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結託



 あれから暫くして門番のおじさんたちが来たので訳を伝えた。

 トビィは厳重警戒との事で牢屋に…とは言わずに俺に預けられた。

 なんでも、コレを閉じ込めておくとか不可能との事で…まあ、俺が面倒を見るという名目でまた暴れ出したら殺せとの事。妥当である。

 結局どこに行くあても無く宿に戻ってきた。


「なあ、頼むよアルマ君」

「…出てって!」


 そして珍しくというか…アルマが俺以外に声を張り上げ喧嘩している。相手は勿論トビィ。


 元からトビィが兵器人格になったら俺が囮になってどうにかするという事で話が済んでいたのだが…アルマも最初は同意してたのだがやはり俺が傷付いたとなってはと怒り始めたのだ。

 別に治るのだからいいのでは?と思うが。それになんだか俺の為に怒ってくれているのは嬉しい。


「僕だって不本意なのさ!許してくれとは言わないがせめて最後の時までいさせてくれたまえよ!」

「…それでアクトに迷惑かけてるの!」

「……」


 仲裁した方がいいのか…?いやいや、どちらにせよ俺の問題で…ううーん…

 エルヴァも巻き込まれたく無いのか素知らぬ顔で寝てるし。


「……アルマは…アクトが傷付けるなら例え誰だって許さない」

「ははっ…どういう気分だい旦那様?自分よりも弱い奴に守られるってのは?存外気分でもいいのかもしれないけど」

「……」


 ヤケになってアルマを挑発してるのか?


 兎にも角にも、喧嘩するほど仲がいいとも言うしなぁ…

 

「…アクト」

「ん?どうしたエルヴァ?」

「こっち」


 殴り合いに発展したら止めるべきとか思ってたらエルヴァに呼ばれて部屋の外へ出る。どうしたんだ?


「同情するのは分かりますが、アレのやったこと忘れてませんよね?」

「まぁ…」

「貴方にとって大切なものはアルマです。あのドラゴンでは無いです」

「…わかってるよ」

「それとも何ですか?都合の良いこと言われて舞い上がってるとでも?後先考えずに行動するのは良く無いですよ」

「……」


 そんな事はないと言い切れないのは自分のダメなところだな。

 そうなるとトビィには申し訳ないがアルマの味方を…


 ガシャン


 ガラスの割れる音がした。

 急いで部屋へ戻ると破られたガラスと何やら下から声がしている。


「今回ばかりは心の底から貴方を軽蔑しますよ」

「……部屋から出したお前も同罪だろうが」


 部屋にはアルマの姿もトビィの姿も無く…


「…ダメですね」

「オーディンで探す。最悪…どうにか匂いで…」

「まあ、やるだけはやってみますよ」



ーーーーー



『…何を呆けておる、貴様ら』

「……いや、誰だって空から急に鎧が降ってくりゃ頭止まりますって」

『貴様の頭の悪さなど、とうの昔から知っておるわ』


 今日は催し物があるらしく中央の広場以外に街に人の影は無い。何するかなどとぼーっと3人で人気の無い街を歩いていた時だった。突然空から気絶した少女を担いだ鎧が降ってきた。見りゃわかる。No.6様こと、帝国軍魔法研究所所長のヘキサ=ジャーズ、一応は直属の上司だ。


『テスタロッサ、此奴をもっておれ』

「ん…?片角の魔族?別に珍しくも何とも─」

『ラプラスの遺児じゃ』

「…ッ!?て事は?」

『ああ、この体の記憶から見たわい。しっかりとワルプルギスを継承しておる』


 キッドとルルは何のこっちゃと顔を見合わせているが、魔法研究をしていれば必ず打ち当たる壁のようなものだ。


『長らく不明だったワルプルギスの解明ができるかものう』

「……」

『どの魔法形態、血縁魔法からオリジナルの魔法まで。あらゆる物を終わらせる禁断の反魔法。現状では国1番の魔法研究者である、お主に託すが…どのような状態であれ研究が終わり次第に孫に渡せ。生きたままでな』

「…どこでこれを?」

『ドラゴンの習性で倒した男の元に向かったのじゃがな…ありゃダメじゃな。使えぬゴミだ。だが、連れてる女どもは良い素体ばかりでのう。折角だから連れてきた』


 しっかりと孫にまで血が繋がってるなとテスタロッサは改めて思った。


『ああ、それと…それのお守りをしておったのがな、たしか御主らが懐柔しようとして─』


 光が走った。否、それは天からの雷。その眩い光ヘキサを包み込み焼き続ける。


 これは雷系の最高レベルのスキルであるクラウノス。膨大な魔力と非常に長い詠唱を必要とはするが比較的簡単に使用する事は出来る。だが、こんなにも長い時間使える人間など聞いたことがない。


