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相棒



「…っ!」

「……避けてて楽しい?」


 挑発するように声をかけるとサムライ女は青筋を立てて斬り付けてくる。

 

 正直に言ってしまえば自分よりも格上だ。仮にもアクトとともに勇者として召喚されたのだから…だが、それはあくまで平常時の話。挑発してると学びもせずに憤怒してくる。そうなればわかりやすいことこの上ない。


 突然やってきたこの3人組は攻撃を仕掛けてきた。

 無論魔法攻撃など意味もないので強制的に終わらせたあと、リヴァイアサンで3人仲良く捕まえて外に投げた。


 勇者…勇者…英雄が自分を英雄と言ったらダメなように勇者が自分を勇者と言うのはどうなのだろうか?


「……弱いね。そんなんでよく…アクトのこと、無能って呼べる…恥ずかしくない…の?」

「うるさいっ!【デスブリザード】!」

「……【ワルプルギス】」


 馬鹿の一つ覚えだ。ターン制の盤上ゲームじゃないんだから仲間を信用して突っ込んでくればいいのに…


 奥の魔法使いともう1人…職業は何かはわからないが…ともかくその魔法使いはよほど魔法の威力に自信があるのか彼女が魔法を発動させると前衛で切り結んでいたサムライが後方へ避ける。


 街中だというのに巨大な氷の竜巻を撃つのは、勇者以前にどうなのだと疑問に思う。まあ、結局魔法なので直ぐに終わってしまうが。


「なんで私の魔法が効かないの!?

 ノリコ!もっとエンチャントを!1番強いのをお願い!」

「は、はい!」

「……魔法付与師?」

「はっ、あんな雑魚職と一緒にしてんじゃないわよ!ノリコはプレゼンターよ!」


 おさげ魔法少女は偉そうにしてるが…別にお前が偉いわけでもなんでもないしプレゼンター?てことは…


「……アクトの代わりに補充された…人?」

「ひっ…」

「……上位職なのに…アクトの足元にも及ばなそう。それともアルマ…の目が悪いのかな?」

「お前の目が悪いんだ!」


 サムライ女がスキルを使ってくるが…なんなんだと言いたくなる。

 応戦する必要もない。戦い方がどう見ても格下…避けられたり、防御しきれないとか、そう言った連中しか相手してこなかったのか?バカにされてるようで気分が悪い。


「【神速五連斬】!」

「……」


 リヴァイアサンを伸ばし自分の周りに展開するだけで簡単に防げる。

 まるで隙などついてくる様子もない。


 サムライって…一撃一殺って言われるくらい強い上位職って噂では聞いていたけど…


 所詮は噂か。


「…ッ!?」

「……一々驚くほど?」


 サムライ女の足を絡めとると鞭のようにしならせて地面に叩きつける。

 舗装されている道路を砕いたので後でお咎めが来ないか心配だ。


「ガッ…ハッ!」

「ツバキちゃん!」


 1人ダウン。あと2人。


 もうやめてくれないかな…弱い者虐めは好きじゃない。


「よくも…よくも、私の大切な仲間を!」


 おさげ魔法少女の周囲の空間が歪む。


「行くよ、ノリコ!」

「は、はい!」


 ノリコと呼ばれたプレゼンターはおさげ魔法少女の杖にエンチャントを付与する。

 恐らく魔法強化とかだろう。


「【アルスマグナ】ッ!」


 夜空を切り取ったような球体は空へと浮かび上がると周囲の魔力を吸い込み始める。


 なるほど。魔力を大量に吸収して一気に爆散させるつもりだ。


「……1ついい?」

「命乞い?魔族にかける情けはないよ!」

「……それが爆発したらこの街…ごと吹き飛ぶ。アルマも死ぬし…貴方達も」

「はは、バッカじゃないの!私達は魔法障壁で…」

「……じゃあ、この街に住む人は?」


 アルマがただですむわけは無いのは当たり前だが…この街には少なくとも数千人の人々が暮らしている。

 

