一時の幸せ
「おや、起きたかい?」
「…まーた、ここか」
「こっちのセリフだよ」
はてな?えーと、たしか…
あのあとウォーデンの遺体を回収して、王都を出て…あり?
「帰ってくるときにお前さん気を失ったんだよ」
「あー…」
「安心しな。半日程度眠ってただけだよ。もう深夜だ。老人に夜更かしさせるとはいい度胸だね」
「たまに刺激与えないとボケますよ?」
「自分の体のことも理解してない阿呆は黙ってな。
あと、死体は埋葬しちまったけどもしかしてダメだったかい?」
「あ、いえありがとうございます」
後で花を添えに行かないと。
「さーて…で?今回は何やらかした?」
「…自分に付与してるエンチャント…人体に影響ないようにストッパーかかってたんですけどこじ開けました…」
「……」
「……」
「あんた、アルマとの約束忘れてるんじゃないだろうね?」
「まさか!」
ちゃんと騎士様に合わせた後に…ああ、そうだスケアクロウ。あとで聞いてみないと。
「…ほれ。とりあえずこれ飲みな」
「ああ、どうも…」
病人に向かって投げるのはどうかと思いながら受けてろうとすると距離感が掴めなく薬は地面に落ちてしまった。
そういや、この距離なのに先生の顔が歪んで…
「…ざっと見ただけで、右目の視力低下、右手の機能低下、痛覚の麻痺だね」
「へえー、一目見ただけでわかんのかよ。すげーな」
「冗談で言ってんじゃないよ」
落ちた薬を回収して渡してくる。落ちたじゃん。新しいのにしてくれよ。
しかし、いつにもなく真剣な顔でゲルダは睨んできてるので黙って飲む。マズっ。
「あんた一体、次は何を犠牲にするつもりだい?いい加減にしたらどうだ」
「……」
「毎回毎回説教するこっちの身にもなりな。ガキでもわかるようなことを言わせやがって」
「…それは、子供の頃に親から習うのか?」
「……はぁ。もういい、バカにつける薬は無いよ」
寝てなとだけ言われゲルダが部屋から出ていこうとする。
しかし何を思ったのか立ち止まると
「今回も私が治せる場所だったが…次はどうなるかは知らないよ。これだけは覚えておきな」
「…はい」
それだけ言ってさっさと行ってしまった。
「……」
「……」
「……アクト」
「…ッ!?びっくりした、アルマか!」
「……ん」
カーテンの裏に居たのか。
「……アイツらに嫌なことされなかった?痛い事とか…苦しい事とか?」
「大丈夫。アイツらといる事だけで苦痛になるから」
「……無事でよかった」
シーツを力一杯掴み必死になって泣くのを我慢している。
「ごめんな」
「…アグド悪ぐない!」
「そっか…ありがとな」
また泣かせてしまった。本当にダメなやつだな俺は。
しばらくアルマが泣き止むまで頭を撫でてやっているとアルマも包帯やら何やらしてたのに気付く。
「アルマ…売女共になんかされのか?大丈夫か?」
「……顔殴られただけ。それにエルヴァ…も助けてくれた」
やっぱアイツら殺すべきだ。
「……ゲルダが明日退院していいって。アルマ、今日はここ…で寝る」
「そうか…心配してくれてるのはわかったから取り敢えず俺のベッドに入ろうとするのは辞めようか。うん。年頃なんだからね、せめて違うベット使って」
なんで…?って顔してるがそれは勘弁してもらいたい。
ーーーーー
「納得行きません!」
朝からうるさい連中だとメルカは必死になってポーカーフェイスを続ける。
もうかれこれ3日前となったあの王都での忌まわしき事件もやっと収束してきた。
と言うか、陛下自らの口から聞いたのにまだ言ってるのか。
「サツキは右腕切断!ツバキとエイジは内臓の損傷!ノリコも視覚嗅覚の一時的な麻痺!挙句に大勢の人間を殺した!それなのにアイツが無罪!?」
「正確に言えば今回の件を全て無かった事にしただけだよ。君らの四天王討伐の勲章は後々授与される」
「違う!僕の仲間を傷つけた事に対する正当な罰を─」
「いい加減にしてもらえるかな?今は君のわがままに付き合ってる暇は無いんだ」
「なっ!?」
