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大罪人Aと死刑囚W

祝 総合評価400p達成。わーい! 


今後も頑張っていきますので応援よろしくお願いします。



 ジゲンバクダンと呼ばれる時間式で爆発する武器があるらしいが…正しくそんな感じだ。


 デンはチラリと斜め前を見る。

 端正な顔立ちでファンも多く、同時に小動物のようで可愛いなど言われてるアルマだが今現在は誰も近づこうとしない。

 理由は簡単だ。


 今から2週間ほど前にアクトが王都に拐われた。それ自体はもうどうしよもなく下手に動けば此方が不利だと祈り待つ事しか出来なかったのだが…1週間前に起きた出来事。勇者の凱旋パレードのときだった。


 無駄に盛大な音楽と傷一つない勇者達。しかしそこにはアクトの姿は無く…翌日に出された王都の新聞の見出しに彼のシャシンが載っていた。


 大罪人コダマ、王都の第一監獄へ投獄…と。

 しかも書かれていた記事も記事で、勇者が精一杯頑張り、何とか四天王を倒そうとしたがアクトが裏切り四天王と手を組み勇者達を追い込んだとか…しかも、その後勇者の覚醒により倒され惨めに命乞いをしたなどと…バカらしくて鼻で笑っていた。

 

 ニルアの街の人間ならアクトがそんな事するわけないと理解してるので猛反発したが…王都の連中、特に貴族達がそれを許さずに…と、ここまで言えばわかるだろ?そろそろアルマも我慢の限界だと。


「おう、てめえら戻ったぞ」

「…ッ!ガルド!」

「うおっと…落ち着け」


 ガルドさんも何度か組合長として部下だったアクトについての尋問を受けていた。

 それでもガルドさんはアクトの見方をしてくれていた。どれだけ罵られようが、非難を浴びせられようが…


「……アクトは?」

「…譲歩に譲歩を重ねても…奴隷身分に落とすだとよ」

「……お金ならいくらでも」

「……」


 金でアクトが救えるなら安い物だとアルマは言いたいのだろう…だが、ガルドさんは渋い顔をしている。


「…危険人物だから王都で常に監視されて奴隷にさせられるのだとよ」

「……は?」


 ヤバイ!


「アルマを抑えろ!」

「おい、誰か婆さんに鎮静剤貰ってこい!」

「ふざけんな、アルマちゃんにそんなもん打てるか!」

「…邪魔!」


 爆発した。こうなると止められる人も限られてくる。


 ここ数日、いつも王都に殴り込みに行くだ。皆殺しにするだと、とても彼女の口から出ないような言葉ばかり聞いてる。


「…ーッ!」

「落ち着きなアルマ。お前さんが仮に行ったとしてもアクトの立場が悪くなるだけだよ」

「……ゲルダ」

「一旦深呼吸して、それからどうするか考えるんだよ」

「…そんなの!」

「ああ、遅いね。だが相手は王だったり貴族だったりと権力だけはある。わかってんのかい?」

「……それは、」


 良かった先生が来てくれた。


「ガルド、王都にある監獄なんだろ?脱獄とかできないのかい?」

「…無理だ」

「お前が早々に諦めるって事は…余程まずいもんでもあんのかい?」

「…処刑部隊 メメントモリがあの監獄を牛耳っている。言わばあそこは連中の玩具箱だ」

「…はぁ、そうかい」


 先生もお手上げだよと座り込む。


「あの…メメントモリと言うのは?」

「あ?知らないのかい?人殺し集団だよ」

「言葉が少な過ぎる。付け加えるなら対人戦闘においてこの国最強とも言われてる国王の犬どもだ」

「それがアクトの…」

「……」


 打つ手なし…だ。


「……」

「泣くんじゃないよ、あの野郎は今まで散々死にかけてきたんだ。今回もどうにかして戻ってくるさ」

「……今回は、ダメかもしれない…」

「お前が信じてやんないで誰が信じられるって言うんだい。まったく…」


 アルマだけじゃない結構な数の冒険者達が…街の人間が、アクトはもう帰ってこないかもしれないと…


 どんよりとした空気が組合を包み込んでいた時。扉が開けられた。


「アルマっていう魔族いる?」

「片方しか角のない、可哀想な奴だ」

「……」


 見知らぬ女性が3人…いや、あいつらは…


「勇者の恋人として、仲間として…この国に存在する魔族は皆殺しにするわ」

「……アクトを…返せ」


 アルマは袋からいつも使っている蛇腹剣を取り出す。


 その日、その場にいた冒険者達や街の人間は後に語る。

 ああ、アクトの相棒は確かにアルマ以外には無理だ、と。



ーーーーー



「なー…暇だな」

「暇?うん、まあ暇だとは思うけど私はあと1週間で処刑されるんだ。暇と言い切ったらなんというか…人生を否定している気がしてならない」

「ああ、そう。よくわかんないわ」


 かび臭い牢屋の中で鎖に繋がれてどれくらい経ったのかは知らないが…いい加減に話し相手がウォーデンしか居ないと飽きてくる。

 しかも衛生状態最悪でそこら中に虫がいる…具体的には黒光りする例の奴らだ。しかも異世界種なのか大きさは小型犬程ある…まあ、大きいから多少可愛げも…ねえわ、クッソキモい。


