朝焼けの闘争
「あれでよかったのか?」
「……ん」
「はぁ…何だかなぁ」
あれ巨大魚じゃなかったけとか思ったけど最近はドラゴンの方が多かったらしいしいいか。
全然思いつかなかったが取り敢えず大きくて魔力沢山持ってそうなのと言われたらあれしか思い浮かばなかった。
「つーか、エルヴァ。お前いいのかよ」
「意味無し」
「……ここにいる時点で察しろ…って」
「そうかよ」
まだ日も昇ってない時間だ。まあ、遠く南の空が赤くなってきているが。
テスタロッサが朝早くここだって教えてくれた場所だが…真実かどうかはわからない。まあ、律儀に歩いてくんのか、転移してくんのかは知らないが。この国では禁止されてるらしいが外国だと普通に生物の転移は使用していいらしいし。
あと契約のスクロールの事はバレてなさそうだ。
それにしても最近は慣れたけど相変わらずここの世界の天体訳わかんないんだよなぁ…太陽だって日によっては違う方角から昇ってくるし。
魔法世界だからと一言で片付けられるのかどうかは知らないが…まあ、専門的なことでもないので放っておくことにしよう。深く考えるだけ無駄だ。
「……アクト」
「ん?」
「……ごめんね」
「どうした?」
闇に目が慣れてきたと言っても彼女の顔がよく見えない。
「……アクト強いけど…でも、死んじゃうかもしれない…でも、トビィを助けたい」
「あー…まあ、なんだ。散々今まで死にかけて来たんだ。今回も大丈夫だって」
「…でも!」
突然アルマが抱きついて来た。
「……アルマのわがままでアクト…が危険な目に」
「あー…あれだろ?アルマは裏切られて1人になった。エルヴァは家族殺されて1人になった。俺は…まあ、元から1人だったが…3人仲良くやって来れて、孤独は無くなった。でも、トビィは違う。生まれてからも俺たちに会ってからも結局1人だった」
「……」
「だから、助けてやりたい。もう1人じゃないって。友達だからって。俺には良くわからねえけど…でも、そういうのって大切にするべきだと俺は思う」
「……アクト」
「だから安心しろって、俺強いだろ?今回もバッチリと決めてきてやる」
「……それ、フラグ」
「はて、何のことやら?」
まあ、でもアルマも少し落ち着いたようだし。大丈夫そうだな。
エルヴァが物欲しそうな顔をしていたがふと、何かに気付き遠方を睨む。
やがて、大きな足音のようなものが聞こえてきた。
「そうだアルマ、これが終わったら美味い飯でも4人で食いに行こうぜ」
「…だから、フラグ!」
なんのことやらわからないが…まあ兎も角…鎧を着た巨人、それの方に座るヒョロガリ、そして空から舞い降りてきたヘキサ。役者は揃ったようだ。
「失敗したらごめんな」
「……命を最優先」
「健闘を」
部の悪い賭けだが…今回もまあ、なんとかなるだろう。
ーーーーー
「…誰だ、お前ら?」
「冒険者」
「へぇ…」
『取るに足らん、弱者じゃ。気にする事はない』
「ドラゴンの体が無えと俺の前に立てねえ腰抜けジジイがよく言えたもんだな」
ヘキサは兎も角あっちは2人か?ちょうど2対2に持ち込めそうだし…あのヒョロガリは弱そうだし…大丈夫そうだな。
『ほざけ、弱者どもに祭り上げられた哀れなだけの異世界の人間よ。
わしが本当の強者というものを見せてやるわい』
あの日、ドラゴン状態のトビィと対峙した時のように背中に冷たい汗がつたう。
目の前の黒い鎧に身を包んだ老人は口先だけでは無いという事だ。
「お爺さまがそっちのゴミを。僕は…ふふっ、楽しめそうですねぇ」
『遊び過ぎるでないぞペイル。それに、どちらも良い素体じゃ。孕ませて国に持ち帰るのも良いな』
「えー、僕には心に決めた女性がいるんだけどなぁ。でも…処女だよね?初めての相手が僕になるのか…堪らないねえ!」
「死ね」
「……気持ち悪い」
「ははっ、いいよぉ!これが終わった後に君らが発するのは僕の○○○を加えながら、□□□や△○□みたいな、おねだりする言葉だけだからね!」
鎧を着た巨人がペイルを肩から下ろすと咆哮をあげる。
「エルヴァ、アルマを頼んだぞ」
「了解」
「アルマ」
「……ん。大丈夫、信じて」
『くだらぬ茶番は終わったか?ゴミ』
「痴呆ですか、お爺ちゃん?生きてるのも大変ですねー。さっさと死ねよ」
いつも通りゼウスエンチャントからの顔面への殴り。だがそれもヘキサには読まれてたようで簡単に拳を止められてしまう。
『そうじゃのう。汝程度なら、居眠りしてても殺せそうだわい』
「そうかよッ!』
拳を掴んでいる手を逆にこっちが掴んでやると遠投する。どうせ飛べるとか考えたがどうでもいい。今は分断するだけだ。
「ぶっ、飛べ!』
『ぬう!?』
流石に投げられるのは予測してなかったのかヘキサはされるがままに遠くに飛ばされるが即座に翼を広げ空中で止まる。
「呆けてんじゃねえぞ、クソジジイが!』
更に追加に蹴りを叩き込み、アルマ達から離した。
あとは作戦通りにするだけだ。
ーーーーー
「なるほど、分断ねえ。はっは、異世界人ってのはどいつもこいつも頭悪い」
「……」
「まあ、でも…僕とデートしたかったんだろ?いいよ、君らは今日から僕の捌け口として生かしてあげる」
「……それ以上、喋らないで」
「気色悪い」
「照れるなよ。ルルもそうだけど、僕顔がいいからかな?言葉をかけると照れられるんだよね」
変なポジティブ野郎はタチが悪い。
大体、木の棒に顔を貼り付けた様な奴がなに言ってるのだが…
「殺すなよ、魔眼?最悪手足が無くなるのはいいけど、体は残しておいてもらわないと困る」
『ギッ…ギギィ』
魔眼と呼ばれた巨人は見た目以上に素早い様で地響きを立てながらこちらへと走ってくる。
『ガアッ!』
「…エルヴァ、気をつけて!」
振り下ろされた拳が地面を砕くが巨大な狼となったエルヴァは難なくそれ。避け巨人の肩に噛みつく。
『ギャッ』
「畜生モドキの牙程度に我が兵器が傷付くわけないだろ?」
人型に戻ったエルヴァの口からはだらだらと血が流れ出る。
一方で巨人はと言えばフルフェイスのヘルメットで表情こそみえないが鎧に傷一つ付いてないところを見ると余裕そうだ。
「…ッ!」
リヴァイアサンを伸ばし巨人を包み込む。素早さはあるが攻撃頻度はそこまで高くないようだ。何せ、エルヴァを追撃してこない。
「へえ、面白い剣だね」
『ゴボ、ボボ』
「…溺死して」
巨大な海水の塊に巨人を閉じ込める。このまんま一気に決める!
