印象を与える。しかし性格は温和。

また頭も良く、陸上をやっており、高跳びでは1年生で地方大会に出場するほどの運動神経を持っている。また先生からの信頼も厚く、対人関係もバッチリで、男子の高嶺の花という何とも完璧を絵に書いたような美少女である。

そんな彼女をトップカーストの連中が見過ごすわけもなく、今ではクラスの中心的な存在である。

ちなみに俺の幼馴染であり、現在は学校では全くと言って良いほど話さない。

なので俺と渥美が幼馴染ということを知っている人物はほとんどいない。

まぁ学校で渥美と話していたり、幼馴染ということが知られたりしたら、周りからなんと思われるか、嫉妬の嵐が止まないと思うので、俺としては歓迎である。

決してめんどくさいとかそういう訳じゃないからね!


次に異彩を放っているのは、俺の隣の席に居る海原瑠璃(かいはらるり)である。

1ヶ月程隣の席で一緒だが、学校での海原の行動は小説を読んでいるのみ。

授業中ですら、ほぼずっと小説を読んでいる。

1年の時、先生に何度か注意やお叱りがあったらしいのたが、一向に改善しなかったので、先生達も無視している。

成績はそれなりにいいらしいから許されていることなのかもしれないな。

また海原が異彩を放っているのはその容姿も相まってだ。

髪は黒髪で腰程まで長いのだが注目はそこではない。

彼女は前髪を、目を覆い隠す程まで伸ばしていて、顔が全て見えない。

また1ヶ月声を聞いたことがない。

クラスの誰も声を聞いたことがないかと思うほど喋らない。

それが彼女が異彩を放っている所である。


最後に異彩を放っているのは俺こと及川信(おいかわしん)である。

1年生の時に学校が楽しくなくて、友達を1人も作らなかったことが原因なのか、孤独というレッテルを貼られている。

孤独というかぼっちか。

こんなぼっちに2年になって話しかける物好きなど居らず、ひと月程経った今でも、こうして孤高を楽しんでいる。

孤高の存在とか、なんか中2心をくすぐられるかっこいい言葉だよな。これからはぼっちの奴をぼっちじゃなくて、孤高の存在と呼ぼう。

簡単に言うと、日陰を歩き、教室の隅っこが存在場所である陰キャってことだよ。うるせーな、馬鹿にするなよ!俺はなりたくてこうなったんだよ!

何に言い訳してるんだ俺は。


3人がクラスで異彩を放っているが、うち2人がぼっちとか笑えねぇな…

とか何とか考えているうちにチャイムのベルが鳴り、生徒は席につき、担任が教室へ入ってきた。

担任の先生の名前は佐藤恵(さとうめぐみ)先生である。

ちなみに美人で大人っぽく、スーツが黒のスーツが似合う。エロい。

身長は160あるかないかだが、やはり歳上というだけあり落ち着いているからなのだろう、濃い茶色に染まっているロングヘアが、彼女が僕ら高校生とは違う大人に見えた。

歳は聞いていないが見たところ20代後半だと思う。

結婚は怖くて聴けない。

聴いた勇者がいたが、ものすごい笑顔で睨まれていた。

そんな彼女だが、いやそんな彼女だからこそだろう。

生徒も親しみやすく、学校で1,2を争う人気の美人先生だ。

朝のホームルームは連絡事項を素早く伝えられただけですぐに終わった。



俺が窓際の一番後ろでその横が海原なので異様な雰囲気がこのクラスの一角にはある。

また英語の授業だとかは何故隣の席でペアワークをしたがるんだろうな。

ありがた迷惑、いや有難くも何ともない、ぼっちからしたらただの迷惑でしかない。

グループワークなら影を消して、存在感を無にすれば発言しなくてもよい。

まぁ本当の理由は一言でも話したら変な空気になるからである。

ワイワイしていた話が一瞬で凍りつき嫌な空気が流れるのだ。

そんなのに僕は耐えられない!

よって一言も話さないのである。

またペアワークでボッチと一緒に組むことになった相手も良い気分では無いだろう。

後で友達辺りからコソコソと笑われる。

その事で笑いを取れる奴ならいいが、いかんせんそんな奴らばかりでもない。

そんな奴らはただただ笑いものにされるのだ。

ただ笑われないよりよっぽどマシだとは思うがな。


というわけで現在英語のペアワークの真っ只中である。

周りは声を出し合い、真面目に英語を発するものもいれば、雑談に花咲かせる者もいる。

渥美は……真面目にやってるぽいな。

まぁあいつ変なところで真面目だからな。

てかなんで俺があいつの話してる内容を聞こうとしているのかは、さっき席の話をしたから分かってくれるとは思うが、目の前にいるのは海原である。

海原とペアを組むとどうなるかと言うと、無言になる。

相手のことを知らないので、雑談は無く真面目に英語を読むしかないのだが、海原は全くと言ってもいいほど何も喋らない。

何故喋らないのか、その真相はわからないが、喋らないので仕方なく教科書を読むしかなかった。

まぁ俺もやる気がないのでその点では別にいいのだが、英語の教科担当である担任の佐藤先生がうるさいので、初めは教科書すら読もうとは思わなかったが、読まざるおえない状況になってしまった。

そんな時渥美がどうしているのか気になったので、俺は渥美を見ていたというただただ平凡な理由である。

渥美と一瞬目が合った。

しかし露骨に下の教科書に目を逸らされた。

えー……

ここまで露骨だと流石に傷つくよ?

学校では目を合わすことさえ許されないのかよ…

そんな時目の前から目線を感じて前を向いた。

もちろん前には海原しかいない。

そして小さく、それでいて震えるように、海原は口を開くと、


「あ、あの…英文、読まないんですか?」


可愛らしいくて、か細くて、やわらかい音が聞こえた。

これが俺が初めて聴いた海原の声だった。


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