動乱
東洋人の少年と魔族を探し出し、少年は生け捕り。魔族は殺害。
自分達の上司でも無いたかが処刑人共に何で命令をと最初は思ったが彼らの残虐性を見て即座に命令に従った。あれは罪人じゃ無い。口答えした未来の自分の姿なのだと。
まだ昼なのに王都は殺伐とした空気に包まれていた。
「しかし、どこに行ったんだ?」
「それを見つけるのが俺らの仕事だろ?」
正直な話、彼らが王都で何をしようと関係ない。自分は一般階級の人間で出稼ぎ中なのだ。ここに家族はいない。
面倒くさいなと思っていると突然騒ぎが起き始めた。何でも見た事のない花が咲いているのだと。
何でそんなもんでと思ったが…見に行くと…
「ひぃ!まるで血のようだわ!」
「不気味ね、兵士さんどうにかして頂戴!」
貴族達や商人が不気味がっていたのはその花の見た目だ。誰かの言った通り真っ赤で反り返った花…茎だけで葉もない。
だが不思議と自分はそれに美しさを感じてしまった。
「見ろよ。石で舗装された道路から生えてるぜこれ」
「ああ…しかもこれ、石の下の土じゃなくて石から生えてやがる」
その奇妙な花はずっと続いている。まるで人の足跡に沿って生えているように。
「ねえ、そういえばさっきね気持ちの悪い人間を見たのよ」
「ええと…?」
「真っ白な髪を腰まで伸ばした男。若かったわよ。それがずーっとあっちに…監獄の方にむかって歩いってたの」
「なるほど、ありがとうございます」
その男は我々の追っている少年と同じか?でも、それなら魔族の方は何処へ?
「ん?あ、おい。あの殺人鬼集団から連絡だぞ。少年の方を見つけたから来いってよ」
「魔族はいいのか?」
「…死んだんだろ、多分。それでなきゃ1人で動き回ってねえよ」
「ふーん…まあいいか」
ーーーーー
ゼウスエンチャントの本来の性能があの赫雷の腕なら、恐らくペルセポネエンチャントの本来の姿がこれなのだろう。
歩くたびに魔力で出来た彼岸花が咲き、髪は真っ白になりかなり伸びた。解除すれば元に戻るのか?
だが、何となくわかってきたぞ。【エンチャント・夢幻】で付与されたエンチャントは対象の一部を作り替えるのだ。レーヴァテインの刀身も、ゼウスの腕もペルセポネの髪もオーディンの目も。
なら、アルマの武器はまだまだ伸びるのか?
考え事をしながらメメントモリの連中のいた場所へ向かうと早速2人程に会った。
「…通せんぼか?』
「ええ、そうよ!」
「見つけたぞ〜」
名前はたしか…何だったかな。
「ゴッデルとカリーナだっけか?』
「罪人如きが気安く私の名前を呼ばないで!」
「同感だ〜」
「どうでもいい…それよりもだ。もしもあんたらに家族がいるなら…もう俺の前に立たないでくれるか?そうなら、あんたらを殺せない』
すると2人が笑い出した。心底人をコケにしたように。
「ははっ!あはは!奴隷身分が板についてるね!そうやってご主人様を笑わせるのはいい奴隷だよ!」
「ははは〜くだらねえ〜」
どかないって事はいいんだよな?
「笑わせてくれたお礼に、私の幻刀を見せてあげる」
「…?刀?」
日本刀らしきものだ。だが、何かしらのエンチャントが施されているのか薄く輝いている。
そしてカリーナはその刀を振る。どう考えても届く距離ではないが…
「…ん?」
「あはっ」
ぼとりと音がして…なんかわからないが腕が落ちた。
そして不思議なことに痛みを感じない。それどころか血の一滴すら…なんか、傷口をまじまじと見るのは初めてだな。
「避けられないよ?私の幻刀は不可視の刃。決して逃れる事はできない」
「気は済んだか〜?」
「……』
ああ、この状態だと痛覚なくなってるのか。くっ付ければ治るのか?
「ねぇ、奴隷。貴方の臓器は何色?血は?骨は!?」
「え?あ、ごめん。考え事してた。何?』
「無視なんて酷いね!」
「だってお前の話、クソ程どうでもいいんだもん。話してえなら、そこら辺の酔っ払いにでも話してろよ』
相手するのも面倒くさい。
「通っていいか?』
「…ねえ、奴隷。立場ってのを弁えなさいよ」
「落ち着け〜」
「ゴッデルは黙ってて!」
「2対1でしか怖くて俺の前に出て来れないから手加減してくれってことか?
だから、言ってんだろ退いてくれりゃ手は出さないって』
キレたのだろう。カリーナは刀を構えて…縦に振るう。
ちょうど直線状に俺がいて真っ二つ…なんて事はない。種はなんとなく分かったし、そんなもん避けりゃ済むだけだ。
「さて、殺人鬼ども。一体何人殺したのか知らないが…冥府の底から恨み辛みが溢れてきたぞ』
「っ!?」
「【ハデスゲート】』
スキルの使い分けとでも言うべきなのか?