試作の魔剣で大炎を起こすと海水の塊ごと巨人を斬る。
瞬間目の前で巨人毎、大爆発が起きて舞い上がった海水の雨が降り始める。
「アルマ…ッ!」
「ッ!?」
無傷だった。咄嗟に蛇腹剣を伸ばし全身をガードはしたが身長の低い自分からすれば山の様に大きな相手である。
舞い上がった砂塵から伸びた拳は難なく蛇腹剣を貫通し私を殴り飛ばした。
身体中に嫌な音が響いて、次の瞬間には背中から地面に叩きつけられて肺の空気を吐き出してまう。
「…ガハッ!」
「魔眼!内臓が逝かれたらどうすんだよ!僕の子供が産めなくなるだろ!」
『ギッ…』
「アルマ、アルマ!」
「……大…丈夫…ゴボッ…」
息が出来ない、これ肺…に…
「…ご安心ください。貴女のことは私が絶対に守りますから」
エルヴァは笑っていた。そして懐からゲルダのポーションを取り出すと私に飲ませる。途端に目の前がくらくらしてきて意識を保てなくなってきた。
「……エ…ル…」
「……」
ーーーーー
「普通に話せるんだ。いいね、僕と2人きりで話したかったのかな?」
「笑えないジョークですね」
ヴァリアントは人間モドキ、魔物モドキと散々言われている。或いは劣等種。たしかに魔力量自体が少なく、ろくに魔法も使えなければ冒険者になってもスキルは殆ど覚えない。だが、この爪と牙さえあればと…そう思ってきた。
歯が立たない、爪が通らない。
ぼたぼたと口から溢れる血液を何度も飲み込む。血生臭い味は人間で慣れているが、痛みは今まで無かった。指を口にっこむと何本か無くなっている。
「口淫の準備?いやー、いいね。犬ってのは主人に従順で」
「はは、そんな粗末な物でよくもまあ自慢出来ますね。体が棒なら差し詰めそっちのは針ですか?」
「…おい、そろそろいい加減にしとけよ。僕にだって我慢ってのがあるんだ」
我慢だ?それはこっちのセリフだ。
「心身共に醜い勘違い糞野郎に気持ち悪い目線向けられるこっちの身にもなってもらいます?」
「…なあ、僕のこと馬鹿にしてんのか?」
「してますけど?」
巨人は命令されなければ動かなさそうだし…奴さえ殺せれば…
「図に乗ってんじゃねえぞ、畜生風情がッ!!」
パンッと乾いた音が2回鳴った。
腹部が熱くなり逆流してきた血液が口から溢れる。まるでさっきのアルマみたく…
「もう決めた。見た目がいいから生かしてやろうと思ったのによ!僕の温情を理解出来ない糞畜生なんざ要らねえよ!死ね!」
「…自分が気にくわないから殺すとか…ガキ以下ですね。ママのおっぱいでも吸ったらどうです?」
「…ッ!」
手で傷口は抑えてはいるが温かな液体は止まりそうにない。
出血多量で死ぬ前に隙を見てポーションで塞がなければ…
「ぶっ殺せ、魔眼!!」
『ギッ!』
「あまり動きたくはないですか…」
狼へと姿を変えると巨人の一撃を避ける。
これぐらいなら…
「甘いんだよ畜生風情が」
第六感とでも言うべきか、巨人の肩を蹴り体を捻り避けると今いた所に一条の光が過ぎていった。
なんとか着地し態勢を立て直そうとしたが転んでしまう。
「ざぁんねーん。避けたと思った?避けれたと思った?当たってるんだよ」
『…ッ!?』
左腕が肘辺りから消失していた。
「自立式対国兵器No.3 轟天。天にも轟く銃声なんて言われてるけど…まあ、言ってしまえばほら。存在の消失。その使い物にならない腕と一緒でね?」
「ぐっ…ううううう!」
人間態に戻ってしまった。認識すれば痛みも付いてくる。幸いにも腕は傷口は焼かれたかのようにツルツルになっていて血は出てないが痛いの痛い。
「死ねよ、ゴミが。僕に楯突こうなんざ一億年早いんだよ」
目の前が暗くなった。巨人の拳は無慈悲に私を殴り飛ばした。




