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第二世代


「おっ、君は転職したのかな?いいねぇ。冒険者は浪漫に溢れてるだろう?」

「は、はぁ…」

「そんなに緊張しなくてもいいでしょー?別に敵国とは言えど、今は平和期間なんだから」


 敵国?たしか帝国で良かったんだよな。

 すると今目の前にいる軍服のような服を着た3人組は帝国の人間というわけか。

 まあ、別に何人だろうが興味無いが。


 男はずいぶんと軽い口調でデンに話しかけている。


「いやー、それにしてもこっちはいいね。肥沃な土壌。美しい河川。何一つ取って我が国に無いものばかりだ」

「……」

「羨ましい限りだよ。何せ我々の国は─」

「デン!おい、そろそろクララに呼び出し食らってる時間だろ!?急がないとまた大目玉喰らうぞ!」

「え!?あ、そ、そうだった!」

「ほんじゃまた明日な!気を付けて帰れよ!」


 執拗にデン…というかこの国の人間に対してか。敵意むき出しだろ。このおっさん。


「……」

「へい、お待ち」

「おっ、ありがとね」

「…いいな、この国の人間は毎日これを飲めて」

「そうだな。昼間っから飲んでる馬鹿もいるけど」


 デンは家路に着かせたが…俺は俺で彼らに興味があるので居座っている。


 歳の頃合いが同じくらいの男女は睨み付けてくるが、先ほどデンを虐めていたおっさんはどうやら気が済んだのか妙に澄んだ瞳で見てくる。


「お前は…もしかして転生者か!?」

「あ?いやまあ…」

「成る程、勇者らしい佇まいじゃ無いか!」

「あの糞共と同類に扱うな反吐が出る」

「ふふっ…」

「はっ!」


 男女の方が笑ってるがおっさんの方はイマイチどういう事かと理解出来てない。


「テス。そいつ、捨てられたっていう勇者の元仲間じゃ無いのか?」

「え?あぁー、するってーと勇者は?城にいた?」

「知らね。強くなりたいとか言ってまた血税の無駄使いでもしてんじゃねえの?」

「…貴方、捨てられた事を恨んでるタチ?」

「まさか。あんな連中の仲間でいんのも、言いなりになるのも真っ平だ」


 おっさん…テスと呼ばれた男は何が面白いのかニコニコしながら話を聞いてくる。


 不気味な奴らだな。

 それと今気づいた事だがこのテスとかいう奴義手だ。それも随分と古そうだ。だからなんだと言うわけだが…なんかこう、胡散臭い。

 

 それからテスは腕を組んで暫く考えるとそうだ、よしと手をポンと叩く。

 

「気にならない?」

「え、何急に?」

「元勇者君じゃなくて、キッドとルルに聞いてるから気にしないで」


 少年はキッド、少女はルルで良いのか?それにしても自分と同年代など早々見ないから物珍しさは多少ある。


「弱いから捨てられたと聞いてるけど…見てわかんないのアス?弱いじゃん。どう見たって」

「同感。弱そう」

「あのさ、やめてくれ。ただでさえ疲れてんだよ」

「逃げるのか?」

「どう罵倒されようが喧嘩は買わねえよ」


 やってられるか。ただでさえこっちはエンチャント使う度に寿命が削れては時間をかけて戻すの繰り返しだと言うのに…


「あっ、そういや名前聞いてなかった。元勇者君名前は?」

「コダマ アクトだ。あと、元勇者って言い方をやめろ。俺は勇者じゃ無くて魔法付与師だ」

「職人さん?それともさっきの彼と同じ冒険者?まあ、どっちでも良いか」

「名乗ったんだからお前らも名乗れよ」

「ああ、めんご。俺ちゃんはテスタロッサ=ゲーテル。んで、こっちのがキムドレッド=ヤサカミとルル=イザヨイ」


 ヤサカミ?イザヨイ?


「東洋人か?」

「いや、異世界人とこの世界の人間との間に出来た子供。第二世代ってやつさ」


 第二世代…いやまあ、魔王が生まれる度に異世界人召喚されてるんだしいるよな。


「折角だから試したかったんだよ。第一世代と第二世代。どっちが優秀か」

「そりゃ、第二世代だろ」

「…お前、力は見せつけないタイプ?」

「いや、見せつけないとかじゃ無くて普通に考えて第二世代とかの方が強いだろ。親のスキル見て育てばそれだけ自分に合った形にも出来るんだし」

「…うーん。まあ、うちのグループでもよく第一世代は荒削りの強大な力。第二世代は研ぎ澄まされた力って言われてるしなー…言いたい事はわかるけど…でも、気になるじゃん?」