「…はぁ、しっかしまあ…なんでこうなったんだが」

「私はともかく君はどうなんだい?」

「どうって言われたって見ての通りだよ。二回目だ。この国に裏切られたの」

「ははっ、よくもこんな国に居られたもんだね」

「…この国は反吐が出るほど嫌いだが、俺を救ってくれた人が居るからな」


 帰りたい。アルマに会いたい。


「ふーん…」

「大体あんたがもっと早く否定してくれりゃこうはならなかった」


 もう何度目かになる八つ当たりだ。だってこいつウルドじゃないんだもん。だったらもっと早く否定してくれ。いや、まあ完全にストレスマッハでまともな思考能力残ってなかったからしょうがないっちゃしょうがないが…


 あと、アルマを暗殺するってのも嘘らしい。戦闘において1番力を出せるのは大切な者を人質に取った時だそうな…


「でも、私は楽しめたよ?」

「んで、あんだけ傷だらけにされたのにピンピンしてんだよ」

「それは君も同様だ。医者が隣の牢屋で あり得ない!?普通なら持って3日ほどの命だったのに傷が再生している!? なんてやられてみてくれ。ますます憧れが強くなる」

「だから俺はスケアクロウじゃねえって言ってんだろ」


 何回言わせんだ。

 

「あ、すまない。少し横の壁から離れてもらえる?」

「無理。鎖が重い」

「じゃあいいや」


 破砕音がして瓦礫が崩れるよりも先に壁に張り付いていたカビの胞子が一面に広がる。緑色のスモークだ。


「あっ、ここのカビ人体にも感染するよ」

「先に言え!」


 咄嗟に口を塞いだがちょっと吸ってしまった。

 そのうち身体中から…やめておこう。


「さて、脱獄するか」

「あーあ、この国にもういらんねえ…」

「ははっ、じゃあ私と戻って魔王の部下にでもなるかい?」

「アルマの父親殺した連中に尻尾振るくらいならここでカビの温床にでもなってた方がマシだ」

「尻尾…?え、スケアクロウ…君、人間だろ?」

「そのわけわかんないテンションやめてくんない?」


 まあいいや。どうもこの手枷のせいなのかスキルが使えなくなっていた。そのせいで大きな傷は無いが傷口に…ああ、見たくもない。


「あちゃあ…痛くないの?」

「ねえな。まあ、見てる分には気持ち悪いが…巣立つまではこのまんまにしてやろうかなって。こいつら育つの早いし」

「全人類で蛆に母性を覚えるのは、君か魔法昆虫の調査員くらいだよ?というかそいつら寄生主から離れる時に卵産むから永遠と生まれ続けるし」

「気色悪いな」


 どんな事して外したのか知らないが…結果としたウォーデンに借りができてしまった。


 手枷を強引に引き千切るとかどんな馬鹿力だとか思っていると右腕の湧いていた辺りの肉も削ぎ落とされる。


「悪いけど、そいつらは毒持ってるし寄生されてると脳まで侵食してくるからね?」

「…マジかよ」

「気を付けてくれよスケアクロウ。ここら辺は魔族領の虫が多い。悪趣味な連中だ」

「…なんかお前虫に詳しいんだな」

「そう?まあ、昔は魔法昆虫の博士に憧れたものさ」


 なんだかなぁ…


 レイヴンと兄弟なんだな。戦いの時は完全に眼がイカれてるけど普段は温厚でどこにでも居るような奴にしか見えない。


「因みにレイヴンは細工師になりたかったんだ。うちの村には人は少ないけどそれぞれがそれぞれに役目を持っていたからね。手先も器用だったし」

「へぇー」

「…まあ、でもラプラス様が死んで今の魔王になってからは人間を滅ぼすための徴兵だって村の若い奴らは軒並みな…」

「…両親は?」

「え、忘れたのか?ほら、貴方が助けてくれたあの時に私とレイヴンを守って首を切り落とされていたのが父親。人間どもに凌辱されていたのが母親だ」

「なんで笑顔でそういうこと言えんだよ…」


 カツンカツンと2人の足音だけがする暗い地下牢で出口を求めて彷徨い歩いている。


 まあ、適当に歩けばそのうち出口に着くのだろうと。それにしてもここ囚人俺ら以外に居ないのか?


