星を砕く者
『どうした童?その程度か?』
「あんたこそドラゴンの肉体使ってる割には大した事ねえな』
どれ程の時間が経ったのかはわからないが…強気な事を言ってる割には劣勢なのは理解している。
スキルを使用せずにオーディンで対峙しているためレーヴァテインで応戦しているが…まるでダメージが通っていない気がする。
圧縮した炎の剣でも、巨大な炎の剣でも…傷一つ付きやしない。
だからってスキルを使えば今度は解析が遅れる。クソが。
再び大炎でヘキサを包み込むが何食わぬ顔で炎から飛び出してくると殴りかかってくる。唯一の救いは遠距離攻撃を使ってこない事だな。
『ほれほれ、どうした』
「…チッ」
解析出来たのは未だに54%…一歩間違えれば此方が簡単に死ぬので下手な鉄砲数撃ちゃ当たるなどとスキルを使用したら考えてると魔力切れで動けなくなる。だから万全を期すしかない。
「うざってえ!」
『此方のセリフじゃわい』
今度は圧縮して斬りつけるが…片手で掴まれるととてつもない力で投げ飛ばされる。
受け身は取れたが…やべえなこれ。解析する前に体が再生追い付かずに死にそうだ。
もう既に3回。ベルセポネによる再生が行われている。正直な話、胴体打ち抜かれた方がマシだ。細かい傷や骨折だとその都度少しずつ再生しないといけないのだから。
それにプラスしてレーヴァテインによる攻撃が効かないとなると…解析可能な範囲内で逃げ回るか?いや、アルマ達の方に行かれた最悪だ。どうすりゃいい。考えろ。
『童、良い事を教えてやろう。主らとテスタロッサが裏で繋がっている事をわしは知っておる。知っていて、主を殺そうとしているからな』
「……」
『元よりな、作戦は割れておった』
「いたぞ、奴だ!」
テスタロッサでもペイルでもない聞き覚えのない声がして…6名程度の兵士が何処からか現れ、俺を突き飛ばす。
『王国軍の精鋭か…ふむ…』
「邪魔だどけ!使えねえ雑魚勇者が!」
「てめえ程度では足止めにもならねえんだよ!」
散々な言われようではあるが…まあこれを利用して解析を続けよう。
『どれ、ちと遊んでやるかのう』
「おおぉぉぉっ!!」
「行け!【結晶槍】!」
『【巨大化】…【結晶】、【放射】どれも凡庸じゃのう。武器だけは多少まともに見えるが』
兵士の一人は武器を巨大化させたり、また違う奴はクリスタルで出来た槍を投擲したり或いは魔法が一斉にヘキサへと向かう。
だが、あの程度でヘキサが傷付くなら今頃俺も苦労してない。
「へっ、所詮はエンチャントスキルしか使えねえような奴と、そんなのと同程度の奴だ。俺たちなんかとは格…が…」
『そうじゃのう、格が違う』
ヘキサは単に上から下に腕を振り下ろしただけだ。それでも人間程度簡単に真っ二つに出来る。
「もうちょっと時間稼いでくれると思ったんだがなぁ…』
『ふむ…また訂正しないとのう。お主はこの国の中ではまあまあ強いと』
1人殺された程度で尻尾巻いて逃げ惑う兵士など視野にも入れずに再びヘキサが此方へ向く。
レーヴァテイン…炎の魔剣、形を変えられてそれから…剣や槍、矢?違う、もっと忠実にだ。どうしても俺の固定観念でエンチャントの強さが変わってくるのならもっと正しく思い出せ。
『絶望して呆けたか、童』
「ゴボッ!?』
腹にヘキサの拳が刺さった。オーディンは攻撃に特化した結果防御能力は低くなっている。ましてや剣でガードしたわけでもない、直接の一撃…
宙に舞う。刹那に見えたのはヘキサのフルフェイスの隙間から見える眼光。意識が暗転しそうだ。やばいぞ、内臓がスクランブルエッグだ。回復、戦闘継続、生き…残らな…い…と…
ーーーーー
『多少は楽しめた…か。まあ所詮はこの程度でか』
倒れ伏して動かなくなったコダマをつまらなそうに見る。
たしかに強い事には強い。だが、帝国内部ではよく見かける程度だ。
『連れ帰って改造すれば新たな兵器になるかもしれないのう。ふむ…やはりドラゴンの肉体を操ってる間はどうにも傲慢が過ぎる』
こちらが強いのは事実だ。だが自分でも思わないほどに相手を舐め腐っていた。
『まあ良い。逃げたゴミ共を始末してペイルと─』
言葉はそこで途切れた。
頭部へと響く凄まじい衝撃と脳が頭蓋の中で揺れ自分の体もその場から吹き飛ばされる。
何が起こった!?
「我は魔人。我は炎。我は─』
感じる魔力も全てコダマの筈だ。なのに目の前に立つその男は手に持った不格好な杖を振り下ろそうとする姿はまるで心ではなく肉体が恐れているようだ。
『貴様ッ!』
動かない体を必死になって動かそうとしても脳が揺れたせいか上手く立てない。
「スルト。星を砕く者、我は主人の命に従い汝を砕く者』
振り下ろした瞬間、たしかに見えたのは竜の鱗の鎧を容易に溶かし、叩きつける。ただ、ただ力任せに。
『グハッ!』
ドラゴンの肉体となってここまでダメージを喰らったのは初めてだ。
「対象の破壊が不十分と確認。再度、撃ち下ろす』
先端に付いた球体の炎がより一層輝く。
次はマズい!
咄嗟に体を転がし避ける。
瞬間振り下ろされた杖は地を砕き地割れを作り出した。
『なるほど…まだそんな隠し球を持っていたとはのう』
「人格回路に影響を及ぼすためこれ以上の戦闘は危険。スルトの人格を消去します』
ぶつりと魔力源の切れたゴーレムの如くコダマが倒れそうになるが踏み止まる。
「…っべ、意識飛んでた…あり、何これ』
『なるほどのう。珍しいスキルを持っているとは聞いていたがまさか人格までもエンチャントしてたとは驚きじゃわい』
「あ?知るかよ、気付いたらこんなんだ。これレーヴァテインだよな?戻る?あ、戻った。じゃあやっぱさっきので』
再び右目に魔法陣が宿る。
なるほど、あれは戦闘補助の役割を持っているのか。
「んじゃ、傷も癒えただろう?第二ラウンドと行こうぜ。クソじじい』
『ほざけ。秒殺してやるわい』
わざわざ腹の傷が治るまで待っていたとは馬鹿を通り越して呆れ返る。攻撃が通るようになっただけなのに。
「ぶっ殺してやる』
『わしがのう』