「いや、別に」


 残ってた酒を一気に飲むと気付けば氷が溶けてしまったようで薄まっていた。

 もう帰ることにしよう。時間の無駄だった。


「つまり君は、自分よりこの子達が強いと?」

「…あのよ、いきなり来てどっちが強いだとか蛮族かお前は。祭りだ何だって人が楽しんでんだから、そんな時くらいは忘れろよ」

「テス、そいつの言う通りだ」

「うーん…そうだけどさぁ」

「別に元勇者じゃ無くてもメメントモリはいるでしょ?」


 メメントモリ?ああ、この間の。


「アイツらもういないぞ」

「え…?」

「この間喧嘩売られたから俺が殺した。デケエのも、オトコオンナも気色の悪い仮面野郎も。ガキだけは他の人…人?いやまあ、人らしきのに」

「…彼らは超越者に数えられる程の実力者だった筈だろ?」

「恩人を馬鹿にしてきた連中の素性なんざ知らねえよ」

「……」


 なんだか今度は3人距離を置いてひそひそこそこそと話している。


 マズいこと言ったか?いや、別にこの国がどうなろうが知ったこっちゃ…いや、待てよ。国王が処刑されようが女王が凌辱されようが糞ほどどうでも良いがこの街が狙われたら…やばい、マズいこと言ったかもしれない。


 スキルでコイツらを…そう考えているとテスタロッサは先ほど見せなかったような明らかな営業スマイルを向けてくる。


「アクト君。良かったら俺ちゃんのラボ来ない?」

「行かねえよ。さっきの方が胡散臭さが多少マシだわ」

「えー」

「スキルが欲しいならスキル魔石?だったか、あれで渡すからもう2度と関わらないでくれ」

「いやー、スキル単品には何の価値もないし、要らないかなー。結局は使う人間に左右されるし」


 そういうものなのか?


「じゃあ、強制連行って事で」

「…は?」


 酒も回っているので反応が遅れた。


 キッドの蹴りが腹に刺さり、後方へと吹き飛ぶ。

 一瞬猛烈な吐き気と共に何とかそれを抑え込むともう既に顎の下にキッドの脚があった。


「シッ!」

「…ッ!?」


 宙に舞う。脳が揺れる。遅くなった世界の中でゆっくりと背中から地面に叩きつけられ息を吐く。


「…あれー?」

「テス…お前本当に人を見る目がないな」

「やっぱ弱いじゃん」

「うーん…でも、なーんかこう…来るものあったんだけどなぁ…」


 倒れた俺を見てつまらなそうに呟いている。出来ることなら、そのまんまどっか行ってくれ。


 結構痛かったが…それでも人間の一撃だ。脳の揺れなんて無視して動けるが気絶したフリでもしといた方が楽に済む。


「……おっ。キッド、手を抜いたな。そいつまだ意識があるぞ?」

「は?」


 ……


「よし、じゃあ…あと3秒以内。それで起きなかったら順にこの街の連中を殺すとしようか」

「…祭りだって言ってんだろうが。人殺してどうすんだよボケ」

「…嘘だろ?」


 帝国の人間ってのは蛮族ばっかりか?


 キッドは一瞬驚いたような顔をしたが直ぐに冷たい目線を向けてくる。

 ちょうどエルヴァが獲物を見つけたときのように鋭く、逃しはしないとでも言っているようだ。


「私パス」

「えぇ…戦えよ。実践記録見せろよ。俺ちゃん一応お前さんらの上司よ?」

「嫌よ」

「ああ、ルルは下がってろ。俺1人で十分だ」

「……」


 俺の意見はとかは言えなさそうだ。


「行くぜ、おっさん」

「…おい、待て。まさか俺のことか?」

「だってお前親父と同じ第一世代の人間だろうが!」


 第一世代とか、そういう問題じゃ無くてどう見ても俺とお前歳同じだろ。

 ツッコム前に再び蹴りを…いや、今度は違う。

 カマイタチ!?ふざけてんのか、コイツ。


 間一髪で避けはしたが、お陰で服の前側がスッパリと斬られた。


「避けてるだけかよ!」

「あーもう!知らねえ!」


 酔っ払ってるのであんまり動かない方がいいかとペルセポネエンチャントを発動する。


 同時に再びキッドが蹴りを放ってきたが、間に合ったようで髪は脱色され腰まで伸びていく。

 胴体を真っ二つにされたが即座に再生が行われる。

 痛覚が鈍化するだけで無く、エンチャントを超えた能力は最早、致命傷すら再生するようになったのだ。その程度は痛くも痒くもない。


「なっ!?」

「上等だてめえ、やってやろうじゃねえかよ!』


 素早さそうだし、今回はキッドの足元に直接…


「【ハデスゲート】!』

「やばっ…」

「……あり?』


 確かにスキルは発動した。なのにキッドの足元の黒い穴からは一向に亡者が這い出てこない。

 つまりは…


「お前…人殺した事ないの?』

「はぁ?あるわけねえだろうが!」

「あー…うん。そっかぁ…』


 スキルは不発に終わった。SP無駄に消費した…

 テスも何だこれはと興味深げに穴を覗く。なんか…恥ずかしい。


「はっはー!さてはお前自分のスキルも使いこなせてねえな?」

「いや、うーん…どちらかと言うとお前が誰一人殺してないから…うーん…』


 酔いが回るがやはりここはゼウスか?