 それに今は大通りで戦っているのだ。不安そうに此方を覗き込んでる人達だっている。


「そんなの関係ないわよ!貴方は前魔王の娘!死ぬべき存在!だったら私は例え大勢の人を殺したって…私が世界を─」

「……良かった。貴方達が…どうしようもない屑…で」


 まあ、どれだけ集めたところで、だ。


 球体に手を向けると多少自分からも魔力を吸い出されていくが関係ない。


「【ワルプルギス】」


 一瞬の出来事だった。


 黒い球体は瞬きの間に消え、空を虹が覆う。


「う、そ…」

「……アルマ達のこと、化け物って言うよね…」

「ひっ…」

「……でも、必要な犠牲って…見捨てる貴方達も化け物」


 先ほど同様に鞭のように剣をしならせておさげ魔法少女の杖を奪う。

 魔法は基本媒介無しでは扱えない。自分だって角を使ってワルプルギス使ってるし。

 だが、使おうと思えば使える。それ相応の代償を負う覚悟があるなら。


「……まだ、やる?」

「い、いや…いやぁぁぁぁぁぁッッッ!!」

「……はぁ、」


 これじゃあ本当に弱い者虐めだ。


 相性も悪かったが…それ以上に実戦経験なんて無さそうだ。自分達より弱い魔物ばっかり勝っていたんだろう。


 杖を放り投げると発狂しかけてたおさげ魔法少女の頭に当たり気絶してしまう。


 あとは…


「わた…私は、その…」

「……諦めるの?仲間を捨てて、敵に頭を下げて…仮にもアクト…の代わりなんでしょ?」

「私はコダマさんの様に強くは…!」

「……アクトは自分の体…にエンチャントをかけてまで戦ってる。

 理由はいつも適当だけ…ど、大切な物を守るために」


 それが自分だと胸を張って言える日がいつか来るかな…


 しかしその言葉にプレゼンターも反論してきた。


「貴方がアルマさんなんですよね!?なんで、いつまでもコダマさんのそばに居るんですか!

 貴方は魔族で、あの人は人間ですよ!」

「……だから?」


 何が言いたいのだろうか?


「貴方を守る為にコダマさん傷付いてるんですよ!今だって、メメントモリって方々に!」

「……?自分で戦わない癖…に、なんでそんな偉そうなの?」

「…っ!」


 剣も握ろうとしない。言葉で解決したいとでも言いたいのか?自分達は私を殺そうとした癖に…自分は違うとでも?


「……同類だよ?そこの奴ら…と。だから、貴方はアクトに嫌われてる」

「そんなの…貴方達が攻めてさえ来なければ私だってこんなことしなくて良かったのに!

 そうすればコダマさんだって!貴方と会わなくて…私が…」

「……アクトはアルマの騎士様だから…例え、この世界の人間…も魔族も仲良しこよしだったとしても…アクトは会いにきてくれる」


 本人のいない前だから言ってしまったが…そんなの…まるで恋び…やめよう。顔が熱くなってきた。


「……アクトが傷付いてるなら、アルマも傷付く。アルマは…アクトの相棒だから」


 悔しそうな顔してるところ申し訳ないが…アクトを助けに行くんだ。


「……おやすみ」

「ぎゃっ!?」


 ノリコに向かって小さな袋を投げつける。

 パンっと破裂音がすると異臭が漂い始める。


 これは工房試作品の臭い袋。要するにとてつもない激臭で敵を気絶させる非殺傷武器だ。


「……一応はアルマに何もしてこなかったから…痛くしないし、元はアクトの仲間…殺しはしない」


 後片付けは待たせてあるガルド達に任せて、早く王都に…


「…ッ!?」

「慣れない…な。避けられた」

「ええ、でも…これなら戦える!」


 白銀の鎧から溢れ出る魔力は、彼女達の使っている武器と同じ物を感じる。


 気絶させたのにずいぶんと速い目覚めだ。それとも、プレゼンターがやられるのをわざと待っていた?


「魔族!私達の仲間を傷付けて…絶対に許さない!」

「その首、斬り落として無能の前でサッカーしてやるよ」

「……さっかー?」


 頬に伝う赤い液体とチリチリと痛む傷。

 マズいかもしれないと、内心焦りながらも…アクトならどうするかと考える。


 待ってて、アクト。必ず…助けに行くから。



ーーーーー



 勝ったと確信した。この片角の魔族は無能の仲間らしいが…聞いてた通りの能力だ。


 曰く魔法を終わらせる魔法。前魔王から受け継いだスキルらしいが…程度が知れた。だからわざとらしく驚いてやった。それでいい気になって調子に乗れば隙が生まれる。それに此方にも手はある。


「頼んだよ、ツバキちゃん」

「任せて」


 ノリコは倒されてしまったが元よりあまり期待はしてない。まだ、レベルも低いし。


 しかしまあ…無能の仲間は無能と言うか…スキルも一つしか使えないとか…恥ずかしくないのだろうか?