「大体話したろ?もう少しでフェスティバルで他国からも…勿論敵国である帝国からも大勢の来賓の方々が来られる。
それにあれを王都中で流したのがそもそもの間違いだったよ。仮に今ここでアクト コダマを殺せば大勢の貴族が離反するだろうしね」
読めてなかった。国中の貴族たちが我こそはとコダマを懐柔しようと躍起になり始めたのだ。
圧倒的な力。強者であるメメントモリ達の瞬殺。普段は争い事など全く首を突っ込まない癖に、我先にと…馬鹿らしい。
「だったら僕1人でもアイツを殺しに行きますよ!」
「…いい加減に現実を見たらどうですか?もう、貴方達程度ではアレに傷一つつけられませんよ?」
「はっ、卑怯な手を使って勝ったところで、僕らの実力の方が上です」
「……」
救いようのないバカだ。
まあ、いいと手元の資料を見る。
あのエンチャントされた魔剣はとてもじゃないが人に使える代物ではない…だけど、学長からは生徒達は使えていたと…ふうむ…コチラは兵器として運用出来そうだな。
だが、もう一つの方が問題である。
「経過は?」
「はっ、被検体1から10まで全員肉体崩壊が開始され、被験体1と2はそろそろ限界かと…」
「そう…」
「聞いてるんですか、メルカさん!」
「おや…そろそろ見舞いの時間だろ?早く行ったら?」
「……失礼します!」
馬鹿が。
「…どうされるつもりなのですか?」
「私だって知らないよ。
ただ、陛下がメメントモリを失った今、手放すとは思えないけどね」
「コダマは?」
「…ギグス君。アレは温厚なドラゴンみたいなもんだ。こっちからちょっかいかけない限りは暴れやしないさ」
「…だと良いのですが」
はあ、しかし疲れたものだ。
「ギグス君。今日抱いてくれよ」
「お断りします」
「ははっ、連れないなぁー」
「ふざけてる暇があるのなら研究を進められたらどうですか?」
「今の言葉で完全にやる気が無くなったよ。やめだ、やめ。飲みに行く」
「…それぐらいなら付き合いますよ」
本当に君は無愛想な男だなとは口が裂けても言えない。
「皆んなも終わり!被験体のゲージに鍵だけ閉めといたら今日はおしまい!どうせ全員死ぬんだからいいよ、お疲れ様」
まあ、これで生き残った奴がいたらいたらで…まあ、いいか。考えるのも面倒くさい。
「さて、行くとしようか」
「…貴方持ちで」
「笑えない冗談は好きじゃないかな」
ーーーーー
退院してから暫くはゆっくりしようとアルマとピクニックを計画してた頃、ふとガルドさんに呼び出され謝られた。それはもう地に穴が開くほどに。
結局偽物だったのか…ああ、良かった。
「……これ、ガルドの偽物だった…もの」
「ねえ、なんで手に乗せるの?え、やだこれきっしょ。まだ生暖かいんだけど」
でも見覚えがあるぞこれ…ニュクスのスキルだ。
「ともかく今回は俺のせいだ。本当にすまねえ」
「いや、だからいいですって」
「…嫌になっただろ?こんなに情けない奴がてめえの頭だってのは」
「別に平気ですって。偽物作りだしたやつも殺したんで」
「メメントモリの連中をか?」
「まあ、口先の割にはたいした事ない奴らでしたよ」
オーディンの千里眼でも確認した。確かにあの時殺したのは本人だ。
「……ガルド、アクトとアルマ休暇中」
「ああ、呼び出して悪かったな」
「もう気にしないでくださいって。大丈夫ですから」
「…そうか。ああ、そうだ。再来週からフェスティバルが始まるからよ。そこまでまあ、ゆっくりと休め」
「ありがとうございます」
フェスティバル…王城にいる頃には参加出来なかったな。ずっと他国から来た来賓の相手やらで…
「…アクト、今回は本当によ─」
「ガルドさんもいい天気ですし外に出たらどうですか?日光浴びるとそんだけ元気になれますよ?」
「…そうだな」
さて、とエルヴァを迎えに行って近くの森までピクニックに行くとしよう。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
諸事情によりまたちょっと投稿ペースが狂いそうです。すみません。




