漫才 「体温計」
ボケ
「どうもー、バーニングトーストです」
ツッコミ
「えー、コンビ名ですよ。バーニングトーストです」
ボケ
「どうですか、最近お仕事のほうは順調ですか」
ツッコミ
「コンビで活動してる僕に、それ聞くんですか。残念ですけど、あなたとまったく同じ収入です」
ボケ
「なにが残念やねん、いつも一緒でええやんか。僕のおばあちゃんがいま入院してるんですけど、どうですか。今度の日曜日に2人でお見舞いに行きませんか」
ツッコミ
「それ俺が行って、お前のおばあちゃんとなに話すねん。お孫さん、今日もスベってましたよとはさすがに言いたくないですよ」
ボケ
「おばあちゃんを殺す気ですか、やめてください。そうそう、入院で思い出した。先週もお見舞いに行ってきたんですけどね。いまアレですよ。受付で体温はかってくれって言われるんですよ」
ツッコミ
「体温って……あー、熱があったら病院内に入らんといてってことか」
ボケ
「そうそう、体温計渡されてね。何℃でしたかって聞かれるんですよ。ここは一発笑わせなアカンと思ってね。大声で19℃ですって言うたんですよ。これがまあ、えらいスベってね。おばあちゃんだけが、面白かったよって言うてくれたんです。どう思いますか」
ツッコミ
「君のおばあさんのお見舞いですけど、僕一人で行ってきます。あなた来ないで下さい。コンビやと思われたくないんで」
ボケ
「それはそうと体温計ですよ。あれどう思いますか」
ツッコミ
「君はなに、かしこい九官鳥ですか。意味がわからん」
ボケ
「ほら最近の体温計って、ピストルみたいなやつあるじゃないですか。おでこにピッて当てて、男の子か女の子かっていうの。おめでとうございます。元気な赤ちゃんですよ」
ツッコミ
「なんやねん、男か女かって。だれが顔面で妊娠検査すんねん。体温でしょ。コンビニで、バーコード読み取る機械みたいな。ピッて測るやつね」
ボケ
「あの体温計って信用していいんですか。なんか不安じゃないですか」
ツッコミ
「えー、僕の不安にも気づいてほしいですね。今日まだ2回くらいしか君の話をキャッチできてないんで」
ボケ
「いやマジに。あれ、体温はかるの早すぎでしょ。頭に向けてピッ。そしたら0.4秒くらいで、あなたは19℃ですみたいに出よるんですよ」
ツッコミ
「お前だけや、そんな低いの。いや早いほうがええやん」
ボケ
「いやいや。なんていうの、体温ってそんな簡単に測定できるもんでしたっけ。僕は子どものときから、体温測るって言ったらワキなんですよ。ワキに体温計はさんで2分くらい直立不動ですよ」
ツッコミ
「君が代じゃないんですから。それがいまのピストル式なら、メッチャ早くなったわけですよ。便利な時代になったじゃないですか」
ボケ
「これ、ホントに勝手な疑問なんですけど。あのピストル式の体温計ね。なんか必要な作業を飛ばしてるんちゃいますか。だからあんなに早いんじゃないですか」
ツッコミ
「そんなわけないやん。なに、体温計が適当に数字出してるってことですか。だいたいこんなもんやろみたいな。ヤッツケでやっとけみたいな」
ボケ
「今までの常識と、かけ離れすぎに早いでしょ。体温ってもっと、じっくり測るもんじゃなかったんですか。もしこれがフルマラソンやったらどうです。10分でゴールする選手がおったら、こいつ近道しよったなと疑われて当然でしょ」
ツッコミ
「えー、その10分でフルマラソンっていうのはなに。男子ですか、女子ですか」
ボケ
「そんなんどっちでもええねん、例え話やねんから。もしそんな記録が出たら、誰でも不正を疑うでしょ。あれ、ちょっと待ってください。もしかして今のって、ボケを返してくれた感じでしたか。えー、おめでとうございます。元気な女の子ですよ」
ツッコミ
「遅いねん、なにもかも。いっぺんやり直しましょう。体温計ですよ。あれってどこで測るのがホンマなんやろ。むかし病院で、耳の穴で体温はかられたことあんねけど」
ボケ
「それ前から思ってたんですよ。漫画とかで、なんか口にくわえて熱はかってるシーンありませんか。あんなんしてる人、見たことないんですけど。うちの犬は獣医さんに、お尻に体温計入れられてメチャメチャ鳴き叫んでましたよ。その日からなんかこう、僕とも関係がギクシャクしはじめてね」
ツッコミ
「何の話やねん。ちがうがな、体温ですよ。結局どこで測るのがいちばん正確なん」
ボケ
「絶対にワキです。いまさら、本当はおデコのほうが正確ですよーとか言われても。じゃあ今までワキで測ってたのは何やったんですか。いままで費やしてきた時間はすべてムダやったと言うんですか」
ツッコミ
「まったく同じことを君に言いたいですね。僕の時間を返してください」
ボケ
「えー、じゃあ最初からやり直しましょう。どうです、最近お仕事のほうは順調ですか」
ツッコミ
「情熱を完全に失いました。19℃くらいしかありません」
二人
「どうも、ありがとうございましたー」