ペルセポネを解除しようかと思っていると俺の足元からは1人亡者が這い出てくる。


「…お前、何?どんだけこの世に未練あるわけ?』

『……』


 紅い骸骨だ。


「なんだそりゃ…?」

「……命の恩人?』


 確証は無い。だが、久しぶりにステータス画面でも開いて確認をすれば…


        谺 阿久斗(18 ♂)Level30/30


   HP0/1000 MP450/1200 ATK150(0) MAT20(0) DEF300(5200) SP495/500


   職業 魔法付与師


   スキル エンチャント(Level10)

       エンチャント・夢幻(Level30)

       エンチャント・重奏(Level12)

       【クラウノス (Level0)】

       ハデスゲート (Level0)

【武器召喚・神槍】


   バッシブスキル エンチャント永続化       

           冥府神の波動

           天蓋花の揺り籠・魔族

           (雷霆の波動)

           (赫雷鳴動)

    (戦神の波動)

    (死槍刻印)


称号 異世界の冒険者、来訪者、アルマの相棒、異界神を纏いし者、ロードキラー、むっつりスケベキング、元素魔動人型を克服せし者、精霊の敵、虐殺者、夢幻の奏者、超越者



 ……なんか色々増えてたり変更されてるけど一つだけ言いたい。

 HP0って何?俺死んでるの?

 それだけじゃない。スキルもバッシブスキルも見覚えのないものだし…なんかむっつりスケベまでついでに進化してるしで…何だこれ…


「なんだ、この骨!?」

「四天王様」

『……』


 まあ、いいか。本人が望んだ事なら満足するまでこき使わせてもらおう。

 それはそうと、骨になったせいで恐らく生前の力を100%は出せてないのだろうが、それでもまともにやり合ってるキッドの実力は計り知れない。


 まあ、骨とキッドは勝手にやり合ってて貰えばいい。問題はこっちだ。


 さっきからテスに舐めるような視線を向けられている。ひょっとしてそっちの気のある人間なのか?


「…肉体へのエンチャント付与なんて先ず常人ならやろうなんて思わないぜ?」

「ああ、よかった。そっちか』

「…?ともかくだ。そうやって過去にも自身の肉体へのエンチャントを行ってきたものは大抵早死にしてきた。あまりいい戦い方とは思えないな」


 それがどうした?こうする事でしかこっちはまともに戦うことはできないのだ。


「くっ!この…死ね!」

『……』


 キッドの冗談の回し蹴りが当たり頭部が破砕されると、そのまま体もサラサラと消えていく…


 あれ?大丈夫だよな?


 慌ててステータスを確認すると特に先ほどと変化が無いので大丈夫そうだ。


「はんっ、口ほどにもない」

「…もういいか?』

「いやー…俺ちゃん的にはすっごい気になるからさー…やっぱうちのラボ来てよ。それとも強引にでも…」

「やろうってなら相手になってやるよ。ただし、明日な。もう酒が回ってふらふらなんだよ」


 もしかすると骨がやられたせいかもしれないが…エンチャントを維持できてきたのも不思議なくらいでその場に座り込んでしまう。


 あぁー、夜風が気持ちいい。


「なら、好都合だ。キッド、捕まえちゃって」

「おいおい、動けない相手に対して乱暴する気か?」

「寧ろ、そんな状態で捕獲しないとでも?」


 やべえな。話し合いでなるべく穏便に…


 しかしキッドが近づく前に一陣の旋風が起き、気付けば誰かに抱き上げられていた。

 そう、いわゆる…お姫様抱っこ状態である。


「やあ、旦那様。月が綺麗だね」

「今日新月だけど?」

「僕にとって君は太陽であり月でもある。要するに必要不可欠な存在という訳さ」

「さいですか」


 ドラゴンが助けに来てくれたようだ。


「…ッ!おい、お前!」

「…?やれやれ、夜中に叫ぶものじゃないよ。帝国のお狗様達。僕はこれから旦那様と大切な話があるんだ」

「コダマ!逃げろ、そいつは!」


 テスの言葉を聞き終わる前にドラゴンが跳躍し空へと舞い上がる。


「…そういや、お前女子会?じゃないのか?」

「んー?もちろん抜け出してきたのさ。みんな今頃ぐっすり眠って頃だろうし」

「盛ったのか?」

「まさか!はしゃぎ過ぎただけの話さ!」


 ストンと軽く着地をしたのはいつも泊まっている宿の前。


 夜中と言えど深夜では無いので案外、人もいるな。


「さてさて、旦那様。僕らの愛の巣は?」

「…俺、外で寝るからベット使えよ」

「つれないなぁ。いつもはアルマと寝てるんだろ?僕とだっていいじゃ無いか」


 ……


「大事な話ってのは?」

「あまり聞かれたく無いものさ」

「ああ、そう…」


 あとでアルマにこっ酷く怒られそうだ。

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