「スケアクロウの両親は?」

「そうだな。少なくともお前らの親みたく子供が殺されかけたら庇うんじゃないのか」


 兄限定の話しだが。


「そうか、貴方の両親もいい人なんだな」

「そうだな。いい人すぎて涙出てきそうだ」


 反吐が出る。


 それから数十分歩いたが一向に出口が見当たらない。なんだここ?


「ううーん…壊すか」

「単純だな」

「看守が餌だって来るわけだし出口はあるはずなんだけどね」


 まあ、そうだけど。


 ウォーデンが壁を殴り付けると破砕音がして…光が漏れ出す。ずっと薄暗い場所にいたせいか光に慣れるまで時間がかかる。


「なるほど。どうやら我々は刑場にいたらしいね」

「…悪趣味だな」


 モニタールームのような場所には様々な場所が映し出されている。

 なんかここだけ現代的だなと思ったが…映像遠隔水晶?とかいうので映し出してるらしい。


 それにしても今現在も殺されたり拷問らしきことをされていたりと…まあ、俺には関係ない話か。

 さっきまで俺たちのいた場所も映されてるし下の所に虫とだけ書いてあるのはそういうことか。


「看守はいないね」

「キナ臭くね?」

「やっぱりそう思う?ほら、見てこれ。わざとらしく君の袋置いてあるよ」

「剣は?」

「さぁ?」


 取って…いいのか?


 迷ってるとウォーデンがさっさと近づいて魔法の袋を取る…何も起こらない?なんなんだこれ。


「取り敢えずさ、その傷治しなよ」

「…あ?…あり?なんで治ってないんだ?」


 常にベルセポネエンチャントは発動しているはずなのに…削ぎ落とした肉の部分が再生してない。それどころか痛みも全く感じなくなっている。


「…やられたな」

「あ?どういうことだ」

「誘い込まれたんだよ、私達」

「…何?」


 どういうことだと聞く前に左右の扉が開け放たれ看守たちが現れる。しかも解剖だとか刺又とか可愛らしいものじゃなくて…剣とか杖とか殺す気満々だ。


『ああ、起きたか罪人ども』

「…知り合い?」

「見覚えねえな」

『我々は王直属の処刑部隊 メメントモリだ』

「そっすか」

『突然だが…君ら罪人にはゲームに付き合ってもらう。

 何、単純なルールだ。元四天王ウォーデン=クラーク君。君が殺されるか…或いはそっちの邪魔なゴミ…おっと失礼、勇者様の奴隷を守れなかった場合君の負けだ。勝利条件は看守全員を戦闘不能にすること。どう?知能の低い君らでも理解出来るだろ?』


 なんか急にモニターに映し出された変な仮面被ってるやつは突然そんなこと言い出した。

 何言ってんだコイツ?


「私がスケアクロウを守ると誰が決めたんだ?」

「は?ふざけんな、お前。守れよ」

『ふーむ…じゃあいいよ。そこの奴隷は我々で預からせてもらうから。代わりに…』


 ジャラジャラと鎖に繋がれて画面に映し出されたのはウォーデンとよく似た角を持つ彼の弟…レイヴンの姿だった。


『兄貴ッ!むぐ!?』

『弟を守る為に戦ってくれ。君ら下等種である魔族にさ…家族の愛とかあるのか、常々気になってたんだよねぇ』

「……」

『まだ、殺さないでいてあ、げ、る。君らはゲームのプレイヤーなんだからさ買った時の商品は取っておかないとね』

「仮面と一緒で趣味が悪いな」

『奴隷如きにこれの芸術性がわかるわけないさ。

 ああ、そうだ。国中の貴族様たちが娯楽で見てるからなるべく無残でそれでいて滑稽に暴れ回ってね?皆様を飽きさせないように。それから看守だけじゃ足りないだろうから…ゴッデル。カリーナ。ゲームを盛り上げてきてね』

『了解〜』

『任せてよリーダー!』


 リーダーと呼ばれた野郎に呼ばれたのは…あの巨大な戦鎚奮ってた奴と見知らぬ女か。


『さあ、ゲームスタートだ。あっ、もちろん看守君たち。君らも頑張るんだよ?もしも下等種の首を取れたなら我々メメントモリに入隊を許可してあげる』

「「「おおぉぉぉっ!!!」」」


 クソ野郎が。


「…スケアクロウ」

「あ?」

「あんたは無事に奴隷にさせてもらえるらしいよ?」

「冗談ならコイツらどうにかした後に言え」


 ろくな飯も食わされず俺との戦闘の傷も癒えてないのだろう、ウォーデンは少し辛そうに見える。

 そして俺はスキルが発動もせず、挙句にもう右腕は動かないし…最悪だな。


「安心してくれ、あんたは俺が守る」

「嫌だなぁ、男に口説かれんのは」


 あの時の御者の老人と同じ気分になった気がした。

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