「【真・鬼神纏】」


 白銀の鎧の上から更にドス黒い装甲をツバキが纏う。

 まるで本物の鬼のようだ。


『行くぞ!』

「……【ワルプルギ!?」

『馬鹿が』


 あの魔族が強いのはあくまでもスキルだけ…あとは伸びるだけの剣だ。


 ワルプルギスはメルカから聞いた通り魔法を終わらせる魔法。なら、あらかじめアルスマグナで発動し続ける魔法を作ればいい。

 そして魔砲師なんていうハズレ上位職。馬鹿としか言いようがない。


「…くっ、この!」

『遅いッ!』


 そして伸びる剣もワイヤー部分を斬りさえすれば…


「…ッ!?」

「形勢逆転よ!」

『ふんっ!』


 ツバキの拳が魔族の顔面へと突き刺さる。ザマァみろ。


 鼻血を吹き出しながら魔族が吹っ飛んでいく。


『わかるか?これがお前らが傷付けてきた者達の痛みのほんの一部だ。

 死ぬ前にお前が泣いて命乞いするまで痛め付けてやる』

「やりすぎないようにね」

『わかってる』


 1発で気絶したのか、あるいは戦意喪失したのか…立ち上がろうともしない。なんだ、情けない奴。


「………ら……だから……」

『なんだ?言いたいことがあるなら言ってみろ』

「……お前らがそんなんだから、アクトが傷付いたんだ」


 魔力はまるで感じない。ただ、呟いた後にゆっくりと立ち上がっただけだ。

 なのに…一歩も動けない。


「……痛い」

『はんっ、言ってるだろ。それは傷付いてきた者達の─』

「……私が貴方に何かした?」

『…は?』

「……私は魔王の娘として産まれて…だけど、裏切られた。角…も折られて奴隷にまで…なって、産まれて初めて見た…人間はとても怖かった…でも、貴方達は?アクトと…一緒で死んでこっちに来たんでしょ?」

 

 なんだ、偉そうにノリコに説教してた割には自分も勝てないとわかったら言葉で同情でも誘っているのか?


「存在悪って言葉が私達の世界にはあったわ。それはきっとこの世界では魔族や…クロードの足を引っ張るあの無能のことよ」

「……無能?はは、はははッ!」


 気でも狂ったのか?急に笑い出した。


「…無能、無能って!自分たちが負けてるだけで何もしてないくせに、アクトを監獄に入れて!その癖して、2度と歯向かえないように奴隷にするんでしょ!?

 どっちが無能!?本当に世界を救いたいなら、本当に私たちを滅ぼしたいなら!お前らみたいな無能なんかより、アクトの方を選ぶ!無能はお前らだ!」

『はは、演説は終わりか?ならもういい、黙ってサンドバックにでもなってろ』


 バカバカしい。どうやら自殺願望まで持ち合わせてたみたいだ。


 ツバキも呆れてるし…まあ、いいや。今のうちにノリコを助けるとしよう。


「ムカデは皆殺し」

「…誰?」


 気付けば後ろに見知らぬ奴が立っていた。獣のように鋭い眼光をした少女は、獲物を見定めかたのように…


 ブシュッ…


 何が起きたかはわからなかった。ただ、その女は魔族の隣でぐちゃぐちゃと下品に口から何かを垂れ下げて喰っていた。


「ひっ、いた…キャァァァァァァァッッ!」

『ッ!?サツキ!』


 左腕が痛い。痛いで済まない。熱い、焼けてる。痛い痛い痛い!あれ…?私の手…どこ?



ーーーーー



「ムカデを焼殺」

「……エルヴァ」

「勇者を殺す」

「……カッとなってた…ごめん」

「……」


 帰ってきてたとは聞いていたが…気を遣ってくれていたのか…或いは…ともかく久しぶりに顔を見た。


「勇者の撫で斬り」

「……ありがと、平気だよ」


 ハイポーションを渡された。これを飲んで傷を癒せと言うわけか…


 こんな痛みくらい…と思っていたが、たしかに塵も積もれば山となる。僅かな怪我が死へと繋がるかもしれない。


「痛い、やだ!助けて!ねえ、ツバキちゃん!痛いよ、痛いよ!!助けて、あぁ!はっはっ!」

「落ち着いて!い、今ポーションを!」


 噛みちぎったのか…


「勇者を殺す」

「……気持ちはわかるけど…めっ」

「……」


 殺したいと率直に言われたが…殺していいものなのかわからない。魔王はいつだって勇者に倒されるのが運命と父も言っていたことだし。


「…撫でて」

「…凄い!自分の気持ちに正直になれたね」


 優しく頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細める。可愛い。


「…殺す。殺す殺す殺す殺す!ぶっ殺してやる!」

「落ち着け、まだ傷が!」

「……ぺっ、した?」

「けふ」


 どうやら栄養源になってしまったようだ。


「化け物が!ツバキちゃん!殺そう!痛みなんてわからせる必要はない!絶対にここで!」

「…ああ」


 再びサムライ女が黒い装甲を纏い鬼神と化す。


「……大丈夫。もう、押されない」


 袋から取り出したのは肩当てと巨大で奇妙な形の両刃斧。


「……アクトを助けに行く」

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