本来なら対象の足元に出現し地獄の底に引き摺り込むスキルだが…冥府と繋がる穴は俺の足元に出現し骸骨達が溢れ出てくる。
「ネクロマンサー!?」
「魔法付与師だ」
「カリーナ来るぞ!」
骸骨はこちらへと目もくれずに一目散にゴッデルとカリーナ目掛けて走っていく。
恐っ。普通にホラーだ。
「ゴッデル!」
「任せろ〜」
だが、いかんせん攻撃力も防御力も無いのだろう。戦鎚の一撃で粉々に砕け散っていく。
だが、砕けても即座に回復し穴から這い出てくる。さて、どっちが勝つのか見ものだ。
「ーーっ!」
「なによ!なんなのよこいつら!」
「なにって、お前らが殺した人間だとか亜人だとか?』
【ハデスゲート】は非常に強力なスキルだが欠点もある。それは対象が人を殺していなかった場合だ。誰1人殺して無いならスキルを発動しても冥府の底へは引き摺り込まれないし、仮に殺していたとしても対象が強けりゃ所詮は骸骨。簡単に振り払われてしまう。
だからこそ今回の発動の仕方は新しい。何せ対象が死ぬまで延々と攻撃を行うのだから。しかもこっちは砕けたところで回復し、隙あらば即座に冥府の底へ引き摺り込もうとする。
「カリーナ!奴を狙え!」
「わかってる!」
痺れを切らしたのか横薙ぎに一閃。ちょうど首の辺り。しかしそれも当たる事なく目の前に新たに現れた紅い骸骨に弾かれてしまう。
「……?ああ、何?もう助けに来てくれたの?』
『……』
「…俺の涙を返せよ』
声帯なんて無いので返事も返って来ないし、そもそも耳も無い…いや、だったらなんで動き回ってるんだって話だがそこらへんは気にしたらダメなのだろう。
「言っとくが仇討ちじゃ無いからな?あのメメントモリとか言う連中は俺が気に入らないから潰すのであって…』
カタカタと揺れる紅い骸骨は俺の言い訳を無視して白い群れへと合流する。
…まあ、いいか。
「何をやってるカリーナ!腕を止めるな!」
「うるさい!あんたが邪魔で幻刀が振るえ…な、い…?」
「カリーナッ!き、貴様らッ!」
最後に見えたのは腹から真っ赤な骨の手が出たのだ。痛みに悶え泣き叫ぶ前にグチャッと音がして血が飛び散り、一部骸骨達が赤く染まった。
「ん…?え、何?くれんの?』
『……』
なんか幻刀持ってきてくれた。というかいつの間に戻ってきたんだ?
それとなんか肉片が足周辺にこびり付いてるのを見ると…なんとなく死因もわかる。
「あ、やっぱりこれ魔力でできた刃を飛ばしてただけか。幻刀なんて偉く御大層な名前の割には…子供騙しかよ』
「オオオオォォォォォッッッ!!」
仲間を殺されたせいかどうかは知らないが…怒りで我を忘れたのかゴッデルが戦鎚を振り回し突っ込んでくる。
結局よくわからない連中だったな。
「ッ!?」
「よーし、そのまんま抑えとけよ』
狙って弱いところを突いてくるなら兎も角…馬鹿の一つ覚えで突っ込んでくんなら話は別だ。
それなら骸骨達でも足を抑え、手を抑えで…動きを封じることもできる。
「おい、デカブツ。遺品と普通に殺されんのとどっちがいい?』
「この、外道がッ!」
「そこはこの外道が〜ってやれよ。キャラぶれてんぜ?』
顔を真っ赤にして激怒してる。なんだ、そんなに大事な人間だったのか?
「貴様らのような奴らがこの世にいるせいで、カリーナのような孤児が増えた!お前らは悪だ!悪は…滅びろ!」
「は?はは、あはははっ!悪!悪ねえ、じゃあ聞くが…今ここに出ている骸骨どもはお前が殺した奴らだけど…本当に殺すきべき連中はどんだけいた?』
「ううううッ!」
「あのキモい仮面被った野郎の、このしょうもないゲーム…お前楽しんでたろ?どうなんですか〜?正義の執行者様〜?僕たちは大罪人ですけど〜どっちが悪者なんですか〜?』
怒り心頭、怒髪天。言葉すら忘れて叫んでら。
「殺しは殺しなんだよ。そこに正義も悪も関係ねえ。ただ、純然たる行為だ。正当化したいなら幾らでも言い訳は思いつくけどな』
紅い骸骨が顔面を1発殴るとゴッデルの口から白いカケラが飛んできて、鼻からの真っ赤な液体で赤く染まっていく。
それで気が済んだのかさっさと穴から冥府へと消えていってしまった。
「…さて、言い残す言葉ある?』
「地獄へ…落ちろ」
「大丈夫、俺もあんたもあんたの仲間も皆んな仲良く地獄行きだからよ』
まあ、潔く死んでくれるらしいので…安心して死んでもらうことにしよう。
「【ハデスゲート】』
「なっ、ま、待て!」
「何を?俺の手で殺されるかお前が殺した奴らに殺されるのかの違いだろ?』
今までで見たことないほどの巨大な穴の底から更に何百もの骸骨がゴッデルを掴む。
ついでに戦ってた骸骨達も皆んな上からのしかかり逃げられないようにしてる。
「やめろ!こんな…こんなところで、死んでたま─」
「いや、死ねよ』
最後に顎を蹴り上げると全身の力が抜けたのか一気に穴へ引き摺り込まれ…辺りに静けさが戻る。
「あと3人』
先の事なんて考えてないが…魔力を無駄に消費しないようにしておこうと思いつつもついつい、やり過ぎてしまった。