 やがて光が止んだ頃にパチンと音がして何かが転移してきた。


『ゴホッ…き、貴様ァァァァァァッッ!』

「見ぃつけた。死ぬ準備はできてるか?クソトカゲ?」


 先日とは明らかに違う。纏う覇気も、漏れ出した赫い魔力も、別人かと見間違う程に…アクト コダマはその姿を変えて姿を現した。


「…ん?ああ、あんたらか。アルマに手を出すんじゃねえぞ?」

「……俺ちゃん早死になんかしたかねえもん」

「ああ、そう」

「……」

『不意打ち程度で図に乗るな、クソガキがッ!』

「ドラゴンの肉体でしか俺の前に立てない老害には言われたかねえな」


 およそ人の目には追えないヘキサの拳をコダマは難なく避けると返しにと腹に蹴りを入れる。


『所詮はスキル頼りの屑か』

「ははっ、余裕ぶった言葉はどこに置いてきたんだ?ドラゴンモドキ」


 互いに距離を取る。メメントモリ全員を殺したってのも肯ける。元よりキッド達の敵では無かったろうが…流石にこの国が可哀想になってくる。


『…まあ、良い。わしに不意打ちで多少の傷を負わせた事を誇れ。次に会う時は本来の力を見せてやろう』

「なんだ、腰が引けて逃げんのか。情け無い兵器様だなぁ」

『ほざけよるわ』

 

 それだけ言うとヘキサは此方を一瞥して飛び立つ。


 …やはり、俺ちゃんの目に狂いは無かったな。


 今しがた漏れ出る魔力を押さえ込むと不機嫌そうにコダマは此方を睨み付けてくる。


「テメェの差し金か?」

「まさか!俺ちゃんはただ、この子の事を頼まれただけだ」

「どうでもいい。さっさとアルマを返せ」


 まあ…うん。

 アルマと呼ばれる魔族の首筋に剣を向けると状況を理解したのか即座にキッドとルルは俺ちゃんを守るように一歩前に出る。

 それが理解できなかったのかより不機嫌そうにコダマは眉を潜めた。


「何のつもりだ?」

「千載一遇のチャンスを再び逃すような事するわけないだろ?」

「ちょうどいい、あの骨野郎じゃ相手にならなかったんだ。もう一度俺と─」


 ボンっと音がした。何の音だと理解する前にルルの悲鳴が上がった。


「帝国の人間と王国の人間。俺にとっちゃどっちもどうでもいい事だがよ…まさか脳味噌の構造も違うのか?』


 魔力で形成された蒼いマントに義眼代わりの魔法陣、手に持つ槍には何かしらのエンチャントがかかっているのだろう、禍々しいオーラを放っている。それがおそらく本機の姿なのだろう。倒れるキッドの腹に空いた穴越しにそれが見えた。


刻印付与ᚺ(破壊のルーン)。なんて事はない、ただあらゆる物を物理的に破壊する。それだけだ』

「いや…いやぁぁぁぁぁぁッッ!!」

「テスタロッサだったか、悪いがそれが1番の悪手だ。まあ、どっちにしろてめえらは皆殺しだが』


 ゆっくりと此方へと槍を向けてくる。

 今すぐにその子を離さなければ殺すと。ただ、それだけは感じ取れた。


「…ッ!!」

「因みに今ここに向かってるエルヴァってのは人肉喰う化け物だ。餌になるか此処で死ぬか、黙ってアルマ離すか。ああ、勿論離してくれるなら慈悲の心で命は取らねえよ?だったら考える事もねえだろ?』


 …キッドの命が最優先だ。そんなのわかってる。だが…本当に離したところで俺ら全員助かるのか?俺の命を差し出せばひょっとすれば…


「…時間切れだ』

「な、待っ!?」


 槍を突いた速さなど見えない…だが、瞬間目の前には虹が広がり、痛みも何もなく自分が生きている。その事実だけがあった。


「……だめ、アクト」

「この間もクソトカゲ殺すときに邪魔されたんだが?』

「……トビィを救う為には情報…が必要」

「救う?冗談だろ?あんな頓珍漢な野郎なんざ、救いようがねえよ』

「……」

「……分かったって、そんな目しないで、はぁ…』


 面倒くさそうな顔して槍の穂先に何やらエンチャントをすると泣きわめくルルを退かしキッドに槍を刺す。


「ちょ、おま!?」

「んだよ、刻印付与は1度相手に刻印されたら剥がすのが面倒なんだよ」

「だからとどめつけたってのか!?」

「はぁ?救ってやったんだが?」


 コダマが魔法を解いたと同時にひょっこりとキッドが起き上がり辺りを見回す。


刻印付与ᛇ(再生のルーン)ってのだ。死んでねえなら多分再生できると思ったが…成功した」

「…出鱈目だな」

「空間切断する侍と山を割るキックボクサー、それのガキ、プラス帝国にもまだ相当の転生者いるんだろ?どっちが出鱈目だよ」

「何で知ってんだよ」

「さっき見た」


 …鹵獲なんて無理だな。


「ところでアルマ、変なことされてないか?怪我は?痛いところとかは無いか?」

「……ん。大丈夫」

「はぁ…すまねえな、今度からはしっかり守るから」

「……ふふっ、アクトは優しいね」

「そんなに安売りはしてないけどな」


 考えてみれば、2人ともこの国の人間じゃねえんだ。話持ちかけるだけにしとこう。巻き込むのも良くねえしな…


「なぁ…」

『グルルルルッ』


 コダマにも驚かされたが.駆けてきた巨大な狼にもう一度驚かされる羽目になった。

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